宗教法人の財務を公開させよ
「神世界」グループの霊感商法事件で、神奈川県警の吉田澄雄警視が係わった疑いで現在捜査が行われている。先日行われたこの宗教団体に関係するヒーリングサロンの経営者・杉本明枝社長の会見では、およそ宗教活動とはかけ離れた「色と金」の世界が語られていた。この件では他に県警幹部が関与していた疑いや、問題のサロンには複数の現職国会議員が通っていたことが会見で語られており、今後更に問題が拡がっている可能性がある。
毎年のようにいかがわしい宗教団体の事件が起きているが、その殆んどが「金」絡みだ。宗教活動を維持するために金を集めているのか、金集めが目的で宗教を隠れ蓑にしているのか、区別がつかない。また事件にこそなっていないが、巨大教団による資金集めに対して、度々批判が行われていることも事実である。
宗教団体の資金の調達と運用が、正当な宗教活動なのか、それとも不法な詐欺的行為なのかを明らかにするために、資金の透明化を確保することが必要ではなかろうか。
その方策として、宗教法人の認証の条件に、教団の財務諸表などの情報公開を義務付けることを提案したい。
先ず現状はどうなっている。
前提として、憲法で定められている信教の自由により、個人、団体を問わず宗教活動は法令等に違反しない範囲であれば一切自由であり、宗教活動をすること、宗教を創設すること等も自由である。
しかし宗教法人となるためには、宗教団体が創られ、宗教活動をしていることが必要である。所定の書類を整え、所轄庁(文化庁か都道府県)に申請し認証を受けて宗教法人として活動ができる。
宗教法人は、規則及び認証書のほか、役員名簿、財産目録等を事務所に備え付けなければならない。またその一部の写しを、毎年の会計年度終了後4ヶ月以内に所轄庁に提出する必要がある。
では提出すべき書類とは、次の通りである。
①役員名簿(全法人が提出)
②財産目録(全法人が提出)
③収支計算書(収益事業を行ってなく、年間収入が8,000万円以内であり、かつ、収支計算書を作成していない法人は提出する必要はない)
④貸借対照表(作成していない法人は提出する必要はない)
⑤境内建物に関する書類(境内建物が借家である法人が提出)
⑥事業に関する書類(事業を行っている法人が提出)
宗教法人が作成した書類を閲覧したい場合は、宗教法人法第25条第3項により、次のように定められている。
「宗教法人は,信者その他の利害関係人であって前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり,かつ,その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは,これを閲覧させなければならない。」
つまり信者その他の利害関係人のみが閲覧できるが、一般の人は閲覧請求ができないことになっている。
以上の現状の規定を踏まえての私の提案は次の通りである。
(1)現在収入が8千万円以下とされている収支報告書について、全ての宗教法人に提出させる。
(2)提出種類のうち、①役員名簿 ②財産目録 ③収支報告書 の3点は公開を義務づける。
(3)その他の書類については、従来通り利害関係者のみが閲覧請求できる。
(4)違反した場合、一定の猶予期間をおいた後、宗教法人の認証を取り消す。
宗教法人には非課税などの収益に対する優遇措置があり、それと引き換えに財務の透明性を要求することは当然ではあるまいか。
公開が求められるのは資金の調達と運用の実態だけであり、宗教活動そのものには一切手を触れない。
宗教法人サイドから見れば事務の煩雑さはあるものの、公開により「痛くも無い腹を探られる」こともなくなり、宗教界全体の信用度が増すというメリットがある。
勿論、こうした公開を避けたければ、宗教法人として認証を受けずに宗教活動は続けられるわけで、信教の自由に何ら差し障りは無いと思われる。
財務の公開制度が、詐欺まがいのエセ宗教を淘汰し、正常な宗教活動が確保されると思うが、どうだろうか。
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投稿: イエス | 2009/08/03 00:18