「プール天井材落下」は設計ミス
1月6日愛知県豊田市、豊田スタジアムスポーツプラザ内にあるプールの天井の石こうボードが落下した。
落下したのはアーチ状に取り付けられていた天井の石こうボードで、長さ20メートル、幅4メートルにわたって、約8・2メートル下の子ども用流水プールなどに落ちた。重さは1・5-2トンほどになるという。
たまたま営業開始前だったのが幸いしたが、利用者がいたら大惨事になるところだった。
今回の事故は、はっきり言えば設計ミスだろう。温水プールの天井材に石膏ボードを使うのは、常識外れだ。
石膏ボードの特長は、火に強く、施工が楽で、価格が安いことだ。
一方欠点は何かといえば、一番は水にとても弱いことだ。湿気を吸いやすく、水分が多くなると極端に強度が落ちる。また石膏ボードは表面に紙がついているが、水分が多くなると紙と石膏が剥がれてくる。
住宅や店舗、オフィスの壁や天井に幅広く使われているが、風呂場の壁や天井には絶対に使用しないのはそのためだ。
プールに石膏ボードを使うのは、元々が間違っている。
担当者によると、温水プールで生じる水蒸気は、普段はエアコンで除湿しているが、年末年始は休業のためエアコンはかけていなかったそうだ。
除湿に頼っているとそういうことになる。
豊田スタジアムは、故黒川紀章氏の設計だが、建築の大家がなぜこんな初歩的なミスをしたのだろう。
やはり、「麒麟老いれば駄馬のごとし」だろうか。
もう一つ指摘しておきたいのは、施主や管理者がこの天井の材料や施工方法にどれだけの関心があったかということだ。
今回事故のあった天井はいわゆる「吊り天井」方式だったが、2005年の宮城沖地震の際に仙台市内の室内プールの天井ボードが落下して、35人が重軽傷を負う事故があり、国は天井が500平方メートル以上の建物のつり天井の耐震強度などを点検するよう指示をしていた。
処が、豊田スタジアム側は「吊り天井」だという認識がなかったため、点検をしていなかった。
建物や設備を管理する側が、使われている材料や施工方法に関心がないと、これからもこうした事故は避けられない。
天井材落下は、設計と管理のミスが原因であり、人身事故にならなかったのは不幸中の幸いだった。
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