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2008/02/28

こんなものイラナイ「防衛事務次官」

Masuda_kohei多くの方が、恐らくは同じ感想を持たれていると思われますが、今回のイージス艦の事故を巡る防衛省幹部たち、これが揃いも揃って頼りない人物ばかり。
笑顔を浮かべて受け答えしている人もいましたが、芸能人じゃないんだから愛想は要りません。
幕僚長だの何とか部長だのといった制服組や背広組のトップなのでしょうが、入れ替わり立ち代り記者会見に現れては、言い逃れと責任回避ばかり。回避はイージス艦だけで良い。
その最たる者が、増田好平防衛事務次官です。

収賄事件ですっかり名を馳せた守屋武昌被告の後任なので、さぞかし立派な方かと期待していたのですが、これが意外。
イージス艦「あたご」が事故を起こした2月19日、航海長をヘリコプターで呼び寄せて事情を聴いた件について、27日増田事務次官が記者会見を開きましたが、海上保安庁に事前連絡をしたかという質問に対して、幹部が電話はしたが相手に伝わったかどうかは、「誰に電話したかという記憶があいまいで、確認できない」んだそうです。
極めつけは、19日正午から約1時間、石破大臣、斎藤隆統合幕僚長、吉川栄治海上幕僚長と共に、大臣室で航海長から事情聴取したことについて、聴取内容は「覚えていない」と答えていました。
覚えていないだと! この人、本当に東大出たんですかね。
たった数日前の重要な会議の内容を覚えていない。それが事実なら一度病院に行って、オツムの検査をして貰ったらいかがでしょうか。
三浦和義さんなら、20数年前のことだってしっかり記憶してますよ。

大臣以下、こういう頼りなさそうな人々が集まって、事故の原因究明やら再発防止を協議しても、大した結果は得られないでしょう。
この際、防衛省は幹部を総入れ替えして、マトモな人を登用したらどうでしょうか。
少なくとも防衛事務次官、こんなものイラナイ。

2008/02/27

三浦和義の掌で「世間は踊る」

Miura_kazuyoshi「ロス疑惑」が、TVというメディアが生んだ最高の劇場型犯罪事件であるとすれば、その主役であった三浦和義はTVが生んだ最高の犯罪型スターといえる。
事件の被害者、加害者、共犯者に美男美女が揃い、舞台となったのはアメリカのロサンゼルス(L.A.)、殴打事件から銃撃事件あり、謎の全裸死体あり、そしてロサンゼルス検察の捜査官の登場があり、なにやら正体不明の人物の怪しげな証言あり。下手な推理ドラマや映画より、ずっと面白い。
主役の三浦和義は、最初は妻を殺され自らも負傷した被害者として同情を集め、次第にそれが疑惑に転化し、やがて彼こそが真犯人だという扱いに変わっていった。サスペンスの常道である。
一人一人の視聴者が日々推理を働かせ、次の日の新たな証拠や情報を待ち望んでいた。
1980年代にメディアを席捲したこの事件、当時被害者への同情などそっちのけで、皆が楽しんだというのが本音だろう。

いわゆる「ロス疑惑」だが、3つの事件から成り立っていて、ここで一度整理してみたい。
主人公である三浦和義は実業家として輸入雑貨店「フルハムロード」、「フルハムロード・ヨシエ」などを経営しており、旅行などで度々ロサンゼルスを訪問していたようだ。
事件① 1981年8月31日に、三浦和義とその妻の一美がロサンゼルスを旅行中、一美が宿泊していたホテルで頭部を鈍器で殴打され、軽傷を負った。
この事件で三浦和義は殺人未遂で共犯者の矢沢美智子と共に逮捕され、三浦は1998年に懲役6年(矢沢は2年6ヶ月)の刑が確定し、服役している。
事件② ①の事件の3ヵ月後の同年11月18日、三浦夫妻はロサンゼルス市内の駐車場で車に乗った2人組の男に銃撃され、一美は頭を撃たれて意識不明の重体。夫の三浦も足を撃たれ軽傷を負った。一美は日本へ移送され治療を受けたが、翌年の11月30日に死亡した。この後三浦は、1億5500万円の保険金を受け取った。
この事件で三浦和義は殺人罪で逮捕され、1994年東京地裁で無期懲役の判決が出されたが、1998年の控訴審で逆転無罪となり、2003年に最高裁で無罪が確定している。
事件③ 三浦が経営していた「フルハムロード」の役員だった白石千鶴子が1979年3月に出国したまま行方不明となり、5月4日ロサンゼルス郊外で全裸死体で発見された。たまたま同じ時期に、三浦和義もロサンゼルスに滞在していたことが分かっている。
その後三浦は、白石千鶴子の預金口座からおよそ420万円余りを引き出したとされるが、三浦はこれは貸した金を返して貰ったものと主張している。他人の口座から勝手に預金を引き出したことが、なぜ立件されなかったのか、こちらの方が不思議だ。
この事件は、未解決のままである。

今回の三浦和義のサイパンでの逮捕について、「無罪」だった人物がなぜ逮捕という報道があるが、無罪だったのは事件②であって、その直前に起きた妻への殺人未遂は有罪が確定している。してみると、余り無罪無罪と世間に胸をはって言い張るのは、いかがなものだろうか。
そうした三浦の態度が、日米捜査員の心証を悪くしたことは否定できないと思われる。

1980年代において、三浦和義は最大のスターだった。TVへの露出時間でいえば、後にも先にも、この人を超える例は無いだろう。
マスコミが面白がってとりあげた側面はあるが、本人も積極的に取材に応じ、芸能プロダクションに所属するようになった(現在も所属)。TV出演によりギャラを得るという、いつの間にか芸能人の一員となっていた。自らの体験を本にして、作家を名乗るようにもなった。
かくして犯罪事件を機に、稀有な大スターが誕生したわけだ。

一度有名になった芸能人にとって、世間から忘れ去られるほど辛いことはない。それが芳しくない言動であっても、メディアでとりあげられ報道されることが大事になる。
2000年代に入ってからの一見意味の無い万引き事件も、そうした視点から見れば納得できる。
かつての弁護人らが、米国では未だ捜査が続いているという忠告をしていたにも拘らず、渡米を繰り返していたのも、捕まえられるものなら捕まえてみろという気持ちの反映ではあるまいか。
その願いがかなってサイパンで逮捕されたとすれば、本望ではないだろうか。サイパンがアメリカとは知らなかったという三浦の主張は、ご愛嬌である。

20数年の時を経て、今やこの事件は被害者家族と捜査関係者にしか係わり合いのない事件だが、メディアから注目を浴びるのは必至である。
世間は再び、三浦和義により踊らされることになる。
(敬称略)

2008/02/25

“Norton Internet Security”は欠陥商品では?

自宅でPCを使うようになってから、ウイルス対策ソフトとしてシマンテック社(symantec)の製品を使ってきた。当初は”AntiVirus”だったが、数年前から“Norton Internet Security”を毎年インストールしていた。部分的に不満はあったが信頼性には問題ないと判断したのと、元々の性格が保守的で一度決めるとなかなか変えようとしない性向があるからだ。

Nortonシリーズの一番の問題点は、重くなってPCの速度が落ちることだ。これは気にはなったが我慢してきた。
昨年はじめに購入しインストールした“Norton Internet Security 2007”では、一層そうした傾向が強まったと思われ、PCの電源を入れてから使えるようになるまで、最低10分間かかるようになった。
別に急ぐ旅でもないから、それも我慢した。
処が、使い始めてしばらくすると、WORDの既存の文書を開こうとしてアイコンをクリックしても、WORDのソフトだけが立ち上がり、既存の文書が出てこなくなった。「開く」をプルダウンして呼び出せば済むのだが、いちいち面倒だ。WORDを一度閉じて再度アイコンをクリックすると、2回目には必ず既存文書が開かれることが分かったので、これも我慢することにした。

我慢できなくなったのは、とんでもない時期にいきなり「期限切れ」になってしまったことだ。我が家では最初から年の初めに新版を購入してインストールすることにしており、およそ10年間同じことを繰り返してきた。
“Norton Internet Security 2007”も、2007年の1月初めにインストールしているので、有効期限は2008年の同一月日までとなる。
処が、2007年9月下旬に、いきなり残り3日で「期限切れ」が表示された。何かの間違いだろうと放置していたら、本当に3日後には期限が切れて、アンチウイルスの更新が止まってしまった。
これはいくら何でもヒドイ。
ソフトに何か根本的な欠陥があるとしか考えられない。

なぜこんなことが起きたのか、どう対処すれば良いかを早速問い合わせすることにした。メールという手もあったが、クレームでもあり直接話をしたかったのと、メールだと何回かヤリトリが必要になる。既に使用不可の状態になっているのだから、急を要するのだ。ここは電話しかないだろう。
そこでシマンテック社の電話窓口に電話をかけたのだが、これがいつかけてもお話中でつながらない。10数回トライしたが、最後は諦めた。同社の電話窓口がつながらないのは有名であり、それを改善しようとしないのは経営姿勢そのものではないかと考える。

ここに至ってシマンテック社の製品は止めようと決め、キャノンシステムソリューションズの”NOD 32”へ切り替えた。
切り替えた途端、WORDの既存文書が一発で開けるようになり、やはり原因は“Norton Internet Security”に起因していたようだ。
PCの立ち上げも2分間程度と大幅に短縮され、他のソフトの動きも速くなった。
毎日のように使うものなので、不具合があるとかなりのストレスになる。もっと早く切り替えておけば良かったと今は思っている。

“Norton Internet Security 2007”について、我が家と同様のトラブルが他でも起きていると想定される。シマンテック社はどう考えているのだろうか。

2008/02/24

(WAZAOGIろっく・おん)市馬・扇辰

Ichiba2月23日はお江戸日本橋亭での「WAZAOGIろっく・おん」へ。第一回は柳亭市馬・入船亭扇辰の二人が登場。「ろっく・おん」とは録音、つまり公開レコーディングを指す。実力者二人の会とあって前売り完売。この日夕方から風が強まり、千葉方面への電車が遅れた影響で、30分余裕を見て家を出たにもかかわらず、開演時間ギリギリの到着となってしまった。台風でもあるまいし、JRはヤワにできている。

前座は柳亭市朗で「やかん」
このネタは前座噺ということになっているが、中に講談が入っているため、前座でもやり手が少ない。市朗は随所に独自のクスグリを入れて、面白く聴かせた。芸もしっかりしている。講釈の部分が上達すれば、得意ネタになるだろう。

入船亭扇辰の1席目は「鮑のし」
落語には、しっかり女房とうっかり亭主の組み合わせが多いが、このネタもその典型。
実はこの噺、良く考えると辻褄が合わない所がある。大家へのお祝いがマトモに言えないのに、「海女が海に入って鮑の貝を採ってきて釜に入れ、むしむしと蒸して薄刃の包丁で薄く裂くんだ。それを筵に並べ、その上からまた筵を敷いて、後家でいかず、寡男でいかず、仲の良い夫婦が一生懸命こしらえ上げて熨斗になるんでぇ。その目出てぇ熨斗の根本を、なんで受け取らねぇ。」と啖呵を切る時はスラスラ言う。扇辰はそこが気になったのだろうか、大家に「はっきり言えるじゃねえか」と指摘させている。扇辰の丁寧さが出ている。
扇辰の描く亭主は、行く先々で叱られオロオロする姿に哀愁があって、とても良い出来だった。

柳亭市馬の1席目は「提灯屋」
師匠の五代目柳家小さんが得意としていたネタだ。
広告宣伝のメインがチンドン屋だった時代で、字が読めない人がいた頃の噺とあって今とはズレがあり、一歩間違うとサッパリ面白くなくなるネタでもある。
提灯屋の主人が次第に怒っていくさまが可笑しく、こういう噺で客を満足させるのは、市馬の芸の確かさを示している。

仲入り後。
市馬の2席目は「あくび指南」
マクラで、落語家の稽古のことが紹介され、教えを乞うた師匠たちのエピソードが披露された。
このネタの眼目は、あくびの師匠が手本を見せる時に、夏の昼下がりの船上での気だるさが出せるかどうかである。ここが上手く表現できないと、噺に締まりがなくなる。現役では、当代の金原亭馬生が上手い。
市馬の師匠が言うセリフはやや急ぎ過ぎで、もう少しユッタリとして欲しい。

扇辰の2席目は「鰍沢」
マクラで出身が新潟で、雪については嫌な思い出ばかりだと言っていた。
吹雪の光景から本題へ。新助が吹雪に凍える姿や、あばら家に入って囲炉裏にあたるシーンはとてもリアルで、落語というより一人芝居を観ているような感じだった。
この噺も以前から疑問の点があった。痺れ薬を入れた玉子酒を新助と伝三郎の二人が飲むのに、伝三郎は死に、新助は助かるのが何故かなと思っていた。
扇辰の演出は、新助が少しだけ飲み、後で戻ってきた伝三郎が残りを飲むとき、下に沈んでいた玉子を全てすすってみせた。成る程、これなら下に沈んでいたであろう痺れ薬の大半は伝三郎の口に入ることになり、効き目が全く違ったのだと納得した。
ことほどさように扇辰の演出はとても丁寧で、噺に引き込まれた。
ただこのネタの最も大事なところは、「月の輪お熊」に色っぽさと凄味が出せるかどうかである。三遊亭圓生が極め付けであるが、圓生以外誰もこの描写に成功していない。扇辰も残念ながらこの部分には不満が残った。
しかし熱演であった。聴いていて、久々に身体が緊張した。

中味の濃い落語会で、十分満足した。

2008/02/23

「雅子妃」タタキ、ではどうしたいの?

中年以上のご婦人の間では、しばしば話題にのぼるようです。ツアーなどで一緒になると、年配のご婦人同士でこの話題で盛り上がっていますが、結論としては概ね「あれはもうダメよね」「別れるしかないわよ」という所に落ち着いています。きっと全国津々浦々、そんな会話が交わされているのでしょう。マスコミには絶対のりませんけど。
いうまでも無く、話題の主は皇太子ご夫妻、特に雅子妃のことです。

発売される週刊誌の見出しを見ている限りでは、雅子妃の記事が載らない日はないのではと思う位、このテーマが採りあげられています。そのほか日刊紙や月刊誌でも度々記事になっていますが、不思議にTVのワイドショーでは滅多に放映されません。ネットでも勿論、多くのサイトで議論されています。

私が不思議でならなのは、右翼的言論人、恐らく皇室崇拝者だと思われますが、そうした人々ほど皇太子ご夫妻に対して厳しい批判をしていることです。
今のままいけば、皇太子ご夫妻が次の天皇皇后になられるのは、ほぼ100%の確率です。
かつてはどの国にも王様がいましたが、今日先進国で王室(皇室)が存続している国は、むしろ少数派です。皇室がよって立つ由縁というのは、国民から尊敬されることにあると思います。皇室崇拝者が、皇太子ご夫妻を貶めるような発言をすることが、果たして将来どのような影響を及ぼすのであろうかと、皇室とはご縁の無い私でも心配になります。

雅子妃に対して、一挙一動が批判の対象になっていますが、ではどうして欲しいのかが不明確なのです。
つまり批判はするが、対案が出されない。
今の状態を変えるには、恐らく次に二つしか無いでしょう。
①ご本人が変わる(それまで待つ)
②環境を変える(何らかのアクションを起こす)
もし、ご本人自身が変わる可能性が低いとなれば、次の方策は、
③ご本人が受け入れられるように、皇室の制度や慣習を変える
④離婚する
になると思います。
もし皇室の制度や慣習を変えないのであれば、具体的方策は①と④しか残らないのではないでしょうか。あまり選択肢はないのです。

お孫さんを祖父母に会わせる回数が少ないと、ハゲタ使用人から記者会見で苦情を言われ、それが全国に伝わる。
もしあなたが嫁の立場だったら、とても耐えられないでしょう。何でそんなこと、わざわざ世間さまに公表するんだと、私ならキレますよ。これでは、フツーの人でも神経がおかしくなってしまう。

現在、皇太子ご夫妻や雅子妃を厳しく批判する人々に訊きたい。結局あなたはどうしたいのかと。
ご本人の気持ちが変わるのをひたすら待つのであれば、先ず周囲が静かに見守ることが肝要でしょう。
それではダメだ、早く何とかせねばというなら、具体的は方策を提案すべきではないでしょうか。そうでないと、ますます問題がこじれる一方になると、私はそう考えます。

2008/02/22

「石原知事」さらに400億円山分けですか?

Isiharatochiji石原都知事殿、あなたが一貫して否定してきた新銀行東京(石原銀行)への資金投入ですが、2月13日、東京都が400億円追加出資する方針を発表しましたね。予想通りでした。
それにしても、2005年に開業して、2007年9月期決算で936億円の累積赤字と言うのですから、たった2年半で、東京都が出資した1000億円近い金を食いつぶしてきた勘定になります。
そこでお訊きしたいのですが、936億円というお金、一体どこに消えたんですか。 焼却炉で燃やしたわけではないんでしょう。払ったお金なら、どこかに受け取った人(企業)がいるんですよね。
そこで素朴な質問ですが、
①どこに、どれだけの金額を貸し出しんですか?
②お金を返さないのはどことどこで、その理由はなんでしょうか?
③返さないところに、なぜ貸し出しのですか?
について、お答え下さい。

銀行ですから、融資した先が不幸にも倒産し、回収不能になることはあります。しかしこの銀行の損失はハンパじゃありません。
「返せない」のではなく「返さない」、つまり最初から返済する意志のない貸し出し先に、相当のお金が渡っていたのでしょう。
倒産が予想できていた企業、ペーパーカンパニー、計画倒産への貸し出しなど、当然予想されることです。
あるいは巷間ウワサされている「そのスジ」への貸し出しもあったでしょう。
もし融資先の一部が、都議会議員の有力後援者に向けられているとするならば、都議会がチェック機能を果たせなかった理由も良く分かります。そして追加融資も、与党の賛成多数で承認されるのでしょうね。
これは融資という名の、税金の「山分け」だったのではないでしょうか。そうすると、400億円は山分けの「追い銭」になります。

このままでいけば、追加の400億円も闇の中に消えていく可能性大です。
石原慎太郎知事殿、もしそうではないと言われるのであれば、是非その証拠を示して頂きたい。過去の融資審査と資金回収が厳正に行われ、不正が一切無かったという証拠を。

永年にわたり、多額の都民税を払っているのですから、私たちも強制された出資者です。この程度の情報公開を要求するのは当然でしょう。

2008/02/20

イージス様のお通りじゃ!

Atago「舟人よ そこのけそこのけ イージス通る」
江戸時代、士農工商という身分制度があり、往来の7分を武士が通り、残り3分を農工商が通った、これは落語のマクラに良く使われている。
これが大名行列となると、もっとひどい。映画や芝居でお馴染の「下に下に」の声が聞こえると、その場で平伏しなくちゃいけない。例外は江戸の町で、ここだけは「寄れい寄れい」の声になり、道端に寄って行列をやり過ごした。
いずれにしろ大名行列は直進するのみで、回避するのは町民の方であった。

千葉県房総半島沖で2月19日早朝、海上自衛隊のイージス艦「あたご」(7750トン)と、新勝浦市漁協所属の漁船「清徳丸」(7.3トン)が衝突した事故は、この大名行列と町民の関係を思い起こさせる。
当時現場で漁を行っていた漁船の人々の証言から、漁船の群れの中にイージス艦が進入してきて、気付いた漁船の側があわてて回避行動をとっていたようだ。
自分の千倍もある船が近付いてくれば、周囲が避けてくれるだろう。恐らくイージス艦側にそうした意識があったと思われる。
何せ、ハワイ沖でのミサイル防衛訓練の帰りだ。凱旋帰国なのだから、誰も通行の邪魔はしないだろうと。

空を飛んでいるミサイルは落とせるのに、なぜ海に浮かんでいる船にぶつかるのかという疑問の声がある。それは関心のある方へは注意を向けるが、関心の薄い方へは注意が散漫になるからだ。
要は、顔がどっちに向いているかという問題だ。
防衛大臣や官邸への報告が遅れたのも又然り、都合の悪い情報はできるだけ上げたくない、隠蔽しておきたいという心理からだ。

皮肉にも、防衛省に昇格した時期から、次から次へと発覚する不祥事や事故。単なる気の緩みなのか、防衛省が持つ体質自体なのか、そこが問われる。

2008/02/19

鈴本演芸場2月中席・昼

Utamusashi久々にウイークデイの昼間に時間がとれたので、2月18日は鈴本演芸場中席の昼の部へ。開演時には3割程度の入りが、仲入りには8割近くになっていた。最近の寄席は人が集まるなと、改めて実感。

・古今亭駒次「子ほめ」
前座が「道具屋」でこっちが前座噺かいと思ったら、昨年二ツ目になったばかりのようだ。それなら仕方ない。
・翁家和楽社中「太神楽曲芸」
間に人を立たしてのナイフ投げ、いつ見ても迫力がある。和楽はいつまでも若いね。
・三遊亭多歌介「桃太郎」
なかなか面白く聞かせたが、真打になって10年でこの位置。将来は厳しいだろうなと、サラリーマンの身に置き換えて余計な心配をしてしまう。
・古今亭志ん輔「替り目」
近頃珍しくなった噺家らしい噺家。酒の飲みっぷりが良いせいか、この人は酒飲みのネタが多い。観ているとこちらの喉も鳴ってくる。
・あしたひろし・順子「漫才」
早く人間国宝に指定してあげて下さい。
・三遊亭圓歌「漫談」
ご本人が滅多に寄席に出ないと言っている割には、今年3回目の高座を観ることになった。
・古今亭志ん五「長短」
この人の独特の「間」と、とぼけた味わいが好き。このネタは良くなかった。気の長い男の動作やセリフを、もっとユックリやらないと面白味が出て来ない。先代小さんがいい手本だ。
・ニューマリオネット「糸操り」
久々に観たが、相変わらず見事な芸だ。
・柳家さん喬「ねずみ」
この人が得意の「抜け雀」に似ているネタだが、時間の制約なのか噺にタメがないため、平板な出来になってしまった。

―お仲入り
・太田家元九郎「津軽三味線」
普段に比べ唄が多かった。良い喉をしているのだから、もっと高座で披露したらどうか。
・古今亭菊之丞「紙入れ」
十八番のネタを色っぽく。
・柳家喜多八「旅行日記」
こちらも得意ネタだが、何回聴いても可笑しい。この人はこういう自虐的なネタが上手い。
・伊藤夢葉「奇術」
シャベリを聴いていて、伊藤一葉の弟子だとすぐ分かった、師匠譲りのスマートさと、とぼけたユーモアで楽しませていた。
・三遊亭歌武蔵「鹿政談」
マクラで相撲界と落語界の違いを説明してくれたが、大相撲の師弟関係というのは、芸能プロダクションとタレントとの関係と同じという説明に納得した。そう考えれば、朝青龍問題などの経過が良く理解できる。さすが元力士。
「鹿政談」、面白かった。力でグイグイと押す芸風に磨きがかかってきた感がある。

芝居は芝居で、寄席は寄席で、それぞれが楽しい。

2008/02/18

こまつ座公演「人間合格」

Ningengokaku2月17日、紀伊国屋サザンシアターのこまつ座84回公演「人間合格」を観劇。
前日の「恋はコメディー」とは打って変わった芝居、客層も全く異なる。ボクの場合は何でもOK。良く言えばキャパが大きい、悪く言えば無節操。でもそれぞれ面白いんだから、いいジャン。

というわけで「人間合格」、タイトルが示すように作家・太宰治をモチーフした芝居です。作はもちろん井上ひさし、演出はこまつ座の芝居演出などで数々の賞を獲得している鵜山仁です。この芝居は1989年初演以来、今回が5回目の公演です。
出演は、岡本健一(津島修治=太宰治)、山西惇(佐藤浩蔵)、甲本雅裕(山田定一)、馬渕英俚可(チェリー旗ほか7役)、田根楽子(青木ふみほか7役)、辻萬長(中北芳吉)の6名。相変わらずこまつ座の女優陣は、一人で何役も演じねばならないので、大変ですね。今回のキャストの目玉は、主役に元「男闘呼組」のオカケンこと岡本健一を起用したことでしょう。むろん初役です。

太宰治が生きた時代と言うのは、激動の時代でした。彼が生まれた年に伊藤博文が暗殺されていますし、翌年には大逆事件が起きています。
少年期はちょうど大正デモクラシーの時期になりますが、大学に入って作家となる時期に、日本は日中戦争から太平洋戦争に突入する軍国主義の時代になります。
そして敗戦、何かも価値観が変わっていく中で、戦後間もない1948年に自殺によって39歳の短い人生を閉じます。

太宰治が青年期に、戦前の左翼運動に共鳴、というよりは共産党のシンパであったことは良く知られています。
「人間合格」はその時期から後半生の太宰の姿を、生涯の親友として佐藤、山田という二人に友人(架空の人物と思われる)との人生と重ねて描いています。
そして戦前は「天皇陛下万歳」一色だったのが、敗戦と共にいとも簡単に「マッカーサー元帥万歳」に変わって行った当時の日本人の心象を、太宰の保護者役である中北芳吉に代表させています。
太宰は当時のそうした風潮がガマンならず、戦後その著作の中で「今こそ天皇陛下萬歳を叫べ」という表現で怒りをぶつけています。

井上ひさしの作品は、太宰が自殺を繰り返す破滅型人生から死に至る軌跡を、左翼運動へのシンパシー、挫折、戦後の大きな時代変化と親友の死にその原因を求めています。
それが事実であるかどうかというより、井上の筆は太宰という人物の名を借りて、戦前戦後を自らの信条を貫き誠実に生き抜いた青年群像を描きたかったのでしょう。
こう書くと重いテーマを想像するでしょうが、実際は喜劇といえる作品です。
登場人物が類型的なキライはありますが、分かり易く、肩肘張らずに楽しめる商業演劇として、良く出来ていると感じました。

出演者では、主役の岡本健一が良い。本人が「何もせず立っているだけで太宰に見えたら最高」と言ってますが、正にその通り、太宰治のイメージにピッタリでした。抑制された演技でしたが、7幕目で怒りを爆発させるシーンは、ジーンときました。
脇では辻萬長の俗物ぶりが秀逸。ちょっと九州訛りの入っている津軽弁がご愛嬌です。
女優では、馬渕英俚可の熱演が光っていました。
山西惇、甲本雅裕、田根楽子の3名は決して演技が悪いわけ無いのですが、要は役が「らしく見えない」所から、不満が残りました。

3月中旬まで東京公演。

「京都市長選」が暗示する大連立の行方

当ブログでは、民主党小沢一郎代表が主導した「大連立」構想を度々批判してきたが、昨日17日に投票が行われた京都市長選が図らずもその行く末を示すものとなった。

今回の京都市長選は、自民、公明、民主、社民各党の推薦を受けた無所属新人の前市教育長・門川大作氏と、共産党推薦の弁護士・中村和雄氏との事実上の一騎打ちとなった。
選挙直前のマスコミ各紙の予想では、4党相乗りの門川候補が圧勝するとの見方を示していた。結果は予想通り門川氏が当選したものの、その差は僅か951票の辛勝となった。
基礎票からいけば4党の合計が共産党を圧倒していたのは明らかで、相乗り批判の有権者の多くが中村氏に投票したのだろう。
国政と地方政治との違いはあるものの、相乗り候補の意外な苦戦は、単なる数合わせの「大連立」は、決して国民の多数の支持は得られないことを暗示している。

もう一つ、今回の市長選の投票率は37・82%で、これは戦後4番目の低さであった。オール与党の体制になれば、国民の「政治離れ」が加速することを、改めて示したものと思われる。

小沢一郎代表は猛省すべきである。

2008/02/17

ナマ秋吉久美子に感激!”恋はコメディー”

Akiyoshi_kumiko2月16日、ル テアトル銀座で上演されている『恋はコメディー』を観に行く。目的は唯一つ、ナマの秋吉久美子を見ること。
好きな女優を一人あげるなら、文句なく秋吉久美子である。1972年のデビュー作『旅の重さ』以来、70年代の彼女の映画は殆んど観ている。特に1974年に公開された日活の藤田敏八監督の青春映画、『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』での秋吉の演技は強く印象に残っている。
映画のタイトルは忘れたが、作品の中で相手方の女優が秋吉に「あんたの顔って具体的じゃないのよね」と言うセリフがあったが、実に的確な表現だ。その「具体的でない」ところこそ彼女の特長であり、1970年代という時代を象徴している。
TVドラマでは、何といっても『夢千代日記』での芸者・金魚の演技が素晴らしかった。あの役は秋吉久美子しかできない。
「人間には3種類ある。男と女と女優。」という諺があるが、その意味での数少ない女優の一人でもある。

ストーリーは、泥棒稼業から今は足を洗った中年女性セリーヌ(浅丘ルリ子)とアンナ(渡辺えり)の二人暮しの家に、新米の泥棒ギョーム(石井一孝)が泥棒に押し入るが軽くあしらわれ、そのまま居候になる。そこへセリーヌの息子(風間俊介)が恋人ナターシャ(秋吉久美子)を連れてくるが、これがナント母親と同世代のお歳。
ここから話は二転三転して、最後はハッピーエンドに終わるというコメディー。

原作はマリア・バコーム『教えてよ、セリーヌ』で翻訳劇だが、岡本さとるの脚色はよくコナレテいて、随所に日本語のダジャレを織り込んで観客の笑いを誘う。加納幸和の演出は、3人の女優それぞれの魅力を引き出して、楽しませてくれた。
最初の上演時には『泥棒家族』というタイトルだったようだが、笑いの中に適度な諷刺もこめられ、品のあるコメディーに仕立てられていたと思う。

主演の浅丘ルリ子は、年齢を感じさせぬ身体の柔らかさを見せていたが、踊りはダメ。
特筆すべきは渡辺えりの怪演だ。圧倒的な存在力で舞台を締める。そして踊りが実に上手い。劇中で踊る『シボネー』は、他の出演者とレベルの違いを見せつけた。お見事。
石井一孝は不器用な新米泥棒を好演したが、踊りが頂けない。動きに色気がないのだ。
風間俊介はハマリ役で、気持ち良さそうに演じていた。

そして秋吉久美子。最初は黒のつなぎのライダー服で登場、それを脱ぐと下は鮮やかな黄色のワンピース姿、次の幕では真っ赤なミニのタイトで現れた。
実に美しい! 実に可愛いらしい! 実にかっこイイ! ただただウットリと眺めていた。とても50ん歳とは信じられない、やはり女優は化け物だ。
ナマ秋吉久美子が見られただけで十分満足した。

今月の東京公演を皮切りに、3月末まで全国各地で上演される。

2008/02/16

慎太郎、いい加減にせい!「石原銀行」

Isiharatochijiこの男は一体いくら都民の金をムダにしたら、気が済むのだろう。他ならぬ石原慎太郎が設立した「新東京銀行」、通称「石原銀行」のことだ。
新東京銀行は2005年4月開業以来赤字を垂れ流し、昨年9月の中間決算では累積赤字が936億円に達した。東京都の出資金が1000億円だから、殆んど食いつぶしてしまった計算になる。
他の金融機関に融資を頼んだが断られ、外資系金融機関からも見限られているのが現状だ。金を出さないのは当たり前で、再建の見通しがないからだ。
S&Pによる格付けも、下から3番目の“BBB+”にまで下げられている。
決算で公表されている以上に、実態はもっと悪いのかも知れない。

石原銀行がここに至った原因は、乱脈経営で融資した金の多くが焦げ付き、回収不可能となったからだ。元々回収の見込みがない企業に貸したり、中には幽霊企業への貸し出しもあったのだろう。
巷間伝えられる所によれば、貸出先の企業が品川区と大田区に集中しているそうだ。三男石原宏高の選挙地盤であり、もし本当なら息子の選挙資金を都民の税金でまかなったことになる。
又、融資先に自民党や公明党の関係先が多いという指摘もある。まさかとは思うが、都議会が本来果たすべきチェック機能がマヒしていたのは、この辺りに原因があったのかも知れない。
いずれにしろ「無担保・第三者保証なし」という大盤振る舞いで、石原銀行は破綻寸前に陥ったのである。

新東京銀行の設立目的は中小企業の救済にあったが、2007年9月末の貸出残高で見ると、その中小企業への融資比率は50%を切っている。既に使命は終えているのである。
処が、ここ最近になって東京都として300-400億円の追加融資をする話が進んでいるらしい。
これぞ「盗人に追い銭」、上積みして税金をドブに捨てるようなものだ。
これ以上損失を増やさぬためには、ここは損切りしか手がないだろう。

「石原銀行」が破綻に追い込まれた場合、東京都(つまり都民)の損失は計り知れない。
先ずは、石原慎太郎一族の個人資産は全て投げ出して貰わねばならないが、それだけでは足りないだろう。
残りは、都知事選で石原慎太郎に投票した人が負担して下さいよ。
私は出しませんから。

2008/02/15

鳩山邦夫「大臣失格」どころか「人間失格」

Hatoyamakunioよりによってエライ人物を法務大臣にしたものだ。
2月13日検察長官合同会議で、違法な取り調べが問題となった鹿児島県議選の買収無罪事件「志布志事件」ついて、 鳩山邦夫法相が「個人的な見解だが、事件は冤罪と呼ぶべきではないと考えている」と訓示した。
確かに「冤罪」というのは、「無実であるのに犯罪者として扱われること」を指すもので、裁判において有罪の判決が確定の場合に適用される。だから一般論としては間違っているわけではない。それなら法律の専門家を集めた会議で、わざわざそんな定義を改めて説明するもでも無い。
会議の性格や文脈からすれば、あの事件の判断はマズカッタが、それにメゲズニしっかりやってくれとハッパをかけたという所だろう。

鹿児島で起きた「志布志事件」というのは、誤って別の人間を逮捕してしまったのではなく、事件そのものが存在しないデッチ上げだったわけで、極めて悪質な捜査だった。それをロクに調べずに起訴した検察が、批判を受けたのは当然だ。
法務大臣としては、先ず反省の上にたって再発防止を指示するのが筋ではなかろうか。
官房長官から苦言を呈されると、早速発言を撤回するなど、どうも鳩山邦夫という人は、よく分からない人である。

鳩山邦夫氏は法相になって間もない昨年9月に、死刑執行について、「ベルトコンベヤーって言っちゃいけないが、乱数表か分からないが、自動的に客観的に進むような考え方を考えたらどうか」と発言して問題となった。死刑執行にあたり、法務大臣の署名を無くしたらどうかというのが真意で、これは乱暴な議論である。

10月の「友人の友人がアル・カイーダ。2、3年前には何度も日本に来ていた」という発言も、いささか舌足らずであった。
それよりもっと問題だったと思うのは、同じ10月に衆院法務委員会での次の発言だ。
その席で鳩山邦夫法相は、「田中角栄先生の私設秘書になったとき、毎月のように、ペンタゴン(米国防総省)がやってきて食事をごちそうしてくれた」と述べている。

タダでご馳走はしてくれませんよ。見返りがあるからオゴッテくれるのです。
米国の諜報機関の人間が、我が国の要人と接触し、接待や資金提供と引き換えに情報を取っているというのは、昔から知られている。中にはCIAのエージェントになっている人物がいることも、ご存知の通り。
人間として恥ずかしいから、そういう事はメッタに口外しないのがフツーだ。
仮に鳩山邦夫氏の発言が事実とすれば、米国に対して定期的に情報提供していた人物は、法務大臣としては不適格であろう。

話は変るが・・・。
昨年11月に、米軍岩国基地の海兵隊員4名が、日本人女性を集団で強姦したとされる事件があった。この事件、被害者の女性の証言がアイマイだということで、広島地検は不起訴処分とした。
処がこの4人について米軍が、統一軍事裁判法違反の罪で訴追していることが昨日判明した。
14日に岩国基地内で行われた予備審問では、被害を訴えている女性が証人に立ち、時おり涙を流し声を震わせながら「四人に暴行された」と訴えたと報じられている。
もしこの事件で、米軍が軍法会議にかけることを正式に決めた場合、我が国の検察の面目は丸つぶれだろう。
そうなるとこれからは、米兵が犯罪を起こしたら、米軍基地に逃げ込まずに、日本の警察署に駆け込むことになりかねない。

検察よ、しっかりしてくれ。

2008/02/14

宮内庁長官が異例の「苦言」会見

若旦那さま、番頭の信兵衛でございます。
先ほど玄関でお嬢さまにお目にかかりましたが、すっかり大きくなられて、ますますお楽しみでございますね。
若奥さまのお加減の方は? はっ? 時々、外出も、されるように、ああさようで、それは結構でございますね。気鬱の病には、外の空気を吸うのが何よりでございますから。

今日は若旦那さまに少々、へへ、申し上げたいことがございまして、参上いたしました。どうかお気を悪くなさらずお聞き下さいませ。
実は、以前にも一度申し上げましたが、大旦那さまがお孫さまのお顔を見たいと申しております。聞くところによりますと、こちらのお嬢さまと会えるのは年に2、3度とか。それではやはりお寂しいことでございましょう。
お嬢様とはいえ、やがてはこのお店の跡取りになるお方。大旦那さまとしても、今から色々教えておきたいこともございましょう。

それと、これはまあ手前どもの勝手な勘繰りと、お聞き流して頂きたいのですが、大旦那さまがお孫さまに会いたいと仰るのには、へへ、本当は若旦那さまに、ちょくちょく本家に顔を出して欲しいという思いがおありではないかと、まあそう思っているんでございますよ。
そりゃ若旦那さまが所帯を持たれてから、分家はされていますが、ご本家とは目と鼻の先。それが滅多にお出掛けにならないとなると、へへ、やはり世間体ということもございましょう。
俗に口に戸は立てぬといいますが、人さまの中にはお家の中がうまくいっていないんじゃないかと、そう邪推する者も出てまいります。
手前どものような商売は、へへ、世間さまの信用だけが財産でございます。世間さまから陰口をたたかれるようにでもなれば、これはもう肝心の商売にも差し障りが出てまいりましょう。
どうかその辺りを、若旦那さまも心に留めておいて頂きたいのです。

それから、お願いついでと言ってはなんなのですが、大旦那さまも大奥さまもお歳を召され、今までのようにお得意さま回りを続けるのは、段々と大変になっているのではと、気になっております。
つきましては、若旦那さまに、もう少し手助けをして頂けないかと。いや、若奥さまのお加減のことは、重々承知しております。ですから無理を承知で、へへ、かようお願いしております。

番頭の身で、差し出がましいことを申し上げて、申し訳ございません。
どうかこの通り、羽毛田アタマを下げてのお願い、お聞き届け下さいまし。

2008/02/13

「ソープランド」が支える海外取引

Bridgestone2月12日にブリヂストンが、海外との取引でワイロを提供していたことを発表しました。
同社によれば、不正支出額は、2003年以降の取引約20件で、計約1億5000万円に上る疑いがあり、不正競争防止法違反(外国公務員への利益供与)の可能性があるとして、東京地検に調査内容を報告しました。
主に中南米や東南アジアでの海外公共調達事業を舞台に、手口としては、海外子会社を通じて現地のエージェントに支払う手数料に売上額の数%を加算して支払い、上乗せ分はエージェントから外国政府や公的機関の幹部に渡されていたというものです。

これが全額であるかどうかは別として、先ずはブリヂストン社が自らワイロの存在を認め、公表したことは評価できます。
サラリーマン現役時代に、海外のプラント輸出の末端でお手伝いをしたササヤカナ経験からすると、外国の公共事業やODAガラミで海外の案件を受注する際に、ワイロに関与したことが無いという日本企業は、先ず皆無でしょう。直接手出しはしなくとも、商社など代理店を使って、外国の政治家や高級官僚にワイロを渡すのは、むしろ常識だったのではないでしょうか。
この辺りの事情は、大手総合商社やスーパーゼネコンが一番詳しいので、興味にある方は問い合わせてみたらいかが。

受注活動に関連して外国の要人が来日すれば、連日お高い料理店などで接待し、高級ソープランドにご案内する、これがお定まりのコースだったのでは。
いわゆる「飲ませて抱かせて握らせる」という、接待の古典的な手法です。
外国の好事家の間では我が国のソープランドは有名らしく、ソープに行くのが楽しみで日本に来る要人も少なくないと聞きました。
警察は思い出したように時々手入れをしていますが、こうした高級ソープを対象にしていないのは、その辺りの事情を考慮しているのでしょう。
正にソープランドが、日本経済を陰で支えていると言えます。

ワイロの話は、何も外国の例をひくまでも無く、国内の特に公共工事においても常識的なことです。もっとも政治家に渡す場合はワイロとは言わず、「政治献金」と称します。それでも時には「裏金」や「ウラ献金」もありますから、こちらは純粋なワイロになります。もちろん相手先は、政治家に限っているわけではありませんが。
仮に1億円を捻出する場合、分担金がブレークダウンされて、下請けや資材納入各社に金額が提示されます。この場合、値引きという形で処理できるため、不正な支出が全く表に出てこないという利点があります。

かくして国の内外を問わず、公共工事に関わった全ての人がハッピーになります。メデタシメデタシ。
不幸なのは、最終的に税金という形で余分にお金を払っている国民です。でも、そういう仕組みを作った政治家を選んだのもまた国民ですから、これは「自己責任」ですかね。

今回のブリヂストン社の不正支出公表は、ワイロ防止に一石を投ずることになるでしょう。

2008/02/11

滝川市長は損害を弁償すべきだ

Takikawa_shichoなんともフシギな事件だ。北海道滝川市が元暴力団の男らに、生活保護費として2年間弱で2億3321万円を渡していたという事件である。多い時は月に1855万円近い金を支給していたのだから、これはタダゴトではない。
事件の概要は次の通りだ。
「北海道滝川市で生活保護を受給していた夫婦が、通院タクシー代を同市に架空請求し2億円以上をだまし取ったとされた事件で、道警組織犯罪対策課などは2月9日、約2億円の詐欺容疑で、元暴力団組員で無職片倉勝彦(42)と妻ひとみ(37)の2容疑者ら4人を逮捕した。
ほかに逮捕されたのは札幌市のタクシー会社役員板倉信博(57)と同社社員小向敏彦(40)の2容疑者。 調べでは、片倉容疑者らはタクシー会社役員らと共謀し、実際には札幌市の病院に通院していないのに、通院したとしてタクシー代計約4000万円など、生活保護費計約2億円をだまし取った疑い。
片倉容疑者がだまし取った金で札幌市内の高級マンションを借りたり、高級車や覚せい剤購入にあてたり、関係する暴力団に資金を流していたとみている。
滝川市は異常な金額について監査委員などから指摘を受けながらも支払いを継続。不正に関与した疑いも浮上したが、道警は、正規の手続きが踏まれていたため刑事責任は問えないと判断した。」

財政難に苦しむ地方自治体が多い中で、これだけでもオドロキだが、実は逮捕に至る経緯をみていくと、滝川市の対応があまりに不自然であることがわかる。
この事件を当初からとりあげ、市議会などで追求してきた滝川市議会議員がいて、この共産党・清水まさと市議のブログに詳細な経過が書かれているので、要約をしてみよう。

・2006年
この暴力団夫婦は、元々は札幌市内に住んでいたが、この年の3月12日に滝川市に転居するということで生活保護廃止の手続きをしている。この際、転居費用の支給を受けている。
翌日13日に、滝川市福祉事務所が生活保護申請を受理し、9日後の22日には開始を決定している。
【疑問その1】生活保護の申請が即日受理され、9日後には開始決定されるのは、通常ではあり得ない。なぜこの元暴力団だけが、こうした異例に扱いを受けたのか。

ところが申請の4日後の17日に、タクシーを使って札幌市内の病院に通い始めている。
【疑問その2】生活保護の開始決定の5日前に、既にタクシー通院がなぜ出来たのか、また滝川市がなぜこの時にタクシー代120万円を支払ったのか。

もっと根本的な問題がある。それは新聞報道に書かれているように、元暴力団夫婦は実際には札幌市内のマンションで暮していて、滝川市への転居は形式的なものだった。
【疑問その3】滝川市は本人が札幌で暮していたという事実を、なぜ把握しなかったのか。

・2007年
この誰が見ても不自然な支出は市議会でも問題となり、2月に滝川市の監査事務局は金額などに疑義があるとして、詳細な調査を開始した。
5月には犯罪の可能性もある重大な問題だとして、5月22日副市長に報告。副市長は翌日市長に報告している。
【疑問その4】2007年2月に監査事務所が不正の疑いで調査を始めたのは、市長は当然承知していた筈だ。そして5月には犯罪の可能性がありとの正式報告を受けている。本来ならこの時点で生活保護の決定取り消し処分を行うべきだったにもかかわらず、市はその後もズルズルと大金を渡し続けていたのはなぜか。

11月になって、ようやく北海道警が捜査に動き、この夫婦らが逮捕される。当時の新聞記事は次の通り。
「生活保護受給者に通院で使用したタクシー代金が支給される補助制度を悪用し、生活保護費を不正に受給したとして、北海道警は19日、詐欺容疑で札幌市北区、介護タクシー会社役員板倉信博と、滝川市黄金町東、無職片倉ひとみら3容疑者を逮捕した。
道警は、不正受給が昨年から始まり、総額1億円を超えるとみて余罪を追及する。」
しかしこの時は札幌地検が処分保留としたため、道警が引き続き捜査を進め、今回の再逮捕となったものだ。

今まで見て来たように、この元暴力団の男に対する厚遇は異例だし、あまりに不自然な点が多い。普通に考えるなら
①容疑者が滝川市あるいは市の幹部の弱みを握っていて、そのために言う事を聞かざるを得なかったか
②市の内部に協力者がいたか
のいずれかであろう。
しかし捜査当局は、市側の刑事責任は問えないという見解である。
この事件を放置してきた行政の怠慢はいわば市民への「背任」であり、先の共産党市議が「市長・副市長は最低でも 1億2110万円を弁償すべき」と要求しているのは、当然の主張であろう。

一方で生活保護を受けられずに死亡した人の例もあり、現在の生活保護制度を守る上でも、こうした不正受給には厳しく対応する必要があるだろう。

2008/02/09

どうでもイイじゃん、「ヒラリーvs.オバマ」「聖子vs.ゆかり」

Obamaニュース番組はNHK国営放送しか見ていないが、今年になって米国大統領予備選挙の模様を、毎日のように詳細に繰り返し報道している。新聞報道も同様で、ネットで見る限り各紙もこのテーマに大きな紙面を割いているようだ。特に民主党の大統領候補がヒラリー・クリントンなのかバラク・オバマになるかに、専ら関心が集中している。先日のスーパー・チューズデイの際は、両陣営の選挙事務所からの中継までしていた。
正気の沙汰ではない。

アメリカ大統領選挙で共和党、民主党のどちらが勝つのかは、外交政策も異なるし、これからの日本との関係にも影響が出る可能性があり、その結果は注目される。
しかし現在行われているのは、あくまで米国大統領の候補者選びのための予備選挙なのだ。
民主党の候補が誰になるのか、アメリカ国民にとっては大きな関心事だろう。しかし日本の私たちにとって、どちらが選ばれるのかがそれ程重大な問題なのだろうか。私たちが選挙権を行使できないことを、事細かに報道されてもねぇ。
もし重要だというのなら、ヒラリーとオバマの外交や経済政策がどう違い、それが我が国にどのような影響を及ぼすのか、そういう視点での解説記事にお眼にかかったことがない。
大した違いが無いなら、要はどうでも良いことなのだ。

アメリカの現状で重要なのは、米国発の世界的不況と観測されている現状で、米国政府がどのような経済政策を採ろうとしていて、その見通しはどうなのかという点だ。あるいは泥沼に陥っているイラク戦争を、ブッシュ以降の政権がどう処理しようとしているのか、その根本にある中東政策が変わる可能性があるのか、そうしたことこそ報道する意味がある。
繰り返すが、大統領候補が女性だろうと黒人だろうと、私たちにはどうでも良いことなのである。

もっと不快なのは、小泉チルドレンと称する人間たちが、どこの選挙区から出るの出ないのという報道だ。
昨日8日に自民党の衆院選挙候補として、岐阜1区が野田聖子、東京5区に佐藤ゆかりと決定したことが報じられた。それぞれの選挙区に住む人にとっては関心があるかも知れないが、そうでない人にとってはこれ又どうでも良いことだ。

この二人の対決とやらは、数ヶ月も前からワイドショーなどで繰り返し採りあげられ、新聞でも大きく扱われてきた。
選挙になれば知名度が何より優先される。こうして繰り返し名前と映像をTVで流すだけで、圧倒的に有利となる。何のことはない、マスコミが寄って集って彼女らの選挙の事前運動をやっているわけだ。

現下の日本、マスコミが問題視し報道すべき事柄は沢山ある。
そうしたテーマを放置し、日々どうでも良いニュースを垂れ流すなら、それは報道機関の使命を放棄するものだ。

2008/02/08

池袋演芸場2月上席・昼

Kyotaro2月7日は池袋演芸場昼の部へ。平日の昼だというのに満席。若手~中堅の実力者が顔をそろへ、柳家喬太郎がトリをとるとあって、連日満員が続いているとか。早めに並んだ甲斐あって、最前列中央付近に座る。
当方のように隠居の身であればともかく、若い人や、なかには背広でネクタイかばん持ちという人までいて、他人事ながら仕事の方は大丈夫なのかしらんと心配になる。

・前座は古今亭志ん坊「子ほめ」
声に張りがあり、言葉もハッキリしていていい。面構えも落語家らしい。
・柳家さん弥「馬の田楽」
真剣に取り組んでいる姿勢は評価できるが、若さと面白味に欠ける。何かが足りないのだ。
・アサダ二世「奇術」
息抜きの芸。こういう芸人が寄席には必要。
・柳家喬之助「引越しの夢」
良くなってきた。“ネズミいらず”をかつぐ辛さがこちらにも伝わってきて、肩が凝った。熱演。
・柳家三三「長屋の花見」
実に上手い! 独特の“間”が活きて、当時の花見風景が眼に見えるようだ。もしかしてこのネタをやらせたら、三三が現役トップかも知れない。
・大瀬ゆめじ・うたじ「漫才」
今日は“割り箸”の巻。
・五明楼玉の輔「漫談」
この人一体、いつ化けるのだろうか。
・入船亭扇辰「夢の酒」
楷書の芸。女たちにもっと色気が出てくれば言う事ナシなのだが。
・ぺぺ桜井「ギター漫談」
ここでトイレに立つ客が目立つ。安心して観ていられる貴重な芸人。
・柳亭市馬「粗忽の使者」
師匠・五代目小さん譲りの演出で、手堅くまとめる。市馬の高座は、どんなネタを掛けても品がある。

―お仲入り―
・柳亭左龍「野晒し」
パッと派手な所は無いが、着実に自分の位置を固めている。この人の「野晒し」は初見だったが、面白かった。“鐘がボンとなりゃさ・・・”の唄は、もっと稽古が必要。
・古今亭菊之丞「元犬」
抜群の安定感。たまには意外性も期待したいというのは贅沢か。
・柳貴家小雪「太神楽」
座布団に座ったままの太神楽は、結構難しいと思う。“五階茶碗”をやりながら横笛を吹くという演出も、この人独特。
・柳家喬太郎「路地裏の伝説」
マクラで、同世代の落語家「三遊亭歌雀」が亡くなったとの報告。両足義足で高座に出ていた貴重な噺家だった。会場が少しシンミリ。息子の話の時は、父親としての“素”が出ていた。
今日は新作で、私としては“外れ”の喬太郎。

どの芸人だかが「平日でも満員、やれば出来るじゃないか。」と言っていたが、その通り。今日の顔付けなら毎日満員になる。
熱演が続き、充実した昼席となった。

2008/02/05

【寄席な人々】寄席と独演会

Yose同じ落語を聴きに行くにしても、寄席と独演会(落語会)では全く違う。独演会はその噺家が持てる力を十分に発揮し(なかには発揮しない芸人もあるが)、客もそれを目当てに足を運ぶ。個人の芸を観に行く場所だ。
嫌いな人は最初から来ないし、ファンだけが集まることになる。9割の人に嫌われても、1割の熱狂的なファンがいれば興行として成り立つ。俺の芸が分かるヤツだけついて来いで済む。だから個性に強い落語家の独演会になると、まるで教祖を囲む信者の集まりみたいになってしまう。身内だけしか分らないギャグが飛ばされ、馴れない人は戸惑うばかりになる。

これに反して、寄席は集団芸と言える。高座に出る芸人は一人(グループもあるが)一人が自分の芸を披露するのだが、全ての出演者がトリと呼ばれる最後に出る噺家を盛り立てていく。最初に登場する「サラ」と呼ばれる芸人から、仲入り(途中休憩)の直前に出る「仲トリ」、仲入り直後に出る「ツカミ」、その後の「膝前」、トリの前に出る「膝替り」(大がいは色物の芸人)、これらの人々が後ろへ後ろへとトリを盛り立てて行く、それが寄席の世界だ。
時にトリが若手で、仲トリに出る人が大看板というケースもあるが、この場合仲トリは抑え気味に高座をつとめなければならない。
以前、当代の金原亭馬生の襲名披露が行われた鈴本演芸場の高座で、古今亭志ん朝が「膝」で出て「三方一両損」をやったが、後日に志ん朝の独演会で同じネタを聴いたところ、まるで別物のようだった。それほど鈴本では抑えて演じていたのだと、感心したことがある。それでいながら、決して手抜きをしていないところが志ん朝の力量だった。

寄席の出演者を「顔付け」というが、席亭(寄席の支配人、オーナー)が決める。何も人気者や芸達者を並べるだけが能じゃない。
若手とベテラン、古典と新作、落語と色物などの組み合わせと考慮し、数時間の上演時間に客が耐えられるように、時には息抜きのための芸人も配さねばならない。
私が、寄席は集団芸とよぶ由縁だ。
ツマラナイ芸人だと侮ってはいけない、その日の立派な役回りかも知れないからだ。

芸人から見た寄席というのは、役回りということ以外に、時間の制約というのがある。
大勢の出演者の都合で、早めに切り上げねばならない、逆に時間をつなげねばならないと、色々な場面に遭遇する。正月公演だと「3分間で」などという場合だってある。そうしたケースも柔軟に対応しなければいけない。
長講一席が得意だが、数分間のマクラや小咄で時間をつなぐのは苦手と言う噺家は、寄席は務まらない。

寄席のもう一つの特徴は、客にとって嫌いな芸人が出ることがある。これは独演会では有り得ないことだ。嫌われているという反応は高座の芸人にも伝わるだろうから、芸人はそこを凌いでいかねばならない。拒絶反応や野次をかわす力が求められる。
立川談志が未だ寄席に出ていたころ、客席の反応に怒り客と言い争いをすることが度々あった。いくら立派な芸を持っていても、これでは寄席芸人としては失格だ。
芸人は嫌われても平気で高座をつとめ、客は嫌な芸人が出てきても辛抱して聴く、これがお互いのマナーだ。
正に寄席こそが、人間形成の場だと言える。

お金を払って人格を磨く、実に贅沢な世界ですね。

2008/02/03

立川談春「与話情浮名横櫛」他

Danshun2月2日横浜にぎわい座は「立川談春独演会」、毎回前売りで完売になるドル箱である。人気の秘密は兄弟子志の輔と同様、顧客満足度が高いためだろう。独演会と称しながらゲストが多く、ガッカリさせられるケースが少ないなか、談春のそれは約2時間たっぷりと演じてくれるのも、大きな魅力だ。

1席目は「与話情浮名横櫛」(よわなさけうきなのよこぐし)の内、発端の「伊豆屋」。
長いタイトルだが、「切られ与三郎」「お富与三郎」と言った方が通りが良い。
お馴染のない方に、談春のマクラを借りて、少々作品解説をしてみよう。
江戸後期に初代三笑亭可楽弟子で菅良助という落語家がいた。しかし生来の話ベタで人気が得られず、乾坤坊良斎(けんこんぽうりようさい)と改名し講釈師に転じた。
この人が書いた(他説あり)いくつかの講釈の中に「与話情浮名横櫛」がある。その後歌舞伎に仕立てられ、当たり狂言としてしばしば演じられているのはご存知の通り。
春日八郎が歌って大ヒットした「お富さん」もルーツはこれだ。

近年では講談でも演じられることが少なくなり、落語界では十代目金原亭馬生が高座にかけ、「木更津」「稲荷堀」「島抜け」「与三郎の死」の四部作として演じた。
馬生の録音は聴いていないが、歌舞伎の全9幕のストーリーとは随分と異なるようだ。「しがねえ恋の情が仇・・・」の名セリフも、落語の方では無いらしい。
最近では同門の立川志らくが、独演会でこのネタをかけているが、この時は全編を40分で演じたとか。ダイジェスト版という所だろうか。

談春はこのネタを自分なりに練り上げて、今年1年を目処に通しで演じようということらしい。
当日が第1回目として、発端部分である「伊豆屋」。
江戸の大店「伊豆屋」の跡取り与三郎は、役者にしたいほどの色男だが、趣味は読書一辺倒の堅物。思案に余った両親が奉公人に協力を得て、同業者の会合に出席させる。
この辺りは、ちょっと「明烏」を思わせる筋の運びだ。
思惑通り、宴席の後はお定まりの吉原へ行く所までは良かったのだが、和泉屋の若旦那と舟遊びをしている内に間違いを起こしてしまう。それが元で江戸にいられなくなり、木更津の親類の家にしばらく預けられることになる。
ここまでが発端で、談春は40分かけた。

初演とは思えない程、談春の高座は完成度が高い。登場人物の性格描写が的確であり、特に悪人を演じさせると光彩を放つ。談春の「地」か。
この分なら1年間、観客を惹きつけていけるだろう。
談春のような人気の高い若手・中堅落語家が、埋もれた作品を掘り起こし、積極的に高座にかけるのは大いに評価できる。

2席目は「蒟蒻(こんにゃく)問答」
仲入り後はガラリと変わって、お馴染の明るいネタ。
コンニャク屋の六兵衛親分、道楽者の八五郎、寺男の権助、いずれも談春の得意とするキャラで、気持ち良さそうに演じていた。
ギャクでは、権助が唄う「墓掘り」が秀逸。

最近の談春は風格が感じられる。
満足のいく独演会であった。

2008/02/02

「生協(co・op)」の看板が泣く

Seikyo毒物入りギョーザ事件が連日マスコミを賑わしている。今の所、中国の食品会社「天洋食品廠公司」の製造工程の中で、メタミドホスなど有機リン系農薬が混入した可能性が高いが、未だ原因が解明されていない。
世論の矛先はもっぱら中国の食品安全管理体制に向けられているが、それだけでは済まされない問題がある。
我が国の食糧自給率が低く、多くの食品を海外からの輸入に頼らざるを得ない現状や、中国企業への委託生産の際の安全管理、製品の検査体制、中毒事件が起きた時の情報の伝達方法など、日本側にも検討すべき課題が多い。

今回の中毒事件でもう一つ注目されるのは、問題の冷凍ギョーザが、日本生活協同組合連合会(日本生協連)が商品企画し、ジェイティフーズを通じて、中国の「天洋食品」に製造を請け負わせた商品であることだ。各地の生協は、日本生協連を通じて冷凍ギョーザを仕入れ、店頭や共同購入などで会員に販売していた。
生協を利用している多くの消費者は、まさか生協が中国で商品を加工させ、日本に輸入して、自社ブランドをつけた上で会員に販売していたとは、想像もつかなかったのではなかろうか。
「コープマーク」を信頼して商品を購入していた消費者は、裏切られた思いを抱いているだろう。

日本生協連のHPを見ると、“生協は「安全性の確保」「品質の確かさ」「低価格の実現」の3つの基本を大切に考え、組合員の意見に耳を傾けながら商品を開発しています。”と書かれている。
それでは今回の冷凍ギョーザを開発するにあたり、どのように「安全性の確保」や「品質の確かさ」を確認したのだろうか。
実際は、製造を依頼したジェイティフーズ任せで、何もチェックはしていなかったというのが実体だろう。「低価格の実現」だけを優先し、「組合員の意見に耳を傾け」ることなど一切しなかった筈だ。
正に看板に偽りありだ。

消費者運動の中で生まれた生協は、消費生活協同組合法に基づき活動している。利益を優先するのではなく、あくまで消費者サイドに立った団体であった。
今回の「安かろう悪かろう」の商品提供は、図らずも現在の生協が単なる商業主義に変質していることを示した。
事件を機に、生協が原点に立ち返るのか、さもなくば看板を書き換えるしかないだろう。

原因がどうあれ、生協は事件の加害者であることを忘れてはならない。

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