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2008/02/05

【寄席な人々】寄席と独演会

Yose同じ落語を聴きに行くにしても、寄席と独演会(落語会)では全く違う。独演会はその噺家が持てる力を十分に発揮し(なかには発揮しない芸人もあるが)、客もそれを目当てに足を運ぶ。個人の芸を観に行く場所だ。
嫌いな人は最初から来ないし、ファンだけが集まることになる。9割の人に嫌われても、1割の熱狂的なファンがいれば興行として成り立つ。俺の芸が分かるヤツだけついて来いで済む。だから個性に強い落語家の独演会になると、まるで教祖を囲む信者の集まりみたいになってしまう。身内だけしか分らないギャグが飛ばされ、馴れない人は戸惑うばかりになる。

これに反して、寄席は集団芸と言える。高座に出る芸人は一人(グループもあるが)一人が自分の芸を披露するのだが、全ての出演者がトリと呼ばれる最後に出る噺家を盛り立てていく。最初に登場する「サラ」と呼ばれる芸人から、仲入り(途中休憩)の直前に出る「仲トリ」、仲入り直後に出る「ツカミ」、その後の「膝前」、トリの前に出る「膝替り」(大がいは色物の芸人)、これらの人々が後ろへ後ろへとトリを盛り立てて行く、それが寄席の世界だ。
時にトリが若手で、仲トリに出る人が大看板というケースもあるが、この場合仲トリは抑え気味に高座をつとめなければならない。
以前、当代の金原亭馬生の襲名披露が行われた鈴本演芸場の高座で、古今亭志ん朝が「膝」で出て「三方一両損」をやったが、後日に志ん朝の独演会で同じネタを聴いたところ、まるで別物のようだった。それほど鈴本では抑えて演じていたのだと、感心したことがある。それでいながら、決して手抜きをしていないところが志ん朝の力量だった。

寄席の出演者を「顔付け」というが、席亭(寄席の支配人、オーナー)が決める。何も人気者や芸達者を並べるだけが能じゃない。
若手とベテラン、古典と新作、落語と色物などの組み合わせと考慮し、数時間の上演時間に客が耐えられるように、時には息抜きのための芸人も配さねばならない。
私が、寄席は集団芸とよぶ由縁だ。
ツマラナイ芸人だと侮ってはいけない、その日の立派な役回りかも知れないからだ。

芸人から見た寄席というのは、役回りということ以外に、時間の制約というのがある。
大勢の出演者の都合で、早めに切り上げねばならない、逆に時間をつなげねばならないと、色々な場面に遭遇する。正月公演だと「3分間で」などという場合だってある。そうしたケースも柔軟に対応しなければいけない。
長講一席が得意だが、数分間のマクラや小咄で時間をつなぐのは苦手と言う噺家は、寄席は務まらない。

寄席のもう一つの特徴は、客にとって嫌いな芸人が出ることがある。これは独演会では有り得ないことだ。嫌われているという反応は高座の芸人にも伝わるだろうから、芸人はそこを凌いでいかねばならない。拒絶反応や野次をかわす力が求められる。
立川談志が未だ寄席に出ていたころ、客席の反応に怒り客と言い争いをすることが度々あった。いくら立派な芸を持っていても、これでは寄席芸人としては失格だ。
芸人は嫌われても平気で高座をつとめ、客は嫌な芸人が出てきても辛抱して聴く、これがお互いのマナーだ。
正に寄席こそが、人間形成の場だと言える。

お金を払って人格を磨く、実に贅沢な世界ですね。

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コメント

さきほど図書館で志ん朝師匠の「おかめ団子」を借りてきました。
home9さんのいってた通り出囃子は老松ですが、まだそのさきは聞いておりません。
ゆっくりと気長に聞こうと思っています。
それにしても志ん朝師匠というお方は本当のタレントでしたね・・・
落語以外にもテレビや映画でも活躍されていた頃が懐かしいです。
この当時の私はまだ小学生でしたが、アイビールックの師匠が凄く記憶に残っています。
では、失礼します。

dorunkon様
コメント有難うございます。
若い頃の志ん朝は、TVのお笑い番組のレギュラーもしていましたし、ドラマや芝居に大活躍していました。
しかしある時からそうした活動をピタッと止めて、落語に精進しました。そこが志ん朝の偉さであり、後年の芸に結実したのでしょう。
浅草演芸ホールでの盆公演恒例の「住吉踊り」では座長役をつとめました。亡くなった年も、これが最後の高座になってしまいました。

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