ナマ秋吉久美子に感激!”恋はコメディー”
2月16日、ル テアトル銀座で上演されている『恋はコメディー』を観に行く。目的は唯一つ、ナマの秋吉久美子を見ること。
好きな女優を一人あげるなら、文句なく秋吉久美子である。1972年のデビュー作『旅の重さ』以来、70年代の彼女の映画は殆んど観ている。特に1974年に公開された日活の藤田敏八監督の青春映画、『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』での秋吉の演技は強く印象に残っている。
映画のタイトルは忘れたが、作品の中で相手方の女優が秋吉に「あんたの顔って具体的じゃないのよね」と言うセリフがあったが、実に的確な表現だ。その「具体的でない」ところこそ彼女の特長であり、1970年代という時代を象徴している。
TVドラマでは、何といっても『夢千代日記』での芸者・金魚の演技が素晴らしかった。あの役は秋吉久美子しかできない。
「人間には3種類ある。男と女と女優。」という諺があるが、その意味での数少ない女優の一人でもある。
ストーリーは、泥棒稼業から今は足を洗った中年女性セリーヌ(浅丘ルリ子)とアンナ(渡辺えり)の二人暮しの家に、新米の泥棒ギョーム(石井一孝)が泥棒に押し入るが軽くあしらわれ、そのまま居候になる。そこへセリーヌの息子(風間俊介)が恋人ナターシャ(秋吉久美子)を連れてくるが、これがナント母親と同世代のお歳。
ここから話は二転三転して、最後はハッピーエンドに終わるというコメディー。
原作はマリア・バコーム『教えてよ、セリーヌ』で翻訳劇だが、岡本さとるの脚色はよくコナレテいて、随所に日本語のダジャレを織り込んで観客の笑いを誘う。加納幸和の演出は、3人の女優それぞれの魅力を引き出して、楽しませてくれた。
最初の上演時には『泥棒家族』というタイトルだったようだが、笑いの中に適度な諷刺もこめられ、品のあるコメディーに仕立てられていたと思う。
主演の浅丘ルリ子は、年齢を感じさせぬ身体の柔らかさを見せていたが、踊りはダメ。
特筆すべきは渡辺えりの怪演だ。圧倒的な存在力で舞台を締める。そして踊りが実に上手い。劇中で踊る『シボネー』は、他の出演者とレベルの違いを見せつけた。お見事。
石井一孝は不器用な新米泥棒を好演したが、踊りが頂けない。動きに色気がないのだ。
風間俊介はハマリ役で、気持ち良さそうに演じていた。
そして秋吉久美子。最初は黒のつなぎのライダー服で登場、それを脱ぐと下は鮮やかな黄色のワンピース姿、次の幕では真っ赤なミニのタイトで現れた。
実に美しい! 実に可愛いらしい! 実にかっこイイ! ただただウットリと眺めていた。とても50ん歳とは信じられない、やはり女優は化け物だ。
ナマ秋吉久美子が見られただけで十分満足した。
今月の東京公演を皮切りに、3月末まで全国各地で上演される。
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