「三三と菊志ん」@お江戸日本橋亭
江戸の時代、芝居は朝に開演し夕方まで上演されたので、女子供の世界だった。寄席は夕方から夜まで開かれたので、こちらは大人の男の世界と、相場が決まっていた。
処が、ここ最近の寄席は女性客が増えてきて、昨夜など前から2列までで男は私一人、段々肩身が狭くなってきた。一体男どもはどこに行ってしまったのだろうか。
その昨夜3月22日は、お江戸日本橋亭で「柳家三三と古今亭菊志ん」の会が行われた。共に落語界の次代を背負う素材であり、この二人、二ツ目時代から年に数回、二人会を続けてきた。独演会ももちろん大事だが、力が拮抗している同士が二人会をやるということは、互いに競い合って向上できる場になると思う。
古今亭菊志んは2007年に昇進した若手真打、芸風が明るいし高座もしっかりとした理論派の噺家だ。欠点はインテリ臭さが残っていることだろう。これが抜ければもう一皮剥けていくものと期待している。
一席目は「だくだく」。
マクラで噺家の評価は、仲間内と客では異なることを紹介。4パターンに分けて、
①人気はあるが仲間内の評価が低い。古今亭志ん輔と菊之丞の名が出ていた。
②仲間内の評価は高いのに人気が出ない。
③人気もあり仲間内の評価も高い。市馬の名が出た。
④人気もなく仲間内の評価も低い。ネタの中で鈴々舎馬桜の名がでたが、これは冗談だろう。
先日初めて、三三に誉められたが、今の調子を落としている三三に誉められても嬉しくないと、なかなか辛口のマクラ。
さて「だくだく」だが、壁に家財道具を描いてある家に入った泥棒が、色々なものを盗む「つもり」に、この家の住人がこれを捕らえる「つもり」と、粋な泥棒噺になっている。
菊志んは熱演であったが、全体にもう少し洒脱に演じて欲しいところ。また終盤の肝心なところで、槍を長刀と言い間違えたのは頂けない。
仲入り後は「兵庫舟」。
豪華客船の中で一席うかがっていたら、船酔いで気分が悪くなり、高座を中断してしまったことを話題に、三三の病気の話をマクラにふって、本題へ。
このネタは菊志んの十八番であり、現役の落語家の中では、恐らく菊志んが一番ではなかろうか。講釈がどんどん壊れていく箇所が、いつ聴いても面白い。
柳家三三、菊志んより1年前に真打に昇進した若手であるが、人気実力とも群を抜いている。今最も期待される若手だ。男前で様子が良いのも、人気にプラスしている。
一席目は「長短」。
気の長い泥棒が、これまた気の長い住人の家に盗みに入った小咄をマクラに本題へ。
長気と短気の男の対比の面白さを描くネタだが、これは三三に限らず、最近の噺家は気の長い男の喋りが早い。もっとゆっくり喋るようにした方が、より面白味が増すと思うのだが。
菓子を食べる仕草が良く出来ていた。
仲入り後は「花見の仇討」。
菊志んの高座をイジッタ後に、マクラで病気が「睾丸炎」だったことをカミングアウト。桜の開花の季節感を出しながら、本題へ。
面白かった。
登場人物の描写もしっかりと演じ分けていて、途中ダレルこともなく、最後まで緊張感を持続した良い出来だった。
菊志んは、最近の三三は低調だと評していたが、なかなかどうしての高座であった。
双方、ライバル意識を燃やした熱演が続き、満足した。
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