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2008/03/21

刑法39条の廃止を

Kaorin2最近行われた刑事裁判で、被告の心神喪失による責任能力を問う裁判が2件あった。
一つは東京地裁で審理中の、夫を殺害、遺体を切断したとして起訴された三橋歌織被告の公判において、精神鑑定を行った医師二人(検察側、弁護側)が、ともに「心神喪失の状態にあった」との見解を示したものだ。このまま行けば、被告の刑事責任能力を問えないということで、無罪になる可能性が高まった。
三橋歌織被告が、犯行時に行動を制御できなかった、あるいは朦朧とした意識障害の状態であったとの所見である。
もう1件は岐阜地裁で、2006年6月6日に車の強奪や当て逃げを繰り返し、女性3人に重軽傷を負わせなどの罪で起訴されたイラン人・ジャムシッド・モハマディ被告の裁判の判決で、覚せい剤使用後に及んだ強盗などは、「覚せい剤の影響で心神喪失の状態にあった」と無罪を言い渡したものだ(不法残留などは有罪)。

被告の心神喪失及び心神耗弱について、刑法は次の通り定めている。
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

ではその定義はどうなっているのだろうか。
【心神喪失】精神の障害により事の是非善悪を弁識する能力(事理弁識能力)又はそれに従って行動する能力(行動制御能力)が失われた状態をいう。
【心神耗弱】精神の障害により事の是非善悪を弁識する能力(事理弁識能力)又はそれに従って行動する能力(行動制御能力)が著しく減退している状態をいう。
つまり、犯行時における被告の責任能力を精神科医が判断するわけで、客観的な尺度があるわけではない。裁判でも、検察側と弁護側の鑑定が真っ向から対立することも珍しくないのは、判断があくまで医師の主観によるせいであろう。

私自身、あるいは私の周囲を眺めても、完全に正常な人間などいないのではないかと思う。誰もが皆、少しは異常な部分を持っている。問題はその程度がどうかということであり、どこかで線引きをすることになる。
完全に正常なものをゼロ、完全に異常なものを100とすれば、全ての人はこの線上のどこかに位置している。仮に、そのレベルが69以下なら正常、70~89なら心神耗弱、90以上なら心神喪失と、大まかにいえばそういうことになるのだろう。
凶悪犯罪の場合は、正常と判断されれば死刑、異常と判断されれば無罪となることになり、正に「板こ1枚下は地獄」の世界である。

もう一つ考えなければならないのは、殺人や強盗傷害のような凶悪事件を起こす際の人間の心理状態である。私は経験が無いので断定は出来ないが、恐らく異常な心理状態になっていることが多いのではなかろうか。何であんな事をしてしまったのか、本人が後になって考えても理解できない、あるいは夢中でよく覚えていないというのが、多くの犯罪者に共通しているのではないだろうか。
三橋歌織被告の犯罪にしても、犯行時に異常な精神状態だったであろうことは、素人の私でも推測はできる。普段からそれほど重度の精神障害であったなら、普通の日常生活は送れなかった筈だ。
それを犯行の時には責任能力を問えず無罪だというのであれば、それは被害者の遺族でなくとも納得がいくものではない。

岐阜のジャムシッド・モハマディ被告のケースは、もっと極端である。つまり自ら覚せい剤を使用していたにも拘らず、それにより心神喪失となり無罪になっている。
これでは、交通事故で飲酒運転の方が罪が軽くなるようなもので、極めて不合理である。
過去の判例では、アルコールの大量摂取や薬物などで故意に心神喪失に陥った場合、刑法第39条1項「心神喪失者の行為は、罰しない。」は適用されないのが通例であり、不当判決ではなかろうか。
もしこうした理屈が通るなら、犯行前に覚せい剤を使えば、全て無罪になってしまう。

刑法39条の精神は、重度の精神障害者を救済する目的で作られたものではないのか。
それを犯行時の精神状態や、薬物による意識障害にまで拡大解釈するのは、法の精神を捻じ曲げていると考える。
無罪とすべき心神喪失についてはもっと厳密な定義が必要だろうし、それが難しいのであれば刑法39条を廃止し、刑法66条の量刑により処理すれば問題がないと思われるが、どうだろうか。
(酌量減軽)
第66条 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

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コメント

Home9さんほど正確に分析したことがありませんが、人それぞれ精神的な欠陥があると考えています。ましてや犯罪の瞬間はかなりの興奮状態で、自制心=自己制御力があるのは逆に不思議ぐらいです。

上記コメント有難うごじます。
刑法39条は重度の精神障害を負っている者が、たまたま犯罪を犯した場合に免責されることを定めたもので、それを犯行時に異常で無かったかどうかとか、ましてや薬物を摂取していたから責任は免れるというのは、法の解釈を逸脱していると思います。
正常な判断能力があって凶悪犯罪に走るのは稀なケースでしょうし、犯行時に異常な精神状態であったというのは、むしろ当然のことではないでしょうか。

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