「代理出産」は禁止が妥当
4月4日に、諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘院長が、これまで独自実施してきた代理出産のデータを公表しました。
これまで15例が試みられ、その結果8例で出産に至り、3例では流産、4例は妊娠しなかったことが明らかにされました。
注目されるのは、どういう人が代理母になったのかということですが、妻の実母が5例、実姉妹3例、義姉妹が7例となっています。35歳以上が15例中10例を占め、うち55歳以上の人も4例(いずれも妻の実母)います。
代理出産、正式には代理母出産(だいりははしゅっさん、だいりぼしゅっさん)ですが、その定義は「ある女性が別の女性に子供を引き渡す目的で妊娠・出産すること」で、その出産を行う女性を代理母といいます。
代理出産が世間で注目を浴びたのは、根津八紘医師による国内での実施の公表と、タレントの向井亜紀による海外での代理出産の実行でした。特に向井亜紀がTVなどのメディアを使って、大々的に喧伝したことも、大きなインパクトとなっています。
この問題で政府は、日本学術会議に代理母出産の是非についての審議を行うよう依頼しており、それを受けて学術会議では代理出産を原則禁止とする報告書を近く正式決定する予定です。
数年前から代理出産の禁止は議論されており、政府としては禁止の法制化を図ってきましたが、なかなか実現しないまま今日に至り、いわば既成事実だけが積み重ねられています。
今回の根津八紘により公表されたデータの中に、代理出産の問題点が明らかになっています。
子どもが欲しいというのは夫婦間の問題あるにも拘らず、実際に代理母には、妻の実母や姉妹がなっています。
私の予測では、夫の母が代理母になっている例は皆無と思われます。
なぜでしょうか。
子どもが出来ないのは妻に責任があり、それを不憫と思って、母や姉妹が身代わりをつとめているからです。
妊娠出産は現在でも危険を伴い、時には妊婦が死亡することもあります。そういうリスクを背負って引き受けるのは決まって妻の親族であり、あるいは海外でそれなりのお金を払って、代わりを頼むしかありません。
社会的、経済的弱者の犠牲の上に立って、子どもを授かるというのが、代理出産の構図です。
単純に子どもを授かったと喜んでいる向井亜紀や根津八紘医師は、そこに思い至っていない。
臓器移植も同様の問題をはらんでおり、規模が小さいうちは周囲の善意に支えられます。しかし市場経済の元で、規模がどんどん大きくなれば、臓器売買のマーケットが出来ることは避けられません。既に一部の国では臓器売買が行われ、そのための誘拐事件や殺人事件も起きています。
ここでも社会的、経済的弱者の犠牲の上に、強者が恩恵を受けるのであって、絶対にその逆は起こりえない。
代理出産については様々な議論があるでしょうが、私は禁止すべきと思っているし、混乱を避けるためにも法制化を急ぐ必要があると考えます。
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