立川談春「木更津」「文違い」の二席
4月10日の横浜にぎわい座は「立川談春独演会」。常連が多く、客席で挨拶を交わす姿が目立つ。最近の談春の会は、前座を出すようになったが、やはり以前のように、本人だけというスタイルに戻して欲しい。それも女流落語家とあっては、雰囲気がぶち壊しだ。
ドラマ「ちりとてちん」の影響で、若い女の入門志望者が増えている由。NHKも迷惑なことをしてくれたものだ。
一席目は「与話情浮名横櫛 木更津」
談春が今年2月からシリーズで口演しているもので、今回が3回目。「木更津」の副題は前回と同じだが、今回は芝居なら「赤間別荘の場」に相当する。いわゆる責め場である。
木更津の親類の家に預けられた与三郎が、土地の顔役赤間源左衛門の愛妾「お富」と出会い、密会を重ねるようになる。その現場を源左衛門に踏み込まれ、見せしめに与三郎は全身を滅多切りにされて、二百両と引き換えに親類の家に送り届けられる。医師の手厚い看護により一命は取りとめ、江戸へ戻ることになる。
芝居では簀巻きにして海へ放り込まれるのだが、それなら落命した筈だから、落語の方がリアリティがある。
一方海岸へと逃げたお富は、追いすがる海松杭の松を振り切って、海へ身を投げる。
ここまでが今回のストーリー。
談春は口調がしっかりとしていて、聴いているうちに噺に引き込まれる。源左衛門や子分の松、与三郎の性格描写も良くできていたが、お富に情感が欠けていた。
このネタ長丁場だが、談春の実力をもってすれば、客は最後まで付いてきてくれる。
二席目は「文違い」
マクラで師匠談志のエピソードを紹介したが、談志の弟子の中では談春が一番師匠に心酔しているようだ。噺家が師匠のことを語るのは良いが、適度にしておかないと嫌味になる。
さてこのネタだが、新宿の女郎おすみは、田舎者の角蔵と半七を騙して金を巻き上げ、その金を情夫(イロ)の吉次郎の眼病の治療費として渡す。その吉次郎だが、実は他の女郎に金を貢いでいたことが、忘れていった手紙からバレルというお馴染のストーリー。
談春の演じる「おすみ」「角蔵」「半七」の描写がいずれも出色。噺のテンポも良く、途中ダレルこともなく、最後まで楽しめた。
こういうネタをやらせると、談春は唸るほど上手い。
充実した独演会だった。
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