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2008/04/23

あまりに稚拙な弁護方針「光市母子裁判」

Bengodan4月22日行われた、今から9年前に会社員本村洋さんの妻(当時23歳)と娘(同生後11カ月)の2人が殺害され、当時18歳だった元少年が殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた光市母子殺人事件の差し戻し控訴審で、広島高裁は原判決(無期懲役)を破棄し、被告の元少年に対して死刑を言い渡した。

この裁判は99%死刑判決が予想されていた中で、弁護団がどのような弁護活動をするかが、最大の焦点だった。
最高裁の差し戻し判決では、事件の事実認定をした上で、「被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がない限り,死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。」と結論づけている。
弁護団が死刑判決を回避しようとするならば、情状酌量を訴えるしか方法がなかった。つまり、被告自らが起こした罪と向き合い、真剣に反省し、更生する可能性を示唆しない限り、死刑判決は避けられなかった。

しかし弁護団の方針はこれとは異なったものとなった。被告の主張に沿って、犯行は計画性のない傷害致死事件であり、死刑にはあたらないと主張した。
その主張というのが、
・弥生さんに優しくしてもらいたいという甘えの気持ちから抱きついてしまった。
・騒ぐ弥生さんを黙らせようと口を押さえたつもりの右手がたまたま喉にいった。
・弥生さんに生き返ってほしいという思いから姦淫した。
・夕夏ちゃんを泣きやますために、首に紐で蝶々結びしようとしただけ。
という内容のものだった。
これらの主張は誰が考えても荒唐無稽であり、自己弁護の言い逃れと裁判所が受け止めたのは当然だ。

こうした被告の主張が、裁判官の心証を著しく悪くさせたのは想像に難くない。
弁護方針はあまりに稚拙であり、果たして弁護団が被告の死刑を真剣に回避しようとしていたのか、疑問を感じるほどである。
どうせ死刑になるのだから、最後に被告の言い分をそのまま言わせておこうという戦術だったのだろうか。
どうも弁護人たちの意図が良く分らない。

この裁判の弁護団に対して、厳しい批判が加えられたが、その中には被告の弁護を行うこと自体を問題視するかのような言動があったのは、極めて危険である。そうした主張は、我が国の司法制度を否定するものだ。
特に、橋下徹・現大阪府知事が、TVでこの事件の弁護人の懲戒処分の署名を扇動したのは悪質であり、彼が弁護士の資格を有するのかを疑わせる行為だったといえる。
こうした人々の一方的主張は、実はこの事件の被告人と心情的に共通しているではなかろうか。

今回の判決が、少年事件についての「永山基準」から一歩踏み出し、厳罰化の方向に向かったのは間違いない。
しかし、昨今の「死刑になりたくて人を殺す」事件が多発している状況下では、厳罰化が凶悪犯罪の抑制になりえないではないかと思われる。
被告の元少年は近い将来死刑が確定するであろうが、憂鬱な気分が晴れないのはそのためか。

【永山基準】
1968−69年の連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚(事件当時19歳、97年8月執行)第1次上告審判決(83年7月)で、最高裁が無期懲役の2審判決を破棄した際に示した死刑の適用基準。(1)犯罪の性質(2)動機(3)態様、特に殺害方法の執拗(しつよう)さや残虐さ(4)結果の重大さ、特に殺害被害者数(5)遺族の被害感情(6)社会的影響(7)犯人の年齢(8)前科(9)犯行後の情状−を考慮し、刑事責任が極めて重大で、罪と罰の均衡や犯罪予防の観点からやむを得ない場合には、死刑の選択も許されるとした。

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コメント

弁護側の今回の荒唐無稽な主張を、20人を超える弁護人全員が納得して裁判を進めていたのでしょうか?
何が真実かは当人しかわからず、それを裁判で明らかにするのだとはいえ、たまたま首に手がかかって絞めてしまったなんてこと、一般人から見ても理解しがたいです。法律のプロの常識を疑いたくなります。よく、TVの前で話せるなあと思いました。弁護士より前に「人」としてどうかと思いました。
死刑廃止を訴える弁護士さんたちと聞きますが、死刑回避のためには、可能性のあることを並べ立ててなんでも主張してる。この裁判だけでそういう弁護士が20人もいるのだから、目的のためなら何でもありみたいな弁護士が他にもたくさんいるのか・・となんだか怖くなりました。(こういう弁護士に弁護されたくないと思いました。まだ、お世話になってませんが・・)

投稿: にの | 2008/04/23 19:58

にの様
コメント有難うございます。
弁護士ですから、被告人の利益を守ることが第一義的な課題ではあります。
しかし被告があまりにも荒唐無稽な主張をした場合は、弁護人として適切なアドバイスも必要になるでしょう。
エントリーには敢えて書いていませんが、例えば復活の儀式のために死者を姦淫したとの主張は、男性なら誰もが、そんなことは有り得ないと否定するでしょう。第一、拘留中に友人に書いた手紙の内容とも、全く矛盾しています。
どうしてそんな子供だましみたいな弁護方針で臨んだのか、私には理解不能です。

投稿: home-9(ほめく) | 2008/04/23 23:17

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