「喬太郎・白鳥」WAZAOGIろっく・おん
4月23日は内幸町ホールの、“「柳家喬太郎・三遊亭白鳥」WAZAOGIろっく・おん”に出向く。「ミックス寄席」が行っている公開レコーディングであり、OKならCDとして発売される。普通は、寄席や独演会で録音し選択してCD化するのだが、こういう風な「今から録音しますよ」というやり方とどちらが良いかは、意見の別れるところだろう。私なら前者を採る。
今回、小屋に入り着席した時から何となく居心地が悪かった。客層がどうこうではないし、はっきりとした理由があるわけではない。
そのせいかどうか、喬太郎の一席目で、当初の「彫師マリリン」を途中で中断し、「派出所ビーナス」を最初から演じ直した、本人も言っていたが、とても珍しいことで、私は初めての経験である。喬太郎としては、どこかシックリこなかったのだろう。
二席目でも喬太郎は、最前列で身体を前後にゆすって笑う客がいたのが気になったらしく、「どうされました?気が違ったんですか?」と訊いていた。
居心地の悪さは、私だけでは無かったのかも知れない。
休憩を挟んで、喬太郎と白鳥が2席ずつ、いずれも新作である。
・三遊亭白鳥「ナースコール」
病院の看護婦と、老人の患者とのやりとりを描いたネタだが、私には面白さが理解できなかった。新作落語の場合、どこかにリアリティが必要であり、ウンウンそうだよなと思わせることが大事だと思う、白鳥のネタには、それが無い。そこが同じ病院を舞台にしても、文珍の「老婆の休日」とは雲泥の差があるのだ。
・柳家喬太郎「派出所ビーナス」
ネタを途中で変えたことについて、寄席で「宮戸川」上下の口演でエネルギーを使い果たしたとエクスキューズしていたが、確かにマクラがいつもの喬太郎のテンションと違うなという印象を受けた。
しかし本題に入るとさすがで、池袋駅前交番を舞台にして、旅館の女将や秋葉系の女の子が警官になるというストーリーを楽しく聴かせてくれた。
・柳家喬太郎「夜の慣用句」
得意のサラリーマンもので、課長と部下が飲み屋やキャバクラに行き、課長が行く先々で「キミの座右の銘は何かね?」と訊くというストーリーだ。
課長の喋りや仕草が、こういう男って確かにいるよなと思わせる所がさすがである。飲むと部下に威張り、説教し、やたら教訓を垂れるという、企業の管理職の悪いクセを良く衝いている。
・三遊亭白鳥「死神」
古典落語のネタを、白鳥がアレンジして演じたもの。病院の医師が医療ミスを理由に、医師免許を剥奪され悲観しているときに死神にとりつかれるという設定にしている。スジとしては工夫されていて、意表をつかれるのだが、白鳥は人物描写が下手だ。だから平板になってしまい、クスグリが少なくなると途端にダレテくる。もう少し話芸の基本を修行しないと、ネタの面白さが発揮できない。
居心地の悪さは終演まで続き、どうもスッキリしない会となった。
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