ブッシュと金正日の「手打ち」が近い?
4月初め頃から。北朝鮮が核施設の廃棄と、同時にシリアに核兵器開発の技術を供与したことを「自白」して、その見返りにアメリカは北朝鮮をテロ支援国家のリストから外し、経済制裁も解き晴れて経済支援を受けられるようになるというウワサが流れていたが、どうやらその方向に向かいつつあるようだ。
この件で米国のブッシュ大統領は4月29日の記者会見で、北朝鮮によるシリアの核施設建設への協力を明らかにした理由として、中東への核拡散を防ぎ、イランにウラン濃縮活動の停止を迫るのが目的だったと語っている。
つまり、北朝鮮の核技術が、シリア経由でイランに流されたというシナリオを描きたいのだ。これにより、
(1)イスラエルのシリアへの空爆を正当化し
(2)イランの核開発を停止させるという口実で、イランへの先制攻撃を準備する
という戦略であろう。
肥大化した軍需産業を抱えるアメリカは、常にどこかで戦争をしないといけない。戦争はアメリカにとり、最大の公共事業であるといえる。ちょうど日本で、常に道路を造り続けなくてはいけないのと同じ理由だ。
泥沼に陥ったイラク戦争を早く収拾に向かわせ、イランへの攻撃に備えるという点では、共和党と民主党との基本的政策に違いはない。
現に民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントンは先日、「私が大統領になったら、イランがイスラエルに核攻撃した場合、米国がイランを攻撃して全滅(totally obliterate)させる」と語った。「核攻撃」を「核開発」に置き換えれば、いつでもイランへの先制攻撃が正当化されるわけだ。ブッシュがイラク戦争なら、ヒラリーは(もし大統領になればの話だが)イラン戦争に手を染めるのだろうか。
米国の軍需産業は、共和・民主どちらの陣営にも巨額の選挙資金を出しており、従ってどの候補が勝とうと、スポンサーの意向には逆らえない仕組みになっている。
イランはアメリカと事を構える気は全くない。資源大国であるイランは米国と紛争を起こしても、何もよい事がないからだ。金持ちケンカせずだ。
反米感情はあるが、それはイランーイラク戦争の時、アメリカがフセイン大統領に味方し、イラクに大規模の軍事支援を行った。その結果、イラクからイランに飛ばされたミサイルの殆んどが、米国製だったからだ。
「次」に備えるために、アメリカとしては対北朝鮮外交で早く結論を出したいだろうし、北朝鮮側は早く経済支援を受けたい。アメリカが金正日体制の維持さえ約束すれば、北は米国の提案をのむ可能性が高い。両者の思惑が一致すれば、「手打ち」が現実味を帯びてくる。
どうする、日本の外交。
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