アンネ=ゾフィー・ムターを聴きに行く
6月8日サントリーホールで行われたアンネ=ゾフィー・ムターのバイオリン演奏会に出向く。ガラじゃないというご批判もあろうが、今年後半はいくつかのクラシック・コンサートを聴きに行く予定を立てている。昨年の内田光子ピアノ・リサイタルに行き、音楽というものは聴くのではなく、観るものだと悟ったためだ。
特にムターのファンということではない。要は一流といわれるバイオリニストの生演奏を、サントリーホールで聴きたかった。
アンネ=ゾフィー・ムターというと直ぐに頭に浮かぶのは、帝王カラヤンに見い出された天才少女という称号である。当初は名誉な称号だったのだろうが、カラヤン亡き後も未だにそのイメージを引きずられているとすれば、ご本人としては不本意だろう。
13歳でコンサートデビューし、14歳にしてベルリン・フィルにデビュー、翌年には最初のアルバムを出しているのだから天才少女の名に恥じないのだが、その彼女も今年で45歳になる。30年間もの間、世界の第一線で活躍し続けた実績には、文句のつけようがない。
今回の演奏会はトロンハイム・ソロイスツという室内アンサンブルとの共演である。
当日のプログラムは、次の通り。
・バルトーク「弦楽のためのディヴェルティメント」
・J.S.バッハ「ヴァイオリン協奏曲第2番、ホ長調」
・ヴィヴァルディ「ヴァイオリン協奏曲集『四季』」
トロンハイム・ソロイスツというのは、トロンハイム音楽院の弦楽器奏者育成の場として生まれ、現在はアンサンブルとして演奏活動を行っている。構成はヴァイオリン(第一、第二)、ヴィオラ、チェロ、ダブル・バス、ハープシコードであり、チェロ奏者で芸術監督のオイヴィン・ギムセを除くと、比較的若い奏者が多い。
バルトークの作品のみトロンハイムの演奏で、バッハ、ヴィヴァルディの作品はムターとの共演であり、いずれもムターの弾き振りだった。後者の2曲ともに既にアルバム発売されており、今回のプログラムはいうなれば自家薬篭中の作品を選定したということだろう。
バッハは3曲のヴァイオリン協奏曲を残しているが、この第二番は特に第二楽章の旋律が美しい。
「四季」については解説するまでもないだろう。
エメラルドグリーンのロングドレスで登場したアンネ=ゾフィー・ムターは、舞台中央に立ち、まるで舞うかのように身体を前後に揺らし、華やかな演奏スタイルを見せていた。ヴァイオリンという楽器はこれほど美しくも甘美な音色を響かせるものかと、ウットリと聴き惚れてしまった。
クラシック演奏家といえどもパフォーマーであり、姿・形が美しいというのは大事な要素だ。この点、ムターは申し分ない。
「四季」の演奏に関していえば、我が家にはカラヤン指揮のウィーン・フィルと共演したムターのアルバムがあるが、平凡な印象しか受けなかった。今回の演奏はこれとは全く異なり、心を打つものだった。
アンコールで舞台に再登場すること9回、3曲の演奏を行い、2曲は「四季」のサワリだったが、もう1曲はバッハの「G線上のアリア」をご愛嬌に。
十分満足のいく演奏会であった。
クラシックも悪くないですよ。
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