「恐竜と隣人のポルカ」は駄作
6月14日渋谷パルコ劇場にて「恐竜と隣人のポルカ」を観劇。キッカケは評判の後藤ひろひとという作家がどういう芝居を書いているのか、一度観ておきたかったからだ。
作者自身の作品解説によれば、常に複数の要素を組み合わせて作品を書いており、今回は恐竜への興味と、マンションの理事を経験したことを機に隣人、そしてグラミー賞にポルカ部門があると分かったことから、この三つのキーワードを組み合わせて作劇した由。
さて、どんな展開になるのだろうか。
主なスタッフとキャストは次の通り。
後藤ひろひと;作・演出・柴栄博士
寺脇康文 :戸田幸夫
手塚とおる :熊谷柿一郎
水野真紀 :戸田千春
森本亮治 :戸田翔太
大和田美帆 :熊谷桃子
竹内都子 :熊谷亜矢子
兵動大樹 :島之内(ディレクター)
石野真子 :石野真子(本人)
ストーリーは、
タウンハウス(舞台設定ではそうなっている)に隣り合う同級生同士が、ある時一方の戸田家の庭から恐竜の骨が発見され、隣家の熊谷家に内緒で一儲けを企んだ所から両家の間に大騒動が持ち上がり、家族は勿論、恐竜博士やTVディレクター、果ては戸主二人の共通のアイドルだった石野真子まで巻き込み大混乱という物語。
作者が解説で書いている「感動ゼロ」「理屈ゼロ」、アンコールで作者が言っていた「筋は渋谷駅に着く頃は忘れている」、いずれもその通り、実に他愛ないお話だ。
コメディの基本は「アリソデ・ナサソ」であり、設定のどこかにリアリティが求められる。今時、自宅の庭から恐竜の骨が出てきたといって、大儲けできると考える人は誰もいないだろう。
むしろ敷地から文化財が発掘されてしまったり、所有する家財が文化財に指定されてしまったりすると、実際には大変な負担になるのだ。
そういうカンドコロを外してコメディを作ると、これはもうドリフのコント並になってしまう。いや、ドリフのコントの方がまだ設定にリアリティがあるだろう。
かといって荒唐無稽にしては中途半端だ。
アイドル石野真子の扱いも月並みで、工夫が感じられない。
要は、作者のメッセージが観客に伝わってこないのだ。
芝居を観ている最中はそれなりに面白いのだが、笑いの底が浅いのだ。
後藤ひろひとの過去の作品は全く知らないが、この作品に関しては駄作だと思う。
出演者では手塚とおるの怪演が光っていた。軟体動物のような身体の動きは存在自体がオカシク、この人は別の舞台で見てみたい。
森本亮治と大和田美帆が堅実な演技を見せていたが、竹内都子と兵動大樹についてはキャスティングの意図が分からない。コメディだからお笑い系を連れてきたのだろうか。
7月6日まで各地で巡演。
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