桂文珍独演会in川崎市
「丹波篠山山家の猿が アヨイヨイ
花のお江戸で芝居する ヨーオイ ヨーオイ デッカンショ」
有名な「デカンショ節」の一節である。
丹波篠山の出身である桂文珍が、花のお江戸ならぬ労働者の街・川崎での独演会。8月23日の会場は川崎市教育文化会館大ホール。川崎は久々とか。
昨年1年間で180回以上の独演会を開いたというのだから、文珍は独演会の王者だ。全国を巡演しながら2日に1回の独演会というのは超人的である。ただ質的にどうかは、また別問題。
・桂楽珍「青菜」
開口一番に登場したが、文珍の一番弟子。キャリアからいえば、東京の落語家で言うと中堅の真打というポジションになる。それがメクリから座布団返しまでやるのだからチョット気の毒。文珍一門はよほど人手不足なのだろうか。
「青菜」という噺の勘所は、夏場広い庭のある家の縁側で、この家の主人と植木屋が世間話を交わす季節感だ。前半は涼風が吹きぬけるようなユッタリとした場面と、後半の暑苦しさとの対比が大事。楽珍の高座は前半から暑苦しく、特に主人の描写に風格が感じられない。これではダメ。
・桂文珍「マニュアル時代」
一応タイトルはついているが、マクラの小咄を集めたもの。何回も同じギャグを聞いているのだが、それでも笑える。ファストフードの店員から、謝罪会見の企業トップまで、全てがマニュアル化されている時代風潮に対する諷刺がこめられている。
・内海英華「女道楽」
「女道楽」というと放蕩のように聞えるが、そうではない。高座で三味線などを演奏するという芸で、今やこの人が日本でただ一人となったようだ。歌手もしているそうで、声が良い。三味線の曲弾きで見事なバチ捌きを見せてくれた。
・桂文珍「算段の平兵衛」
初めて聴いたネタ。ストーリーは次の通り。
何事も上手く算段する所から算段の平兵衛と呼ばれる男が、庄屋の妾をしていたお花と所帯を持つ。博打に明け暮れてスッカラカンとなった平兵衛は、女房お花に色目を使わせて庄屋を家に呼び込み、美人局で金をむしり取ろうと図るが、誤って庄屋を殺してしまう。遺体の始末に困った平兵衛は一計を案じ、死因をゴマカスと同時に、大金を手に入れる算段をする。
さて、その結末は・・・・、聴いてのお楽しみ。
人間の業をテーマにしていて笑いも少ないネタで、悪人が栄えるという結末から、一歩間違うと陰惨な噺になりかねない。文珍の演出はクスグリを随所に入れながら、平兵衛が悪人だけどどこか憎めないという人物設定にして、面白く聴かせてくれた。文珍の力量を示す高座となった。
~仲入り~
・桂文珍「小言幸兵衛」
時間が急いていたのか、先を急ぐような展開で薄味の高座となり、不満が残った。
独演会では最後のネタの印象が大切なので、「算段の平兵衛」を後ろに持ってきた方が良かったのではなかろうか。
前座を出さずに、本人が三席という独演会のプログラムは評価できる。
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