モリキド寄席「喜多八とその呑み仲間の会」
数ある地域寄席や落語会の中でも、一番高いのはこの会だろう。なにせ新宿住友ビルの47階で開かれたのだから。
柳家喜多八の熱烈なファンであるモリさんとキドさんが主催する「モリキド寄席」、第3回は8月30日に。会が終わってから、希望者は出演者と共に呑み会に参加できる趣向。150名の会場は満席。
私がまだ若かった頃、先代小さん門下に二人の有望な二ツ目がいた。柳家さん治、さん八だ。今はそれぞれ柳家小三治と入船亭扇橋という大看板になっている。今回その弟子である喜多八と扇遊が顔を揃えた。
・柳亭こみち「垂乳根」
二ツ目だそうだが、実力は前座並み。この程度のネタで2度もトチルようじゃ、先が思いやられる。サービスの踊りは良かった。
・柳家喜多八「小言念仏」
この10年くらいを振り返って、一番化けたのはもしかして喜多八かも知れない。かつては「虚弱体質」を売り物に、やけにテンションの低い噺家だなあという記憶が残っている。今や押しも押されもせぬ、人気落語家の一人となった。
マクラで師匠を小三治に選んだ理由として、「志ん朝は人気が有り過ぎた。立川談志は下品で、あれが良いと言う人の気が知れない。」に、場内から共感の声。
そうか、弟子は師匠を選べるが、師匠は弟子を選べないのだ。
少々壊れた念仏で、場内を沸かす。
・入船亭扇遊「明烏」
この会で、廓噺が二つ入れてあるのは、今年が赤線(もう死語か。淫売屋のことだ。)が廃止になって50周年だとのこと、そういえば50周年記念の催しだの、TVの特番だのが無い。
売春防止法はできたが、売春は一向に無くならない。一度吉原の街を車で通ったことがあるが、不夜城のようだった。警察も取り締まらないし、警官だって通っているのだから、有って無きがごとき法律なのだ。
いつもながらの扇遊の折り目正しい高座だったが、廓の女将に色気があり、良い「明烏」に仕上がっていた。甘納豆の食い方もドウに入っている。
欲をいえば、源兵衛と太助にもっと遊び人風情が欲しい。
~仲入り~
・柳家喜多八「付き馬」
最近の落語家にとって廓噺が難しいのは、当時の知る人がいなくなったためだろう。今の師匠連でさえ経験が無いのだから仕方がない。文楽と志ん生の世代でおしまいなのだ。
だから「妓夫太郎(ギュウ)」が、もうキャバレーの呼び込みみたいになってしまう。そこは目をつぶって聴くしかない。
テンポの良い「付き馬」だったが、客の男にもっと「粋さ」が欲しいところ。そうでないと、海千山千の妓夫太郎があそこまで騙されるという説得力に欠ける。
妓夫太郎と早桶屋とのやり取りは秀逸。
入場者に配られるプログラムが親切で、良く出来ていた。
他の会でも、是非見習って欲しい。
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