元禄めおと合戦―光琳と多代―@明治座
8月24日は明治座へ。どうもこの小屋はやたら売店が多く、落ち着かないのであまり好きではないが、今回はナマ藤山直美を一度見たいと思って、「元禄めおと合戦―光琳と多代―」の芝居に出向く。
楽日の前日の日曜日ということもあって一杯の客席だが、8割方は中高年のご婦人で、何だか場違いの所に来たみたいで、どうも居心地が悪い。
主なスタッフとキャストは次の通り。
原作:保戸田時子
脚本:金子成人
潤色・演出:宮田慶子
【主なキャスト】
藤山直美:光琳の妻・多代
中村梅雀:尾形光琳
岡本健一:弟・尾形乾山
西川忠志:その友人・源丞
大津嶺子:尾形家の女中・おらく
小西美帆:同下女・おさん
太川陽介:赤穂の浪人・鈴田重八
床嶋佳子:その妻・おしま
羽場裕一:幕府の役人・中村内蔵助
松金よね子:物売り・お竹
ストーリーは至ってシンプル。才能はあるが放蕩のし放題で頼りない亭主と、しっかり者の女房という組み合わせで、それを梅雀と直美が演じるのだから分かりやすい。これに身持ちの堅い弟、忠義な女中、健気な下女とくれば、読者の皆さんの筋は大方見当がつくというもの。
味付けに元禄のバブリーな雰囲気と、赤穂浪士の討ち入りが絡む。
大いに笑わせ、時にホロリとさせ、最後はメデタシメデタシの大団円。
ベタな脚本だが、TVの水戸黄門と同じで、「お約束」のストーリーの方が、観客は安心して観ていられるのだろう。
出演者ではお目当てだった藤山直美の演技が断然光る。周囲の俳優とは段違いの演技力で、舌を巻いた。
先ず立ち姿が綺麗だ(スタイルは決して美しいとは言えないにも拘らず)。一つ一つの動きにムダがない。そして実に可愛らしい。台詞回しが良く、声が凛としてよく通る。つまり役者として言う事がない。
敢えて欠点として上げるなら、あれだけ個性的だと、どの役をやっても藤山直美になってしまうのではないかと。まあ、そう思わせるほど芸達者なのだ。
共演の中村梅雀は喉を痛めていたのか、声が割れるのが気になった。全体に精彩を欠いていたと感じたのは、気のせいだろうか。
助演の松金よね子の存在感が目をひいた。物売りの役だが、この女が背負ってきた過去が目に浮かぶような、奥の深い演技なのだ。役作りのお手本である。
他には、西川忠志が軽妙な演技を見せ、越後屋の主を演じた綱島郷太郎の慇懃無礼ぶりが光る。
この芝居、藤山直美の演技を観ただけで、元を取った気がする。
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