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2008/09/20

【「売防法」施行50周年記念】「売春」って悪いこと?

「売春防止法」が施行されたのは1958年(昭和33年、法律の公布は1956年)で、今年はちょうど50周年にあたります。今のところ、政府主催で50周年式典を行うというような計画はありません。
処で、この法律が施行されてから今日までに売春は増えたのか減ったのか、正確な統計データが無いので、この法律は効果は良く分からないわけです。
はっきりしていることは、法律で禁止しているにも拘らず半ば公然と組織的売春は行われているし、警察当局も本気で取り締まる意志は無いということ。取り締りの対象は、専ら児童買春に重点が置かれています。第一、警察官自身が売春の客になっているのですから、成人の売買春については野放しに近い。
効果も判然とせず、違法状態が放置されているような法律、一体どういう意味があるのだろうかという、素朴な疑問が湧いてきます。

結論的にいえば「売春防止法」は、法律の中に本音と建て前が同居している、だから元々が「ザル法」なんですね。
では一体「売春防止法」とはどんな法律なのか、大事なポイントをいくつか拾って検討していきます。
なお事の性格上、性的な表現が多く含まれますが、ご容赦ください。決してワタシの好みではありませんから。

(1)「売春」の定義
【第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。】
・「性交」を辞書で見ると、“男女が性的交わりをすること。交接。交合。房事。セックス。”とあります。
・「対償」とはどういう事でしょうか。法律的には、売春をすることに対する反対給付としての「経済的利益」であり、「報酬」や「対価」と同意義です。
「対償」の具体的な内容は、
①現金
②物品
③金銭の貸付け、返済の猶予や免除
などが含まれるとされています。

(2)「性交」に限定
例えば「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では、次のようになっています。
【第二条 2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。】
片方は成人を対象に、もう片方は児童を対象にしているとはいえ、同じ売春(買春)という行為に対して全く異なる定義を持ってきているというのは、どうも平仄が合いません。
「売防法」は性交だけを対象にしていて、その他なら何でも許されるとしてきたことが、性産業の氾濫を招いたのでしょうか。

(3)組み合わせは「男女」に限定
売春が行われる組み合わせというのは、3通りあります。
即ち、男:女、男:男、女:女です。
このうち、「児童ポルノ法」では同性同士でも対象となりますが、「売防法」では男女の組み合わせに限定されます。同じ売春行為でも、男娼(男色の)はこの法律には抵触しないことになります。

(4)相手は「不特定」
「売防法」では、相手が不特定の場合にのみ対象となります。つまり特定の相手の場合は、この法律には抵触しません。同じ行為をしても相手が特定なら対象にならない、これ自体実に変な法律です。
更に問題となるのは、相手が「特定」だが複数の時はどうなのかということです。
複数の旦那を持ったお妾さんというのは、相手が特定だから対価を受け取っても売春にならないのだろうか。常連しか相手にしない売春婦は、対象にならないのでしょうか。会員制の場合は「特定」になるのか。
どうもこの「不特定」という規定は曲者ですね。

(5)「対償」の範囲
「対償」は大半が現金です。物品の場合は稀でしょうし、貸し付けや借金の棒引きも、実態としては金銭の支払いと同じだと言えます。
しかし「対償」=「経済的利益の供与」であるとすれば、下記のケースも本来は「対償」に含まれる筈です。
①営業活動などで「契約」や「発注」を、物品などを購入を、新規顧客の紹介をしてもらう。
②事業や商売の拡大への援助をしてもらう。
③採用、昇進、配属、転職などで便宜を図ってもらう。
④水商売などで、来店の頻度を上げて(お得意さん)もらう。「指名」を約束させる。
⑤家賃や生活費、旅行費の一部又は全部を負担してもらう。
⑥TVや映画、舞台などへの出演又はディスクや書籍の発売に便宜を図ってもらう。
⑦有益な情報を提供してもらう。
などなど、利益供与という観点から見ればクロでしょう。なぜなら、いずれも最終的には金品の供与に結びつくからです。おや、貴方は今、一瞬ドキっとしましたね。
ただ法令ではどうなっているか分かりませんが、現状では「売防法」でいう「対償」には適用されないのではないかと思われます。

(6)「対償」供与の方法
大きく2つに分かれます。
①その度毎に供与する(支払う)。一番分かり易いのはキャッシュ・オン・デリバリーで、一般的にはこれが大半を占めているでしょう。
②定期又は不定期にまとめて供与する。
本当は供与(支払い)方法は問われないでしょうが、まとめて支払うというケースだと、相手は「特定」とみなされて、「売防法」の適用を免れるのではないでしょうか。
人から聞いた話ですが、こういうケースもあります。曜日限定の2号さんで、月曜日はAが旦那、火曜日はBがという風に、月~土(日曜は休みだそうです)に6人の特定の旦那が決められている。つまりシェアリングですね。今時、東京で2号さんを抱えると年間で最低でも数百万円の経費がかかるそうですから、余程の大金持ちでないと無理です。それに毎日じゃあ、旦那の身体がもたないしね。
年間契約で、謝礼は毎月支払うというシステムだそうで、これなど実態は完全な売春であるにも拘らず、「売防法」には抵触しなそうです。

(7)「売買春」は禁止
「売防法」の解説の中には、日本では売春は禁止されていないと書かれたものがありますが、それは事実ではありません。
【第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。】
売春も買春も法律で明確に禁止されています。これに反すれば違法行為です。
処がこの法律の不思議なことには、これに違反しても罰則が無いんです。禁止はされていても罰則が無いとなると、車内での携帯電話の使用と同じですかね。
一種の精神条項みたいなもので、罪には問わないが心に留めておけということでしょうか。

(8)処罰の対象
それでは処罰の対象となる行為ですが、下記の通り定められています。
・公衆の目に触れるような方法による売春の勧誘や誘引(5条)
・売春の周旋(6条)
・欺き、困惑、脅迫、暴力、親族関係を利用した影響力により売春をさせる行為(7条)、
・上記による対償の収受(8条)
・売春をさせる目的による前貸しなどの利益供与(9条)
・人に売春をさせることを内容とする契約をする行為(10条)
・売春を行う場所の提供(11条)
・業として売春させる、いわゆる管理売春(12条)
・売春の場所を提供や管理売春業に対し、資金や土地、建物を提供する行為(13条)
つまり売春を行っても、上記の行為に抵触しなければ罪に問われない。他人の力を借りずに、個人として行う売春は処罰の対象にならないということになります。C2Cの直接取引きならOKなんですね。

売春を「性交等の対価として経済的利益を得ること」と定義すれば、世の中は犯罪者だらけになってしまう。だから二重三重の制約を設けた上で「売春」を狭く定義付け、かつ売春それ自体は処罰の対象としない。「売防法」とはこういう法律です。
売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであるというタテマエに立ちながら、あまり厳しく取り締ると国家が個人の生活や権利を過度に制限するので、程々に、というのが「売春防止法」の精神であるように見受けます。
従って取り締りは実質的に、不法滞在の外国人に対する入管法違反、人身売買や脅迫、監禁などの売春の強制、暴力団の資金源などに関連するような場合などを対象としているのでしょう。

日本には終戦直後までは公娼制度がありましたが、1947年に「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」が出され廃止となります。しかし「赤線」と称された地域での売春は半ば公然と続けられていました。
1958年に施行された「売防法」により「赤線」は一掃され、そこで働いていた女性は保護され、施設に収容されて更生させられました。
ある意味、この段階で法律の使命が終わったのかも知れません。

世界中、どこへ行っても売春の無い国は存在しないでしょう。俗に「飲む、打つ、買う」と言いますが、人間の「業」みたいなもので、分かっちゃいるけどやめられない。
全てを法律で禁止し、違反した人間はどんどん牢屋に放り込む、こうすればきっと清らかな社会にはなるでしょうが、それが果たして住み良い社会かどうかは大いに疑問ではあります。

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