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2008/09/14

青年劇場「藪の中から龍之介」@紀伊国屋サザンシアター

ボクは10-30代の頃、「閃輝暗点(せんきあんてん)」という病を持っていた。どういう症状の病気かというと、芥川龍之介の遺稿「歯車」が、次のように詳しく描写している。
「僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?——と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だつた。僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖(ふ)やし、半ば僕の視野を塞(ふさ)いでしまふ、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失(う)せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、——それはいつも同じことだつた。」
龍之介はこの病の病名を知らず、幻聴だと思い込んで悩んでいた。自殺の動機の一つと言われている。
ボクは同病相憐れむで何となく芥川龍之介に親近感を持ち、中学生の頃には主な作品は全て読んでしまった。

9月13日、「青年劇場」の「藪の中から龍之介」という芝居に行く気になったのは、やはり龍之介がテーマであったからだ。
作=篠原久美子
上演台本・演出=原田一樹
<キャスト>
葛西和雄=武藤刑事(鬼の酋長)
北直樹=芥川龍之介(レエン・コオト君)
大月ひろ美=妻・文(ろおれんぞ)
吉村直=養父・道章(杜子春の父)
千田京子=養母・トモ(婦人)
藤井美恵子=伯母・フキ(お釈迦様)
伊藤めぐみ=森田幸子(小女房)
矢野貴大=石田平六(下人)
大木章=中田編集長(騎兵)
菅原修子=秀しげ子(沙金)
広戸聡=久板卯之助(猿)
(カッコ)内は龍之介の作品のなかの登場人物で、この名前から小説のタイトルが当てられれば、アナタは龍之介通です。

ストーリーは、1927年7月24日芥川龍之介は服毒により死亡するが、ここに彼の作品の登場人物が集まり、彼らが実在の人物に扮し、もう一度龍之介が生きてきた道を辿ろうということに決まる。
龍之介の現実の生活と、登場人物の世界が交差する中で、次第に見えてくるものはなにか・・・。

とても面白い着想だが、脚本は成功したとは言えない。主人公・芥川龍之介について、従来にない新しい解釈がなされたかというと、そういう訳でもない。
それならエンターテイメントに徹すれば良いのだろうが、そちらも中途半端な印象だ。石田平六と森田幸子の恋愛模様は余計だったし、彼らの絶叫口調はこの芝居の雰囲気を壊す。
石原敬の舞台美術は良く工夫されていた。

出演者では、葛西和雄の落ち着いた演技が光る。登場してくると舞台が締まる。
妻・文を演じた大月ひろ美に品があり、ひたむきさが伝わってきた。
主人公を演じた北直樹は、龍之介の雰囲気を醸し出していたが、着物の着付けがいつもだらしなく、あれは意図してやったものだろうか。ダンディな龍之介のことだから、来客の時はもう少し服装がきちんとしていたのではなかろうか。
矢野貴大はどう見ても農村の青年には見えない。あれでは都会の労働者だ。
龍之介に社会主義思想を教えた久板卯之助役の広戸聡には、もっと凛とした風格が欲しい。
吉村直のヒョウヒョウとした演技が、笑いを誘っていた。

公演は9月25日まで都内各地で。

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