ソフィア国立歌劇場「仮面舞踏会」
10月11日、東京文化会館でのソフィア国立歌劇場のオペラ「仮面舞踏会」を観劇。1週間にクラシック公演に3回も行く結果となったが、別に寄席ファンからクラシックファンに転向したわけではない。主役級は全てWキャストだが、11日の公演では前回「トゥーランドット」の時と主な出演者がガラリと入れ替わっていたので、互いの比較が出来た。
当日の主な配役は次の通り。
リッカルド:エミール・イヴァノフ
レナート:キリル・マノロフ
アメーリア:佐藤しのぶ
ウルリカ:エレーナ・チャブダロヴァ=イサ
オスカル:テオドラ・チュクルスカ
「仮面舞踏会」はヴェルディの中期の傑作で、原作の国王暗殺という筋が検閲に引っ掛かり上演が許可されず、背景を植民地時代の17世紀のボストンに設定し直して、ようやく許可が下りたといういきさつがある。
ストーリーは、
総督リッカルドが親友レナートの妻アメリアをと相愛の仲になってしまう。女占い師ウルリカはリッカルドに「今日最初に握手する友人から殺される」と告げる。その握手の相手はレナートだった。
真夜中、リッカルドとアメリアが会っている所へレナートがやって来て、二人の関係がバレてしまう。激高したレナートは仮面舞踏会のさなか、リッカルドを銃殺する。死ぬ間際にリッカルドはレナート夫妻を気遣い、「アメリアは潔白。レナートも許す」と言って、息絶える。 二人の男女関係もプラトニックなものだし、殺害も誤解に基くもので、だからリッカルドも罪を許してしまう。
ドロドロした人間関係はなく、悪人のいないオペラだ。
全体を通して、ヴェルディの作り方の上手さが際立つ。単調に傾きかねない劇に異様な占い師ウルリカや舞台を明るくするズボン役オスカルを配している。音楽も効果的で、例えば暗殺の陰謀を弦のスタッカートで暗示したり、盛り上げるシーンでの管楽器の使い方が巧みだ。楽団の音も良かった。
出演者では、主役のエミール・イヴァノフは第1幕では声が出し切れていなかったが、2幕以降は伸びのあるテノールを聴かせていた。
友人役のキリル・マノロフは立派な体格をいかした見事なバリトンを聴かせ、この劇全体を締めていた。
ソプラノの佐藤しのぶは美声で情感たっぷりに歌い上げていたが、いかんせん線が細い。声が硬質で、合唱シーンになると他の共演者の声に押されてしまう。
ソフィア国立歌劇場は日本での知名度はあまり高いとはいえない、管弦楽団や合唱団、バレー団とのアンサンブルが良く、水準の高い舞台を見せてくれたと思う。
公演は26日まで全国各地で。
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