【米金融法案】アリはキリギリスを助けない
近ごろ久しぶりに痛快だったのは、アメリカ政府が提案していた金融機関からの不良資産を買い取ることを柱とした緊急経済安定化法案を、下院が否決したことですね。このニュースをきいたとき、一番はじめに頭に浮かんだのがイソップ童話の「アリとキリギリス」の話です。
本当は「セミとアリ」だそうで、原作はこうなっています。
冬のある日のこと、アリたちは、ためてあった穀物を家の外でかわかしていました。
そこへ、おなかをすかしたセミがやってきて、「なにか、食べ物を下さい」と、たのみました。
アリたちは、「どうして夏のあいだにあなたも、穀物をたくわえておかなかったの?」とたずねると、セミは「ひまがなかったのです。きれいな歌を歌うのに、いそがしくて」と答えました。
アリたちは、せせら笑っていいました。
「いや、夏のあいだ歌を歌っていたのなら、冬はおどりでもおどりなさい」。
おしまい。
米国の金融機関の人たちというのは、私たちからすると想像もつかない給料を貰っています。例えば破綻したゴールドマン・サックスのトップは、ボーナスだけで年間55億円を受け取っていました。まさにキリギリスは贅沢な暮らしを謳歌していた、つまりずっと歌を歌っていたというわけです。
それが金儲けに目がくらみ、ついついサブプライムローンなどというバクチに手を出してスッテンテンになったというわけです。
すっかり一文無しになると、アリに泣きついてきました。アリが働いてコツコツと貯めた税金に目を付けたわけです。
アリはこう答えました。「今度は踊りでも踊っていたら」。
税金による金融機関の救済へのアメリカ国民の反発は強く、その結果が議会に反映して法案が否決されたのなら、こっちの方がマトモじゃないですか。
さて、日本ではこのイソップ童話はどうなっているでしょうか。
たとえば波多野勤子監修・小学館版の『イソップ物語』では、「さあ、遠慮なく食べてください。元気になって、ことしの夏も楽しい歌を聞かせてもらいたいね・・・・キリギリスは、うれし涙をポロポロこぼしました。」で終わっています。
なんという寛大な心でしょうか。
でも次の年になると、キリギリスは恩をすっかり忘れ、再び毎日歌を歌うようになります。
今の日本の金融機関、まさにそうです。
ギャンブルで勝ったときは羽振りの良い生活をしていて、負けた時は誰かが何とかしてくれる、こんなウマイ話はありません。この連中は永久に生活態度を改めようとはしないでしょう。
人間、一度は痛い目にあわないと、なかなか変わらないものです。
金融機関には、お灸をすえることも大事です。
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オツカレです。
国民に目を向けるのか国に目を向けるのか難しい決断だ。
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