【寄席な人々】弾き出されるオールドファン
柳家権太楼のCDで1999年のライブ録音のものがあり、そのマクラで寄席の客が年寄りばかりで若い人はさっぱり来ないと嘆いていた。
確かに10年ほど前まではその通りだった。若い客が少なく、このままだと寄席の将来はどうなっていくのかと、ひそかに心配していた。
古今亭志ん朝ファンだったので、土日に東京周辺で行われる志ん朝の独演会は出来るかぎり出向いた。当時はサラリーマン現役だったので、いつも発売日から数日経ってから手配していたが、それでもチケットが取れないということは先ず無かった。
志ん朝以外の落語家なら当日に入れたし、前売り完売などというのは、談志の独演会ぐらいなものだった。
振り返れば、幸せな時代だったといえる。
ファン層の変化を感じ始めたのは、2000年の喬太郎とたい平の真打同時昇進の頃からだ。鈴本演芸場の披露公演では前列の2列が若い女性ファンで占められていて、驚いた。
その後、民放TVの連ドラや、NHKテレビ小説などで落語家を主人公にしたドラマが話題となり、今日の落語ブーム、寄席ブームといわれる隆盛に至ったというわけだ。
落語好きな人が増える、寄席に行っても沢山の人、特に若い人(と言っても30~40代位)が来場するようになったということは、古くからの落語ファンにとっても嬉しいことだ。このまま衰退していくのではと心配していたのが嘘のようだ。
しかし落語人気の高まりは、入場チケットの入手に大きな変化をもたらした。私が利用している劇場でもここ数年変化が起きた。
①国立演芸場では通常興行も全席指定となり、全ての番組で前月より前売りが行われるようになった。また名人会や花形演芸会ではインターネットと電話予約が優先され、完売した時は劇場窓口での前売りが無くなった。全ての番組はプレイガイドで購入できる。
②横浜にぎわい座では志の輔の独演会のみプレイガイドだけの前売りとなった。つまり直接劇場に出向いても前売りは購入できない。11月は喬太郎勉強会もプレイガイドのみの前売りとなった。この分では談春の独演会が同じ扱いになるのは、時間の問題だろう。
③鈴本演芸場の特別興行の前売りでは、以前は劇場窓口とプレイガイドの二本立てだったが、今年からは全席プレイガイドのみの扱いとなった。
要するに、人気のある番組は前売りを買うしかなく、それも多くは大手プレイガイドで購入するしか選択肢が無くなってきている。
プレイガイドを利用された方はご存知のとおり、人気の番組になると発売日の午前10時に電話をするとなかなか繋がらない。リダイヤルボタンを押し続け、30分後位にようやく繋がると完売ということになる。
インターネットではこのブログでも再三書いている通り、接続が10秒20秒遅れただけで既に完売ということも珍しくない。にぎわい座の志の輔の独演会だと、時報と共に接続しても既に完売となっていたりして、一体どういうことだと嘆くしかない。
つまり秒速で売り切れてしまうわけで、これでは購入できる人は限られてしまう。
年配者の中にはインターネットでの購入など不得手の方も多いと思われ、そういう人々は次第に寄席や落語会から弾き出されてしまう。
近ごろは人気番組ともなると、若い人たちが多数を占めていて、年寄りは少数派になることもある。
費用の問題もある。
プレイガイドで購入すると、通常の入場料の他に、次のような費用が発生する。
・システム利用料: 210円/枚
・店頭引取利用料: 105円/枚
(自宅に送って貰う場合は、配送+システム利用料:600円/件)
この他に、人気の番組では先行抽選販売「プレリザーブ」という制度があり、前売り発売日前に申し込み、抽選であたると前売りが買えるという仕組みだ。この場合、次の費用が別途かかる。
・特別販売利用料: 240円/枚
寄席の入場料は通常2000~3000円程度なので、これらの加算は利用者にとっては負担である。
こうなるとオールドファンにとっては、若い人が増えて、寄席ファンが増えて、良かった良かったと単純に喜んでばかりいられない。
グループでチケットを購入したり、座席を確保したりする人が増えたのも、こうした傾向に拍車をかけているようだ。
ルールに従って入場券を買い、観に来ているわけだから何ら文句のつけようが無いのだが、オールドファンの一人としては、何かシックリこない気持ちを抱いているのも事実である。
お互いがハッピーになるような、上手い手立てが無いものだろうか。
ないでしょうねえ。
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