「円楽一門落語会」@国立演芸場
落語からの引退を表明して以来初めて、三遊亭圓楽が高座に戻ってきた国立演芸場での「円楽一門落語会」。11月27日から3日間の興行で、楽日の29日に出向く。
満員の観客の恐らく半分は、圓楽の顔を見に来たのではなかろうか。
一門は普段の寄席(定席)には出演しないため、初見の噺家も多く、その分楽しみでもあった。
・三遊亭橘也「強情灸」
開演前に高座に上がり開口一番、しっかりしていると思ったら二ツ目だ。前半は快調だったが、兄いが灸を熱がる肝心の場面で薄味。
・三遊亭王楽「つる」
NHK新人演芸大賞を受賞し、来年は真打になる王楽だが、巡り合わせからか未だ感心する高座に出会ったことがない。それと、マクラがいつ聴いても同じというのも、芸が無い気がする。
・好二郎改メ三遊亭兼好「饅頭こわい」
圓楽一門で一番の期待の星である。口調が爽やかで聴き易いのが先ず良い。真打昇進の高座でネタが「まん・こわ」では寂しい気がしたが、噺はしっかりしていた。
・ミスター梅介「法律漫談」
ただつまらない。こういう芸人に限って「今日の客は・・・」などと言い出すので不快。
・三遊亭小円朝「家見舞い」
良く言えば渋いのだが、年の割に老成した印象を受ける。甕を買いに行く二人の演じ分けが足りないので平板な出来となった。
・三遊亭楽之介「佐々木政談」
子どもが喋る場面では、子どもの喋りかたをして欲しい。大師匠、圓生の高座をもっと勉強して見習って欲しいところだ。
―仲入り―
・三遊亭円楽「隋談」
スーツ姿で、椅子と机の高座。想像していたより血色も良く、元気そうだった。弟子達の活躍ぶりを紹介する一方、いくつか小咄も演じ、相変わらず芸の確かさを見せてくれた。
師匠、圓生が昭和天皇皇后の前で落語を演じた時のエピソード、
“笑点”を知っていたこと
実に良く笑っておられたこと
天皇が感謝の言葉を一言述べる時もメモを読んでいたこと
など、初めて聴いたが楽しかった。
圓楽の芸風は大らかで明るいのが特長だが、この芸風を誰が継承していけるのだろう。
・三遊亭竜楽「金明竹」
金明竹の口上を早口で一気には見事。
・丸一仙翁社中「江戸太神楽」
久々に下手な太神楽を見た。
・三遊亭円橘「雁風呂」
珍しいネタで、最近はあまり高座に掛かっていない。このネタは水戸黄門の風格と、かつての上方の大商人・淀屋の品が出るかどうかが眼目だが、円橘は見事に演じ分けて確かな芸を見せた。
楽日のトリに相応しい高座だったと思う。
圓楽の元気な姿を見られた以外は、全体としてはやや不満の残る一門の高座だった。
来年楽太郎の圓楽襲名というお目出度いニュースはあるものの、人気と実力を兼ね備えた弟子が少なく、当代の圓楽引退後、興行面を含めた一門の結束は大きな課題となるだろう。
当日の一部の観客に一言。出演者の誰かれとなく掛け声を掛けていた無粋な客がいたが、こういうのは贔屓の引き倒しであり、却って雰囲気を損ねる。
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