「みのもんた症候群」の方々に
「みのもんた症候群」という言葉をどこかで聞かれたことがあるでしょう。これはみのもんたが司会を務めていた「午後は○○おもいッきりテレビ」や、現在司会を務める「おもいッきりイイ!!テレビ」などの番組を見た視聴者がその内容を信用して実行し体調を崩して医者にかかる人が増えたため、医療機関の間で生まれ言葉です。
時には救急車で運ばれてくる重症患者もいるそうですから、注意が肝要です。
私は頻繁にスーパーを利用していますが、ある日店頭から特定の商品が消えるという経験があり、確かにこういう人々がいるのは事実でしょう。
当ブログでも過去何回かとりあげてきましたが、TVや新聞などのメディアでは、特に「健康」や「環境」に関しては、ニセ情報が氾濫しています。「血液型」だの「マイナスイオン」だの「水からの伝言」だの、繰り返し科学的根拠がないことを指摘されているにもかかわらず、依然として信じる人がいます。
この辺りは、「振り込め詐欺」の被害と共通性があるのでしょう。
もしかしたら、人間には騙されたいという願望が心の中にあるかも知れません。
「メディア・バイアス」(松永和紀著、光文社親書)には、こうしたニセ情報が繰り返される構図について、興味深い指摘がされています。
先ず、マスコミなどのメディアというのは、視聴率を上げたい、発行部数を稼ぎたいという思惑から、どうしても特異な記事をとりあげるという習性があります。
例えば「ダイエット」ですが、やせるためにはカロリーの摂取を減らすか、運動などでカロリーを沢山消費するか、いずれかの方法しかありません。こんなことは子どもでも分かります。
処が、こうした事実を放送しても誰も視てくれない。それより「〇〇を食べると痩せられる」という番組の方がインパストがあり、視聴率が稼げるのです。
1000人のうち999人が主張することより、一人だけが主張している学説が採りあげられるのは、こうした理由からです。
次に、科学記事を提供するフリーの科学ライターの原稿料というのが、およそ原稿1枚あたり1-3万円だそうです。厳密な記事を書こうとすると多額な調査費用がかかってしまう。その結果書いたものにインパストがなければ、次の原稿依頼が来なくなります。
それに対して、「〇〇が危ない」という原稿を書く場合には大した調査を必要とせず、一方記事にインパクトがあれば次々と原稿依頼がくるという仕組みです。
つまり生活のためには、ヨタ記事を書く科学ライターの方が収入が多いという結果になる。これがもう一つの要因です。
この場合、「XXが危ない」と書くと、後でXXに危険性が無いことが判明した場合、虚偽を書いたことになります。そこでライターは、「A大学のB教授がXXが危ないと言っている。」と書くことになります。これなら後で事実に反していても、責任を問われることがないわけです。
そこで登場するのが、珍説を主張したり、トンデモ理論を発表したりする「科学者」の存在です。
大学教授だのOO博士だのという肩書きで登場して、もっともらしい「学説」を紹介するわけです。
良く観察すると、こうした「学者」は特定の人物であり、あちらの番組こちらの番組に出ては、トンデモ理論を繰り返しているそうですから要注意ですね。
それなら別の科学者が、その誤りを指摘すれば良いのでしょうが、そんな事をしても何の得にもならないし、第一そうした反論をメディアが採りあげてくれない。
もう一つには、あまりに荒唐無稽な理論だと、まともに反論することさえバカバカしいという事情もあるようです。
かくしてメディアの世界では、エセ科学者がノサバルという事態が起こるのです。
勿論、こうしたニセ情報を流して儲けている企業の存在も無視できません。
有名な所では、「バイオ燃料」が地球温暖化防止に寄与すると大宣伝されましたが、結果はどうだったでしょうか。世界的な食糧危機を招く一方、特定の農産物を生産している国や企業を始め、商品先物取引などで多大な利益が得る人たちを生み出してしまいました。
彼らは、時に消費者団体や環境保護のNGOなども利用するので、注意が必要です。
先にあげた書籍「メディア・バイアス」では、ニセ情報を見破るための注意事項がいくつか書かれています。
例えば、
・先ず疑ってみる。
・「〇〇を食べれば」というような単純な情報を排除する。
・「危険」「効く」などの断定的な情報はまず警戒する。
・その情報によって誰が得するかを考える。
・体験談は冷静に判断する。
・その情報がどこから発信されたのか注目する。
・他の情報と比較する。
などなどです。
これらの注意事項は環境や健康情報だけではなく、政治経済を含むあらゆる情報にも適用できそうです。
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