劇団大阪「流星に捧げる」
大阪で活動する劇団大阪の第65回本公演は山田太一作「流星に捧げる」で、友人の齋藤誠が主演ということで、11月16日谷町劇場での公演に出掛けた。
山田太一の世界というのは、山田洋次監督の世界と共通するところがある。作中の人物に悪人が出てこない、全て善意の人々で構成されている。現実の社会では有り得ないメルヘンの世界。社会の現実を直視するというよりは、この世の中の精神安定剤的な役割を果たしているのと思われる。
山田洋次の「寅さん」シリーズが、実は自民党政治を陰で支えているとの悪口が聞かれるが、こうした傾向を指摘しているのだろう。
主なスタッフと、公演日のキャストは次の通り。
<スタッフ>
作/山田太一
演出/和田幸子
舞台美術/石野 実
<キャスト>
ユニフォーム会社経営者=上田啓輔
車椅子の老人=齋藤 誠
保険外交員=中村みどり
老人の家政婦=梁 礼子
“善意”の女性=名取由美子
出社拒否症の女性=伊藤節子
工務店営業マン=伊原遼太
30代フリーター=熊谷志朗
物語は、
あるインターネットのサイトに「動かない風見鶏 車椅子の老人 ひとり」という書き込みがあった。書き込みの主は、大きな屋敷にひとりで住んでいる車椅子の老人で、他には家政婦が通ってくるだけだ。その書き込みを見て、思惑を持った人や他人との触れ合いを求めてきた人など、様々な事情を抱えた人々が集まってくる。最初はバラバラだった人たちがやがて主人を中心とした擬似家族を演じるようになるが・・・。
典型的な山田太一ワールドであり、人間賛歌であり、観ていてホノボノとした気分に浸れる。しかし各自が抱えていた問題は何ひとつ解決されないし、その見通しもない。メルヘンと書いた所以はその辺りだ。
気持ち良さに浸っていられるか、一歩ひいてシラケルかで芝居の評価は分かれよう。
出演者では上田啓輔が安定した演技で、齋藤誠が痴呆老人を真に迫った演技で見せ、中村みどりが舞台をシメテいた。他では名取由美子がつかみ所の無い役を好演していた。
固定された舞台セットは良く工夫されていて、最後に風見鶏がアップされるシーンは感動的だった。
アマチュア劇団というのは大変なのだろう。仕事を持っての公演は週末に限られるし、稽古時間も十分取れるわけではない。
役者は時には照明や大道具小道具の係りをやったり、会場受付や整理もこなしたり、一人で何役もやらねばならない。
舞台でセリフを忘れたり飛ばしたりも日常茶飯事だろう。しかしそこまでしてなお芝居をしたいという要求、これこそがアマチュア劇団の良さであり、プロの劇団と異なるところだ。
劇団大阪の芝居は今回で3回目になるが、いつも暖かい家族的な雰囲気を感じる。
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私たちも少人数ながら神戸でお芝居をしています。
一度山田太一氏の「流星に捧げる」を公演したいと願っているのですが、正式に公演するための上演許可はどのように申請すればいいのでしょうか?
厚顔なお願いですが教えていただければ幸いです。お手数ながら上記メールアドレスにお返事いただけることをお待ちしております。
投稿: いこま みちお | 2009/04/19 00:32
追伸
かつて観劇しただけなので、できれば台本の入手方法も教えてください。 いこま
投稿: いこま みちお | 2009/04/19 00:52