「おふくろさん」の裏に「紅白」あり
歌手の森進一が過去のヒット曲の一つである「おふくろさん」を歌えるようになったと大騒ぎだ。2006年暮れの紅白で、森が勝手に歌詞を書き加えたと作詞家の故川内康範の怒りをかって歌唱が禁止されていたが、この度川内側の遺族と和解して封印が解かれたものだ。
TVのワイドショーは連日この話題で持ちきりだし、一般紙も社会面で報道していた。つまりこれは社会的な「事件」という扱いなのだ。
世間の人はそんなに森進一の「おふくろさん」を渇望しているのだろうか。ちなみに手持ちのCDにこの曲が入っており、聴きたければいつでも聴ける、それは誰も同じだろう。そうなると問題は、ライブでこの曲を聴きたいというファンにとっては切実な問題なのかも知れないが、果たして日本国民全体の中で何パーセントいるのだろうか。
好みの問題だろうが、「おふくろさん」はオリジナルの方がずっと良い。森が付け加えたあの変なヴァースは、却って曲想を壊している。川内康範が怒ったのも無理がない。
それと、数ある森のヒット曲の中で、とりわけ「おふくろさん」だけが名曲だとは思えない。
歌唱を禁止した川内康範の意図はともかく、森側がこの騒動を最大限利用しようとしたことは、容易に推定できる。例の川内への「おわび行脚」からして、いかにもわざとらしく演出の臭いがプンプンしていた。
ここ最近ヒット曲に恵まれず、森昌子との離婚に加え、森進一自身の声が急に衰えてきて、このままでは歌手生命にもかかわる事態だったのだろう。
芸能人にとって一番大事なのは、忘れ去られないようにすることだ。世間に「オレオレ」「ワタシワタシ」を必死にアピールする。そのためにはスキャンダルさえ利用するのが常套手段である。
森進一にとって「おふくろさん」禁止は、正に「天佑」だった。
この時期に和解したのも意味がある。恐らく年末のNHK紅白歌合戦で歌う作戦に違いない。
NHKサイドにしてみれば、視聴率低下に悩む「紅白」の、またとない話題作りだ。しかもコストがかからないのだから、笑いが止まらない。
「おふくろさん」和解騒動は、森進一とNHKサイドの宣伝に世間がまんまと引っ掛かったということだ。
話題が外れるが、先日のNHK歌謡コンサートで秋川雅史という歌手が「イヨマンテの夜」を歌ったが、あれはひどかった。曲の肝心の冒頭部分「アアホイアー」から「イヨマンテ」まで、全て音程を外して歌っていた。実に器用である。しかしあれこそ「イヨマンテ」の曲に対する冒涜ではなかろうか。
むかし会社の同僚が宴会で、始めから終わりまで音程を外して歌うのを特技としていた人がいたが、まさかプロが同じことをするとは思わなかった。
NHKは受信料を取っているのだから、話題作りだけに励むのではなく、まともな歌番組を作ってほしい。
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