“KERA・MAP”公演「あれから」
12月23日、世田谷パブリックシアターでの劇団“KERA・MAP”公演、「あれから」を観劇。世田谷・三軒茶屋には何十年ぶりだろう。玉電でトコトコ行った頃のかつてのうら寂しい場末のイメージは、今はない。
[作・演出] ケラリーノ・サンドロヴィッチ
〔美術〕BOKETA
[主なキャスト]
ニチカ/余貴美子
その夫ググ/渡辺いっけい
娘アン/植木夏十
ダダの弟ビビ/赤堀雅秋
ミラ/高橋ひとみ
その夫ミクリ/高橋克実
息子ジンタ/金井勇太
ミクリの助手ユゲ/柄本佑
ニチカとミラの恩師サキ/萩原聖人
同 同級生パゴ/山西惇
ミラのカウンセラー/村上大樹
その助手ユウ/萩原聖人(二役)
アンのバイト仲間リク/三上真史
その恋人モナミ/岩佐真悠子
物語は玩具メーカー(大人のオモチャ)経営者のググとニチカ夫妻、写真家ミクリとミラ夫妻という二つの家族を軸に展開する。
ひょんな事から高校の同級生だったニチカとミラが30年ぶりに再会する。二人の家族には一見すると平穏そうだが、実はそれぞれの深刻な問題を抱えていた。
二つの家族は色々な人を通して複雑につながっていて、正に禍福は糾える縄の如し。
そして二人の高校時代に起きた事件と事故が、やがて現在の家族の現実に影を落としていることが明らかになる。
夫婦・親子・兄弟といった家族愛、夫婦の倦怠、女同士の友情、中年と若者の世代間の軋轢をテーマとしたコメディタッチの芝居である。
複雑な人間関係を描きながら、それをエピソードを通して分かり易く観客に提示していく作者ケラリーノ・サンドロヴィッチの手腕は見事だ。笑いの中に不妊、不倫、カウンセリングなどの社会問題を織り込み、更にミステリー仕立てにもなっている。
約3時間の舞台は最後まで緊張感を保ち、飽きさせない。
シンプルだがインパクトのあるBOKETAの舞台デザインが効果を高めていた。
出演者は余貴美子、高橋ひとみの主演女優を中心にそれぞれ持ち味を発揮し、充実した演技を見せていた。
赤堀雅秋がエキセントリックな役柄を好演。萩原聖人のコミカルな演技と、高橋克実のふんわりと暖かい雰囲気が、刺々しさを和らげていた。
人生の不幸を一身に背負ったような男を自虐的に演じた山西惇の熱演が光る。
公演は12月28日まで。
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