三人集~市馬・談春・三三~夜の部
昼の部が終わって1時間ほど喫茶店で時間をつぶし、引き続き「三人集」の夜の部へ。
会場で配られたプログラムに、この会の主催者が寄席に通い始めた頃、波多野栄一の百面相の芸に撃沈したと書いている。この人の金色夜叉での貫一お宮を一人で演じる芸は正に抱腹絶倒、バカバカしいのだが、バカバカしいほど面白かった。
こうした色物のハマリ物を見い出すのも、寄席の楽しみの一つだ。
・「口上」
司会の三三が今年1年でおよそ600席高座にかけたというと、談春はその10分の1だと言っていた。談春と市馬はこの日が今年最後の高座だが、三三は大晦日にも公演があるとか。年中どこかの寄席に出ていて、その傍ら独演会などをこなしているのだから、スゴイ。新ネタはいつ稽古するのだろう。
談春からは大阪フェスティバルホールでの独演会の話題が出ていた。2700人の大会場なので、落語家の独演会は初めてらしい。ということは最初で最後か。
今年の落語界は、談春と三三の年だったかも知れない。
市馬は今年歌手デビューして、内心紅白出場を狙っていたがお呼びが掛からなかった由。来年は芸歴30周年で、記念の公演をやることになりそうだ。
・立川談春「除夜の雪」
桂米朝が得意としていたネタで、東京では恐らく談春しか高座にかけないのでは。それだけ笑いの殆んどない、演じ手としては難しいネタだ。
大晦日の寺の風景に始まり、寒中に除夜の鐘を撞く若い坊主たちの辛さ。この寺の檀家である大店の若旦那が嫁を娶るが、凄まじい姑の嫁いびりがおきる。こうした背景から次第に物語はやや怪談調に・・・。
シンミリとしたいい噺だが、いかんせん地味だ。
談春はじっくりと聴かせていたが、仲入り後が人情噺をタップリという番組になっていたので、このネタの選定はどうだったのだろうか。
・柳亭市馬「掛け取り2008」
ここ数年、暮は市馬の「掛け取り」を聴くのが恒例になってしまった。又かと思いながらも、こうして賑々しく年の瀬をむかえるのも悪くないと思ってしまう。
2008ヴァージョンって何だろうと思っていたら、仕舞いの掛け取りが家元になっていて、談志の物真似をタップリと披露して場内の喝采を浴びていた。そして最後は、ヤッパリ三橋美智也の「哀愁列車」で締める。
~仲入り~
・立川談春「棒鱈」
実際の順序は三三の2席に間に挟まれていた、昼の部と同様に「膝」での出演。時間の関係からか少し端折った「棒鱈」だったが、田舎侍(多分、設定は薩摩か長州の武士)の描写が良く出来ていて、楽しめた。
このネタといい、昼の「権助魚」といい、談春の独演会ではお目にかかる機会が無い演目で、別の一面を見た気がする。
・柳家三三「鼠小僧 蜆売り(上・下)」
物語は、
雪の降る晩、和泉屋の次郎吉親分、実は鼠小僧次郎吉が馴染みの船宿で一杯呑んでいると、そこにしじみ売りの少年が通りかかり、気の毒に思って売れ残りを全て買い取る。
少年の身の上話聞いてみると、母と姉が病気でこの少年の稼ぎで一家を支えているという。
姉というのが小春という、元は売れっ子の芸者だったのだが、大店の若旦那と所帯を持って勘当になり、二人は湯治場で暮らすようになる。
ある時その若旦那がイカサマバクチに引っ掛かり、二人が脅されていた所へ次郎吉が居合わせて、その金を恵む。ところがその時の小判は特別の刻印が打たれた、盗まれた金だった。そのため若旦那に嫌疑がかかり牢につながれてしまい、小春はそれを苦にして病に倒れる。
次郎吉としては小春たちによかれと思ってしてあげたことが、とんだ災難を生んでしまったことを知り後悔する。
そこで度胸熊という凶状持ちに頼んで、若旦那と小春を助け出す算段をするが・・・。
三三の演出は、次郎吉の風格、船頭の滑稽さ、しじみ売りの少年の健気さ、若旦那と小春の哀れさ、度胸熊の侠気、いずれも見事に演じ分けて、緊張感の中にしっとりとした雰囲気が保たれた良い高座だった。
「双蝶々」と同様に、ネタ下ろしとしては極めて完成度が高く、三三の高座としては今年のベストに上げたい。
昼夜通して延べ7時間半、決してダレル事のない、中味の濃い「三人集」だった。
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