ビクター落語会「大感謝祭2008夜席」
12月20日虎ノ門ニッショーホールで行われた“ビクター落語会~蓄音機の犬~大感謝祭2008”夜席へ。5人の実力派の噺家がネタ出しして競演とくれば、当然のことながら満員。
今回の高座はDVD撮りが行われていたので、そのうちビクターから発売されると思われる。
・橘家文左衛門「道灌」
最近、中堅以下に落語家に行儀が良い人が多いので、この人のガラの悪さが貴重になってきた。マクラでいきなり「ここは消防会館だげど、きっとあちこち火をつけて儲けて、建てたんだろう。」と毒舌。高座の座布団を「租布団」と何回も繰り返していたが、確かにやや質素な座布団ではあった。
「道灌」は前座噺であると同時に大看板も演じるというネタで、単純なストーリーをどう聴かせるかが腕の見せ所だ。文左衛門ほ独自のクスグリを散りばめながら、歴史の薀蓄をしっかりと織り込んで、たっぷりと聴かせてくれた。
「七重八重」を「ななへやへ」と詠む場面で、「麻生さん」とツッコミ、会場を沸かせていた。
・桃月庵白酒「真田小僧」
前座噺が続いたが、このネタも真打が演じると俄然面白くなる。白酒の演出は古典に忠実で、子どもの仕種が良い、最近の噺家の中には、子どもを演じているにも拘らず大人にしか見えない人が多い。そうなるとこの噺の面白さは消えてしまう。
白酒は古典の本格派として着実に力を付けている。
・柳家権太楼「二番煎じ」
季節感のあるネタで権太楼の中トリ、高座に上がっただけで会場がパッと明るくなる。
前半の夜回りの場面では、喉の調子のせいか、「火の用心さっしゃりやしょう」の聞かせどころで声がかすれるなどやや低調だったが、後半のシシ鍋を囲んでの宴会場面になると完全に権太楼ワールド全開。
この人は酒を呑むのでも食べるのでも、実に美味そうだ。見ていて喉が鳴ってくる。肉とネギでは食べ方が違うなど描写も細かい。
話は変わるが、ここ2.3年権太楼が急に痩せてきたように思えるのだが、どうなのだろうか。ちょっと心配している。
―仲入り―
・瀧川鯉昇「千早振る」
こちらは登場しただけで場内がホノボノとしてくる、得がたいキャラクターだ。
和歌を手まねで説明したり、隠居が部屋の掃除を言いつけたりと独自のクスグリを入れて、実に楽しく聴かせてくれた。「千早振る」ではベストだと思う。
こういう何という事もないネタで客も満足させるというのは、大した技量だと思う。
・古今亭志ん輔「掛取万歳」
暮の高座のトリに相応しい演目を持ってきた。
掛取りに来た人の道楽に合わせて芸を披露するという、演じ手の力量が試される大ネタでもある。
志ん輔の演出は、狂歌、義太夫、芝居、喧嘩、それに万歳と多彩な技を見せてくれた。プロの囃し方をゲストに招いての熱演で、終幕を飾るに相応しい出来だった。
特に、近ごろは「三河万歳」の場面をカットするのが一般的になっていたが、ここも手抜きせず演じたのは好感が持てた。
5人がそれぞれ30分づつという今回の落語会は、久々に充実した会だった。
DVDの収録も兼ねていたせいか、演者も力が入っていて、それぞれが持ち味の最高レベルの芸を発揮していたように思う。顔付けの組み合わせも良かった。
こういう会に当たると、また次々と行きたくなる。
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