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2009/02/09

【寄席な人々】“笑点”の功罪

ある落語家の話だが、地方寄席を開く準備をしていたらその会場の係員から電話があり、「座布団は何枚くらい用意しますか?」という問い合わせだった由。高座の座布団なら、出演者が何人いても1枚で足りる。会場の係員にとっては恐らく、寄席=“笑点”というイメージがあったのだろう。
寄席に来たことがない人、ナマの落語を聴いたことがない人にとっては、そうかも知れない。

似たような話では、初対面の方に「ご趣味は?」と訊かれ「落語です」とか「寄席が好きです」と答えると、相手の方が気を利かしてか“笑点”のことを話題に振ってくることが多い。
私自身はその“笑点”をめったに見ないものだから、逆に返事に困る。何せ、司会者がいつの間にか圓楽から歌丸に代ったことや、回答者に昇太が出ているのを先日知ったばかりなのだ。
そんなわけだから、“笑点”の話題を振られてもアイマイな返事しかできなくて、心苦しい思いをする。

“笑点”は1966年に放送開始以来(その当時はよく見ていた)、放送回数が2000回を越える長寿番組であり、演芸バラエティとしてはお化け番組だ。
戦後の落語ブームがラジオ放送によって火がついたとすれば、昨今の寄席・落語ブームは落語家を主人公にしたTVドラマの影響だ。しかし数十年の長きにわたり全国津々浦々に寄席演芸を宣伝してきたという点では、“笑点”の貢献は大だ。落語家は“笑点”に足を向けて寝られないだろう。
その反面、“笑点”が寄席演芸だという誤った理解を生んでいることも否定できない。
“笑点”、特にその中の「大喜利」は寄席とか落語とかとは根本的に頃なるジャンルだ。

先日、三遊亭圓楽一門会に出向いた時に、圓楽が“笑点”について次のように語っていた。
「TV局には何度も、番組を降ろしてくれとお願いしてきたが、視聴率の関係から断られ続けてきた。
“笑点”で、毎週2日間拘束された。これが大変だった。
出演者と番組スタッフが相談しながら問題を考えるのが1日、もう1日は番組の収録のためだ。」
放送時間はわずか30分足らずだが、それに2日間の準備をしていたわけだ。やはり時間をかけないと良い番組はできない。
放送ではいかにもその場で問題を出して即興で答えているように見せているが、実は周到な準備がされている。長寿番組になるには秘訣があったのだ。
一時期、他局でも“笑点”の類似番組が放送されていたが、全て永続きしなかったのは、これだけの準備時間をかけていなかったためだろう。
“笑点”が、寄席や落語とは全く違うという意味はこの辺りにある。

人気落語家がそれだけ拘束されるということは、人気という緬からすればプラスにはなるが、その一方本業への影響も無視できない。
談志や志ん朝だって若い自分はバラエティ番組に出ていたが、ある時を境にして高座に専念するようになっていった。そうしなければ本物の芸は磨けない。
ところが“笑点”の主要なレギュラーは、もう数十年もこの番組に出続けている。この間、しっかりと芸を磨いてきた人もいるが、“笑点”人気にのって明らかに修行を怠ってきた出演者もいる。
圓楽が再三にわたり番組を降りたいと願ったのは、この辺りに理由があったのだろう。

さて落語フアンの方々が“笑点”をどう見ておられるのか、ご意見を拝聴できたら幸いである。

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コメント

こちらの記事をもとに私のところでもひとつ書かせてもらいました。
簡単に言えば、落語家にとっては危険な部分もあり、視聴者にとっては「まあいいんでは」ということです。

ジャマ様
コメント有難うございます。
こうした演芸バラエティ番組に出演するなら、若手のうちは良いのですが、そろそろ引退しようかという年令まで出続けるのは感心しません。
そういう意味では、私は圓楽の姿勢にも批判的です。

愚生の拙いブログへのコメントありがとうございました。

>バラエティは若いうちだけにして、ある年令に達したら本業に専念すべきではないでしょうか。
確かにおっしゃる通りだと愚生も思います。
テレビ向けの芸、乱れたままの芸をやり続けるのは本人にも寄席のお客にとってもマイナスです。
本人の本業中心に戻る決断も必要ですが、圓楽師の例のように、自分が止めたくてもTV局がそれを許さなかったのかもしれません。
「笑点」の場合は特に変化を好まない風潮ですし。
一概に芸人だけの責任ではいと愚生は思います。
それだけ今のTVは力が大きいと云うことです。

以前BSで二ツ目・若手を中心に「BS笑点」をやっていました。
この番組は、笑点をリフレッシュするテストケースかと思いましたが、CSへ移ってしまい一般の目に触れない番組になってしまいました。
結局日テレが作った袋小路に自分から入ってしまったかなと思います。

ヒロクン様
こちらへコメント頂き有難うございます。
興行には集客力は欠かせませんし、知名度を上げるためにはTV番組へのレギュラー出演は効果的なことは確かです。
人気が芸を押し上げた歌丸のような例もあるし、人気に溺れてまともな噺が出来なくなっていったこん平のような例もあります。要は本人の心がけということにもなるのでしょう。
圓楽の場合、最も円熟期に殆んど独演会を開かなくなったのですが、これは恐らく“笑点”出演の影響だろうと推測しています。落語界にとっては大きな損失だったし、大変残念だったと思っています。
それにしても、健康状態がかなり悪化してもなお、番組に出し続けるTV界というのは、随分と酷い業界ではあります。

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日テレのお化け長寿番組「笑点」が絶好調だそうです。↓「笑点」40年超え絶好調http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20090225et06.htm “笑点 [続きを読む]

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