薬のネット販売規制は片手落ちだ
厚生労働省では、先にインターネットを含む通信販売では、リスクの低い医薬品の販売のみに限定されることなどを定めた「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」を2月6日に公布した。
このままいけば今年の6月からは、ビタミン剤や消化整腸剤など一部の薬品を除いて、ネットや通販では医薬品が買えなくなる。
これに対してネット販売業者や通販業者から異論が出され、今後のあり方を議論する厚生労働省の「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第1回会合が24日に開かれた。
この問題の対立の構図はきわめて明解で、薬局店や薬剤師の団体が厚労省に圧力をかけてネット・通販への規制をさせたものだ。
なぜか昔から医師会だの看護協会だの薬剤師会だのといった医療関連団体は自民党を支援しており、自民党政府としては彼らが有力な票田なので要求は無視できないのだ。
一方ネット・通販側も、自分たちの商売に差し障りがあるので反対しているだけで、いずれの側も本心は国民の健康と安全などそっちのけなのである。
医薬品の販売について最も基本的なことは
「全ての医薬品には効能と副作用がある」
という事実だ。
中学校の理科でも習ったとおり、「作用があれば必ず反作用がある」のだ。
だから良く効く薬は、概して副作用も強いと考えた方がよい。
これは市販薬だろうと、医療機関の処方箋によって出される調剤薬だろうと同じだ。
医薬品の販売にあたっては、クスリの効能と副作用を正確に購入者に知らせるということが大事で、薬局で売るのかネットで売るのかというのは、二の次の問題なのだ。
では厚労省が主張する「薬局なら対面販売だから安心」というのは、本当なのだろうか。
はっきり言って、マヤカシだ。
先ずは市販薬について見てみよう。
大型の薬局・薬店に行くとまるでスーパーのように買い物カゴが置かれ、客は商品の棚から自由にクスリを選んでレジに並ぶという光景が見られる。「風邪薬は?」ときくと、「2列目の棚です」などと答えがくる。
こちらから相談しない限り、アドバイスを受けることも無い。
これのどこが対面販売なのだろうか。
次に処方箋による調剤薬ではどうだろうか。
一部の薬局ではクスリの効能と副作用を簡単に書いているリストを渡されるが、多くの薬局では詳細な説明書が付けられていない。
医療機関で出すクスリほど、副作用についての注意が必要なのだ。
こうした状態を放置しておいて、市販薬のネットや通販での販売だけを規制しようとするのは間違っている。
今回の厚労省の法改正が、結局は圧力団体の既得権を保護するだけと断じたのは、以上の理由からだ。
もし厚労省が国民の健康と安全のために医薬品の対面販売進めるのであれば、少なくとも次の点を義務付けることが必要だろう。
【市販薬】
(1)客が直接クスリに触れることを禁じ、必ず薬剤師を通して手渡す。
(2)販売にあたっては、クスリの効能と副作用などを口頭で告知する。
【調剤薬】
患者に出すクスリについて、単品ごとに次の内容を記した書面を添付する。
・名称
・成分
・効能
・副作用
・服用上の注意
【処罰】
違反した場合は薬剤師の免許停止し、悪質な場合は免許取り消しができる。
ここまでやるなら、薬のネット・通販の販売規制には意味がある。
大事なことは販売の形式ではなく、中味なのだ。
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突然、失礼しました。
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投稿: hikaku | 2009/05/22 02:09
hikakuさま
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投稿: home-9(ほめく) | 2009/05/22 07:19