「よってたかって春落語」@よみうりホール
3月21日は若手(?の人もいたが)真打による「よってたかって春落語」を聴きに、よみうりホールへ。
この日は鈴本の昼席で「二代目林家三平襲名興行」が初日を迎えたとあって、出演者もマクラでこの話題に触れていたが、あまり好感をもって迎えられていない雰囲気がアリアリ。
この会の主催者「夢空間」に一言。せめて出演者のプログラムだけでも用意したらどうか。いつもながら、ここのサービスは最悪。
・柳亭市丸「牛ほめ」
これも以前から主張しているが、こういう会に前座を出すべきでない。初っ端から下手な噺で会場を盛り下げてどうする気さ。どうしても出すのなら、寄席と同様に開演前に出したらどうか。
・春風亭百栄「お血脈」
昨秋真打に昇進後に、始めてこの日から鈴本でトリを取るとのこと。実力はマダマダだが、とにかく華のある落語家で人気は上々。鈴本の抜擢もムベなるかな。
地獄が資格をゆるめた結果、小市民ばかり集まってしまったというクスグリが秀逸。古典に新しい息吹を吹き込む姿勢が好ましい。
芝居っ気たっぷりの演出で楽しませてくれた。
・三遊亭白鳥「真夜中の襲名」
タイトル通り三平襲名を皮肉った新作で、正にいまが旬。
動物園のパンダのカンカンの大名跡を、芸が無いのに息子だというだけで子どものパンダが継いでしまう。一方、毎日稽古に精進して芸を磨いているのに、襲名ができないパンダウサギ。ゾウの花子の薦めで、めでたく円朝(園長)を襲名する運びとなる。
ゴールデンヘアー・ピッグなどという危ないクスグリも入って、満員の場内は大喜びの一席。
こういうキワモノがあるから、落語は楽しい。
―仲入り―
・柳家三三「加賀の千代」
予想していたより軽めのネタ。しかも大晦日の設定なので時季外れでもある。
独特の「間」は一級品だが、ネタの選定には首を傾げてしまう。
喬太郎が新作だっただけに、もう少し本格的な演目をやって欲しかった。
・柳家喬太郎「純情日記~横浜編~」
マクラで「春らくご」だというのに、誰も春にちなんだネタをやらないと苦言。マクラの話題から今日は新作かと予想したら、いきなり「黄金餅」に入って驚かせる。
と思ったら、それは登場人物である落語家の稽古風景だったいう演出から入って、「純情日記~横浜編~」。
大学の春という、出会いと別れのシーズンを背景にしたホロ苦い物語。気弱な大学生の描写がなかなか切ない。
好きな女の子を連れてと横浜の街を歩く場面で、道筋の言い立て(道中づくし)を入れていたが、これで冒頭に「黄金餅」を持ってきた意味が分かる仕掛けとなっている。
こうしたキメ細かな演出が、新作に厚みを与えるのだ。
会場の半分以上と思われる喬太郎フアンは喜んでいたようだが、この日の「笑い」をさらったのは白鳥だった。ただし鈴本の昼席には掛けられないだろう。
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