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2009/03/13

二ツ目を支えた「稲葉守治」さんの死を悼む

Photo3月10日に、「日本演芸若手研精会」を主宰してきた稲葉守治さんが亡くなりました。個人的なお付き合いはなく、ここ数日当ブログの記事“研精会OB連昔若庵「さよなら稲葉さん公演」”にアクセスが急増したことから調べて分かった次第です。
「若手研精会」は二ツ目を中心とした若手落語家の月例会で、稲葉さんは私財を投げ打って30年間にわたり会を支えてきました。この功績により、2007年には、日本の伝統ある劇場芸能を助成し、文化・芸能の保存、向上に寄与した人に贈られる松尾芸能賞を受賞しています。

以下に、当代春風亭柳朝さんのブログの記事から引用します。
【引用始め】
今朝方…日本演芸若手研精会で御世話になった稲葉守治さんが亡くなりました。
携帯電話の着信履歴を見ると、昨日お昼12:45分に稲葉さんから電話がありまして…それが最後の会話になりました。その前の晩に電話したんですが留守電で…メールのやり取りはしていたんですが…有明の癌研にカミさんと末っ子を連れてお見舞いに行きましたが、大変に喜んで下さって…考えてみりゃあ~粋なお父っつあんでした。私財をはたいて研精会を続けてくれて。
とにかくゆっくりお休み下さい。稲葉さんからの最後のメールに俳句がありました。
「ねこやなぎ 白銀の雨 こぼしけり」 守治
合掌
【引用終り】
この短い記事に、稲葉さんの人となりが全て表れていると思います。

現在、東京の二つの落語協会に所属している二ツ目の落語家だけで約90人います。一方寄席の定席は都内に4軒ありますが、集客力を考えるとどうしても人気や実力のある落語家に出演依頼が集中します。その結果、1回の寄席に15~20人程度の芸人が出演するのですが、二ツ目は一人だけとなるケースが多いのです。盆と正月の特別公演だと、ゼロという場合もあります。

寄席はワンクールが10日間で、昼夜2回の公演です。4軒の定席に出演できる回数は、
12x3x2x4=288
で、年間288回という計算になります。
二ツ目の噺家は90人ですから、平均して1年間に3回(30日間)の公演にしか出演ができないという計算になります。
一番伸び盛りにあり、一番稽古をしないといけないこの時期に、実は客の前で落語をするチャンスがあまり無いというのが、今の二ツ目の厳しい現実です。
稲葉さんはここに援助の手を差し伸べ、若手落語家が芸を磨き向上させる場を提供したわけです。
過去にもそうした取り組みを試みた人もいましたが、経済的な面を含めて困難が多く、なかなか永続きしていません。
稲葉さんの30年にわたる努力というのは、驚異的なものです。

「日本演芸若手研精会」からは、雲助、さん喬、正雀、喜多八、市馬、たい平、平治、三三など、今の落語界を背負っている芸人が巣立っていきました。
現在の落語ブーム寄席ブームは、稲葉守治さんのような縁の下の力によって支えられてきたのです。
心よりご冥福をお祈りいたします。

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