東京落語の4派が揃った「国立・花形演芸会」(4/29)
テポドンが飛んでこようが、豚インフルエンザが流行ろうが、「紅旗征戎非吾事(ジタバタしても仕方がないさ)」。GWは先ず寄席へ、というわけで4月29日国立演芸場の第359回花形演芸会に向かう。
・林家 花「紙切り」
・瀧川鯉斗「強情灸」
・花島けいこ「奇術」
ここまでの3人は、未だプロのレベルに達していない。
・三遊亭兼好「大工調べ」
ここでようやくお目当ての兼好が登場。昨年真打に昇進したばかりだが、圓楽一門ではピカイチといって良いだろう、期待の若手だ。
この噺、落語の代表的ネタであるにも拘らず、高座にかける人は限られている。その理由は、山場の啖呵が颯爽と切れるかどうかにかかっているからだ。口調の滑らかさと粋さが求められる。
名人・上手といわれた噺家でも、このネタをかけなかった人が多い。
兼好の演出は丁寧だ。先ずは「細工は流々仕上げを御覧(ごろう)じろ」という江戸の諺を、マクラで時間をかけて解説していた。この落語のオチが、先の諺を知らないと理解できない。
もう一つ、棟梁の政五郎が訪ねたときに、与太郎にお袋さんが留守だと語らせている。これも後半の裁きの場面で、「老母一人を養いかねる」という訴状の伏線になっている。
こうした緻密さと、何より政五郎の胸のすくような見事な啖呵が、聞き応えがあった。世渡りの上手さだけで、流れ者から家主にのしあがった源六の悪行をばらす場面で、観客もそれぞれ思い当たるフシを頭に浮かべ、喝采を送るのである。
後半は一転して大岡裁きとなるが、ここでも兼好はオチに工夫を加えて、オリジナルを変えている。私はこちらの方が分かり易いと思った。
欲をいえば、奉行の風格を出すために、もう少しセリフをゆっくり喋った方が良いと思う。
とにあれ、上出来の「大工調べ」だと言えよう。
―仲入り―
・柳家三之助「棒鱈」
江戸っ子は田舎侍が嫌いだが、とりわけ維新を主導し天下をとった薩長の侍が嫌いだったようで、彼らをからかうネタがいくつかあるが、これもその一つ。
何かというと「あにか、あにか、」と繰り返し、分けの分からぬ言葉を喋り、無粋な歌を放歌高声する彼らが我慢できない。
三之助は、酒癖のわるい江戸っ子と田舎侍の対比を描いて、面白く聴かせてくれた。
この人が未だ二ツ目とは驚きだ。下手な真打より上手い。
・U字工事「漫才」
最近の東京の若手漫才は面白い。
この二人も栃木訛りを丸出しにして、隣の茨城をいじるネタで観客席を沸かせる。テンポが良いし、間のとり方も絶妙。
・立川談笑「薄型テレビ算」
初見だが、期待したほどで無かった。
新作ではあるが、「壷算」をそっくり薄型テレビに置き換えたもので、ストーリーに新味がない。登場人物の演じ分けも不十分なので、噺に奥行きがないのだ。
本人も言っていたが、なぜトリに持ってきたのか疑問だ。
今書いていて気がついたのだが、そうか、この日は東京落語界の4派を全て揃えたのか。
それなら意味がある。
« 松竹芸能社は北野誠の処分理由を明らかにすべきだ | トップページ | 「北野誠処分問題」記事へのコメントと見解 »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
コメント