「寄席・落語ブームの今後を占う」鈴本演芸場5月下席
落語ブームが言われだしてから久しい。
最初にブームが予感されたのは2000年の喬太郎、たい平の真打同時昇進の時で、客席の前方が若い女性で占められるなど、客層がガラリと変っていて驚きだった。その後、落語家を主役にしたTVドラマの放映で人気に拍車がかかった。だからもう10年近くになるわけだ。
ブームであればいつかは鎮静化ししぼんでしまう時期が来るのだが、わたしはそうした一過性のものではなく、このまま落語や寄席の人気が定着するとものと予想している。
その理由は三つある。
一つは寄席(定席)の充実だ。
5月30日の鈴本演芸場下席でも、下記の番組の通りいつもの顔ぶれでいつものネタだが、これが面白いのだ。何回同じものを見ても面白いというのは、芸が本物の証拠だ。
落語をメインにしながら、奇術あり、漫才あり、講談あり、操り人形ありと実にバラエティに富んでいて、多彩な芸で客を楽しませてくれる。
今回も寄席が初めてという客が近くにいたが、こんな面白いと思わなかったと喜んでいた。きっとリピーターになって行くのだろう。
戦後の第一次寄席ブームを知っている者として、当時とは隔世の感がある。それほど昨今の寄席は充実している。
二つ目は、有能な噺家が次々と生まれていることだ。
立川流の志の輔、談春、志らく、柳派では市馬、喬太郎、三三ら、柳昇門下の鯉昇、昇太ら、30代から50代初めの若手・中堅クラスに人気と実力を兼ね備えた落語家が顔を揃えている。
こうした芸人が落語界をリードしている。だから面白い。
三つ目は、大衆娯楽としてコストパフォーマンスが高いということ。
今時、3000円以下の入場料で4時間これだけ楽しめる娯楽は他に無いのではなかろうか。新宿末広亭なら、その気になれば9時間楽しめるわけで、景気の動向にあまり左右されないと言えよう。
一つ気になるといえば、落語協会と芸術協会の格差だ。
色物では芸協は決して遜色ないのだが、落語では明らかにレベル差がある。
かつては古典の落協、新作の芸協といわれていたが、今ではそうした区別がなくなった。
もう一つは、立川流と圓楽一門の今後だ。
これから確実におこるであろう代替わりを契機に、両派とも協会に復帰して寄席に戻ってくれることを願っている。
【鈴本演芸場5月下席(5/30)の番組】
前座・柳亭市丸「二人旅」
・三遊亭司「湯屋番」
・ダーク広和「奇術」
・桂南喬「松竹梅」
・川柳川柳「ガーコン」
・あしたひろし/順子「漫才」
・橘家文左衛門「道灌」
・古今亭志ん輔「替り目」
・ニューマリオネット「糸操り」
・三遊亭歌之介「漫談」
~お仲入り~
・ロケット団「漫才」
・宝井琴調「大岡政談より人情匙加減」
・古今亭菊之丞「紙入れ」
・太田家元九郎「津軽三味線」
・桂才賀「松山鏡」篠原流踊り付
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