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2009/05/10

ジャズと軍歌の狭間で・こまつ座「きらめく星座」

Photo_2こまつ座&ホリプロ公演「きらめく星座」が、現在天王洲アイル「銀河劇場」にて上演中だが、5月9日に観劇した。
主なスタッフとキャストは次のとおり。

【作】井上ひさし
【演出】栗山民也
【音楽】宇野誠一郎
―出演者―
久保酎吉/小笠原信吉
愛華みれ/妻 ふじ
阿部力/長男 正一
前田亜季/長女 みさを
相島一之/その夫 源次郎
木場勝巳/間借人 竹田慶介
後藤浩明/ 同   森本忠夫
八十田勇一/憲兵伍長 権藤三郎
ほか

私に物心が付いた戦後、一番初めに覚えた歌はジャズだった。それほど周囲にジャズが溢れていたのだが、別に国民全てが進駐軍に迎合していたわけではない。元々、戦前から日本人はジャズが好きだったのだ。
既に大正の終わりごろから東京でジャズが流行り始め、昭和3年にはジャズのレコード第一号が発売され、ヒットする。二村定一が唄った「青空」と「アラビアの唄」である。
「狭いながらも楽しい我が家・・・」とか「砂漠に陽は落ちて夜となる頃・・・」といった歌詞が人口に膾炙することになる。
歌謡曲として空前の大ヒットとなった「東京行進曲」の中でも「♪ジャズで踊ってリキュールで更けて・・・」と歌われている。

昭和6年満州事変が起きると、次第に軍歌が多くレコーディングされるようになる。
昭和12年に日中戦争が本格化すると、軍部から「ジャズや流行歌は軟弱」と指弾されるようになり、灰田勝彦が歌った「煌く星座」という曲にも、軍の圧力がかかるようになる。
「男純情の愛の星の色 冴えて夜空にただひとつ溢れる思い・・・」という歌詞が、「星」は陸軍の象徴であり、それを「愛の星」とは何事であるかというのがその理由だった。

昭和16年の太平洋戦争の開戦を迎えるとますますジャズに対する風当たりは強くなり、昭和18年には内務省から敵性音楽リストが発表され、レコードの販売が禁止される。ジャズだけではない。現在は懐メロとして愛唱されている多くの歌が、この時に禁止の対象となった。
「鬼畜米英」「米英音盤をたたき出そう」といったスローガンの下、音楽はもちろん、カタカナ語も追放される。
昭和20年の終戦、それまで抑えられていたものが一気に爆発し、戦後のジャズの興隆の時代を迎える。
この劇では、ジャズが「人間の生への賛歌」、軍歌は「国家と戦争のための死への歌」として象徴化されているのは、そのためだろう。

舞台は日中戦争が始まっている昭和15年秋から、日米開戦の前夜である昭和16年12月8日まで。
浅草の小さなレコード店に、四人の家族と、二人の間借人が仲良く暮らしていた。しかし、この平和なオデオン堂に、大事件が起こる。
陸軍に入隊していた長男の正一が、脱走したというのだ。すぐさま追っ手がかかって、憲兵伍長「マムシの権藤」がオデオン堂に乗り込んでくる。やがて張り込みと称して、この家の間借人となる。
さらにもう一人、長女みさをが婿に選んだ傷痍軍人で堅物の愛国主義者、源次郎がこの家族に加わる。源次郎は、この家の住人たちのジャズがかった音楽好きがどうしても許しがたい。
やがてオデオン堂自身も、戦況の悪化の中で取り潰しになることが決まるが・・・・・。

居間の片隅にピアノが置かれ、中央に蓄音機が据えられているこの一家には、常に歌が絶えない。
戦時下の辛い境遇の中でも、立場こそ大きく異なるが、明るさと希望を持ち続ける庶民の姿が、生き生きと描かれている。

こまつ座の出演者たちのアンサンブルは、毎度のことながら素晴らしい。固定した劇団員がいない中で、これだけの芝居ができるとうのは、作品そのものが良く出来ているのは勿論、演出の腕も大いに寄与しているのだろう。

個々の出演者の中では、間借人でコピーライター役の木場勝巳の演技が光る。この人が出てくるだけで、「こまつ座」の舞台であることを実感させられる。
愛華みれが、華やかで強かな、芯の強い戦前のお上さんを好演していた。
久保酎吉の飄々としたオデオン堂主人も適役。
前田亜季はセリフが明解で、演技も堅実。娘役から大人の舞台女優へ、着実に脱皮しつつある。
後藤浩明は舞台での生演奏で、ピアノに雄弁に語らせ舞台をシメテいた。演技も堂にいっている。
憲兵役の八十田勇一には、もう少し凄味が欲しかった。

公演は24日まで。

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コメント

突然のコメント失礼致します。
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投稿: sirube | 2009/05/10 17:22

sirubeさま
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投稿: home-9(ほめく) | 2009/05/10 22:06

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