談春・喬太郎二人会(6/7-15時)@よみうりホール
落語界で人気を二分する二人の「立川談春・柳家喬太郎二人会」は、6月7日よみうりホールの15時の部に出向く。
今回はわたし自身の好みというより、娘(もうイイ年ではあるが)が談春の「赤めだか」を読んで感激し、是非いちどナマ談春を見たいというたっての希望からチケットを取ったものだ。
かつては落語フアンが落語家の本を読んだものだが、今は逆なんですね。
寄席には過去1,2回行っただけ、喬太郎という名前も初めて聞いたという娘が果たしてどのように反応するか、それが楽しみだった。
【この回の番組】
柳家喬之進「幇間腹」
柳家喬太郎「すみれ荘201号」
~仲入り~
立川談春「厩火事」(「すみれ荘201号」の下、仕立て)
喬太郎がマクラの頭で言っていたように、今回の二人会はメインが談春だ。
この場合、相方は主役を食わないようにやや軽めの高座にするのだが、この日の喬太郎は絶好調。
一人一席で時間がタップリあったせいか、日大オチ研のマクラをいつもより長めにして、お見合いの席で東京ホテトル音頭~東京イメクラ音頭~大江戸ホテトル小唄の3曲を熱唱。もう、ドウニモとまらない。
会場は大受けで、喬太郎を初めて聞いた娘も「この人上手ね」としきりに感心していた。二人の別れ話のシーンでは少しジーンときたそうだ。
しかしこう前の人が大受けだと、後の談春は困るだろうなと、ちょっと嫌な予感がした。
その談春の「厩火事」だが、この噺のスジに、髪結いの“おさき”が亭主より7歳年上で女は早く老けるから、自分が年寄りになってから亭主が若い女を引き込んで側でイチャイチャされたら・・・と心配する場面がある。
談春の演出は、仲人が生活力も金も無い年寄りの男を、若い女が相手にする筈がないからと指摘する。
そこで、おさきはこう反論する。若い女というものは、こうした地位も金もない年配の男にかえって魅かれるものなの。それに亭主はいい男。だってこの私が惚れたんだもの、と。
この演出は評価が分かれるだろうが、私は蛇足だと思う。本筋と離れているし、おさきの不安というのはそれほど論理的なものではなく、もっと漠然とした多分に情緒的なものだ。
あまり理に走りすぎると、かえってこのネタの持つ雰囲気を壊してしまうのではなかろうか。
それと、談春の欠点は登場人物が時に平板になることだ。
今回についても、亭主と仲人が同一に見えてしまう。仲人は分別のある目上の人間という性格づけのはずである。
本題が終わってから、これが「すみれ荘201号」の“ゆみこ”がテープで聴いていたという設定になっており、“ゆみこ”と同棲相手が元の鞘に納まるという大団円が付け加えられた。
観客へのサービスという面と、前の高座で喬太郎が受け過ぎたことを意識してのこともあったようだ。
肝心の娘の感想だが、「喬太郎は良かったが、談春は少し期待外れ。」とのことだった。
大方の評価も、その辺りに落ち着くのではなかろうか。
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う~ん、そうでしたか。
喬太郎の人を惹きつける力には恐るべきものがありますね。
先週の池袋演芸場では「頓馬の使者」を演じていました。
古典にしては少し変だな、と思いながらネットで調べてみると、
あの山田洋次監督の作だとか。
コミックやアニメに影響を受けた演出はかえってしらけることが多いのに、
喬太郎は程よく調合してしまうようです。
投稿: 福 | 2009/06/11 06:21
福さま
コメント有難うございます。
・同じネタを何回聴いても面白い
・つまらないネタでも面白く聴かせる
これが上手い噺家の条件だと思います。
喬太郎は何を演らせても上手い。
談春は独演会だと面白いのですが、複数が出演する落語会ではどうも調子を落す傾向があります。
やはり普段、寄席に出ていないからでしょうか。
投稿: home-9(ほめく) | 2009/06/11 11:18