鈴本四騎の会
鈴本演芸場の6月下席は「寄席DAYパート38」と題する特別企画興行を行っているが、28日は「鈴本四騎の会」。
実力と人気が備わっている旬な噺家をそろえたとあって前売り完売、当日は自由席で開場時間の5時には6割かた客席が埋まっていた。
雨の中を並んでいたフアンが多かったんですね。
この会は文左衛門が呼びかけたのだそうだが、雨宿りついでに入ったパチンコが出るわ出るわでやめられず、楽屋入りが大幅に遅れたと扇辰が嘆いていた。
いかにも文左衛門らしいが、この日のラインナップ(全てネタ出し)を見ると実によく工夫されているのに感心する。滑稽噺から人情噺、間に新作を入れて最後は大ネタだ。
先ずはプロデューサーのセンスの良さに敬意。
【番組】
前座・入船亭辰じん『道具屋』
入船亭扇辰『野ざらし』
いかにも扇辰らしい本寸法の「野晒し」で、珍しく最後のオチまで演じた。
このネタの後半はいかにも取ってつけたような内容なので、なかなか演らない。普通は自分の鼻(又は顎)を釣ってしまうところで切る。この日の観客も始めて聴いた人が多かったのではなかろうか。
中で唄う「さいさい節」が三代目柳好バリで上手く、噺全体がしまる。
橘家文左衛門『子は鎹』
意外といっては失礼かも知れないが、文左衛門の語り口と「子別れ」は相性が良い。
冒頭の番頭と熊五郎の会話で、ここまでの粗筋が簡潔に語られ、初めて聴く人もストーリーが頭に入る。
亀吉がこのまま大人になると、将来は文左衛門みたいになるんじゃないかと心配になる部分もあったが、父と子、母と子、夫婦の情愛が細やかに描かれ、良い出来だったと思う。
~お仲入り~
柳家喬太郎『笑い屋キャリー』
横浜にぎわい座での4回連続独演会を済ませてきた喬太郎が、どんな高座を見せるかが楽しみだった。
結果は、記念公演で抑え気味にしていたエネルギーが一気に噴出したような高座だった。
筋は、落語家を潰そうとする集団と噺家たちの暗闘という他愛ないものだが、それだけに楽屋オチや他の芸人の物真似をいかに織り込むかが工夫のしどころ。
こうしたネタを満載にして、歌は太田裕美の「失恋魔術師」と、「夕べ父ちゃんと寝た時に・・・」のワイ歌をオリジナルと英語バージョンまで披露してサービス満点。
付き合いで来たらしい隣席の女性客は終始居眠りをしていたが、喬太郎の高座だけは大喜びで見ていた。
今の喬太郎は、向うところ敵無しである。
柳家三三『妾馬』
「膝」が大ウケでこの日のトリはさぞかしやり難かったろう。出囃子から高座に上がるまで時間がかかったのは、もしかしてそのせいだろうか。
マクラ無しで一気に本題に入り、客席の熱気を冷ます。
八五郎の井戸の掃除から入る演出は、圓生の形を踏襲したものだろうか。
丁寧な高座だったが、お鶴が奉公にあがる前までの場面が長過ぎる。その分、殿のご前で八五郎が奔放な姿を見せるシーンがあっさりと感じた。
このネタは後半が見所なので、もう少し時間をかけてタップリ演じた方が良いと思う。
個人的には志ん生の演出、すなわち八五郎が次第に酔っ払い、殿の前で都々逸を披露するやり方が好きだ。
四人四様、それぞれが持ち味を発揮した会だったのだが、終わって見れば喬太郎だけが強く印象に残った。
他の3人は割りを食われた恰好になってしまった。
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