劇団大阪公演「親の顔が見たい」
創立40周年をむかえる「劇団大阪」の第66回本公演は、学校でのイジメ問題をテーマにした「親の顔が見たい」を上演中。劇団のアトリエ「谷町劇場」での6月14日16時の会を観劇。
■作・演出
作/畑澤聖悟
演出/熊本一
■キャスト
齋藤誠/ミッションスクールの中学校長
神津晴朗/学年主任
もりのくるみ/自殺した生徒の学級担任
森祥子/自殺した生徒・みどりの母
清原正次/同級生・志乃の父
夏原幸子/同 母
上田啓輔/同級生・翠の父
小石久美子/同 母
高尾顕/同級生・のどかの祖父
山内佳子/同 祖母
中村みどり/同級生・麗良の母
池田ゆみ/同級生・愛理の母
市村友和/みどりのバイト先の店長
ストーリーは、
伝統ある星光女子中学校の2年3組の教室で、生徒のみどりが自殺する。
担任の教師にあてた遺書があり、そこには同級生である志乃、翠、のどか、麗良、愛理の名前が書かれていた。5人の保護者たちが会議室に集められ、校長や学年主任らと話し合いが行われる。
自殺を生徒本人の資質や家庭環境のせいにしてわが子を庇護する親たち、穏便に済ませようと対応に苦慮する教師たち。
やがて、少しずつイジメの実体が浮かび上がってくるが・・・。
ますます深刻化、陰湿化する学校でのイジメ、責任を全て学校に転化するモンスターピアレントの存在、それに小泉構造改革により生じた中流階級の崩壊などが背景として絡む。
この芝居の本当の主役は、実は舞台に姿を見せない生徒である。
親や教師の理解を超えた存在になってしまい、どう接してよいのか正解がみつからないもどかしさ、それこそがこの芝居のテーマではなかろうか。
しかしその背景にあるのは、実は大人の世界であり、その鏡として子どものイジメ問題が横たわっていると思う。
生徒が新型インフルエンザにかかったと報道されると、学校の業務がマヒするほど、朝から晩まで非難や嫌がらせ電話を集中させる、それも名前も顔も無いノッペラボウの人間がやっているのだ。
そうした社会的風潮の裏返しが、子供たちのイジメを生んでいるような気がしてならない。
舞台中央が会議テーブルになっていて、その周囲を出演者たちが囲む。
更にその周りを観客席が囲んでいるので、観客自身が舞台に参加しているような錯覚にとらわれる。あまりに理不尽な発言を繰り返す親がいると、舞台に出て行って殴りかかりたくなる衝動にかられるほどである。
小舞台の良さが生きた演劇だといえよう。
そういう意味で、今まで観てきた劇団大阪の芝居で、最も強い感動を受けた。
キャストでは、斉藤誠、中村みどり、上田啓輔ら劇団の中心メンバーが手堅い演技を見せていた。
みどりの母親役の森祥子の狂気に近い迫力と、志乃の母親役の夏原幸子のおぞましさ(もしかして「地」?)に満ちた演技が光る。
他に、担任を演じた客演のもりのくるみの熱演が印象に残った。
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