「期日前投票」制度は見直すべきだ
私は20歳で選挙権を得て以来数十年、国政、地方を問わず選挙を棄権したことは一度もない。
そのうち期日前投票(当時は不在者投票と呼んでいたが)は、長期出張にぶつかった1回だけで、あとは全て投票日に投票している。
選挙は国民が政治に参加する事実上の唯一の機会であり、それだけに投票日に投票ができるように最優先でスケジュールを調整してきた。
きちんと投票を行うよう努力することは、国民としての責務だと考えるからだ。
今夏の衆院選挙では、公示の翌日19日から28日までに期日前投票を行った人は1094万人で、これは有権者のおよそ10.5%に相当するという。
期日前投票について法律では、公職選挙法第48条の2で次のように定められている。
【引用開始】
第48条の2 選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第44条第1項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる。
1.職務若しくは業務又は総務省令で定める用務に従事すること。
2.用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に旅行又は滞在をすること。
3.疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難であること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院若しくは婦人補導院に収容されていること。
4.交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞在をすること。
5.その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。
【引用終り】
選挙の投票は投票日に行うことが原則で、例外として上記要件1~5に該当した者だけが期日前投票が出来ると法律では定められているわけだ。
今回期日前投票を行った1094万人の中で、法に定められた要件を満たしていた人が果たしてどの位いるだろうか。
投票をし易くして投票率を上げることだけを考え、公選法を無視して期日前投票が実施されているとすれば、これは大いに問題だ。
むしろ過去の実態をみれば、期日前投票が悪用されている恐れが十分にある。
前回の選挙では、ある宗教団体系候補の街頭演説が終わったあと、集まった聴衆にそのまま期日前投票所に向かうよう呼びかけたということが報道されていた。
明らかな違法行為であるが、現状では止めさせる方法がないし、選挙違反として告発することもできない。
替え玉投票や、二重投票が容易にできるのも制度の欠陥の一つだ。
実際の期日前投票所の現場では、投票所入場券を持参しなかった有権者について、身分証明書の提示を求まれえることは殆んどなく、宣誓書の提出と生年月日などの口頭での確認だけで投票させている例が多いという。
これだと、その気になればいくらでも不正投票ができてしまう。
公選法では公正な投票を守るために、投票日の選挙運動に制限を加えている。
公選法129条では選挙運動期間を【候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。】と定めている。
しかし選挙運動が真っ最中に行われる期日前投票では、この条文は守られない。
投票の利便性だけの理由から、法の精神を無視し、不正選挙を助長するような現状の期日前投票制度は、見直しが必要である。
大事なことは人為的に投票率を上げることではなく、選挙の公正性を保つことだ。
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