劇団大阪「闇に咲く花」@銀河ホール
9月5-6日に岩手県西和賀町で「#17 銀河ホール地域演劇祭」が行われ、その中の劇団大阪「闇に咲く花」を観劇。
西和賀町文化創造館「銀河ホール」は岩手県の北上と秋田県横手を結ぶ北上線の間にある「ほっとゆだ」駅で下車する。列車の本数は一日に数本だし、乗換えがスムースにいったにしても東京からおよそ4時間かかる。
「ほっとゆだ」は駅舎の中に温泉がある珍しい駅だ。電車を待つ間に一風呂浴びることができるわけだ。
駅から直ぐに「錦秋湖」が見えてくる。
名前の通り、秋には紅葉の名所となるそうだ。
一部すでに色づいているのが分かる。
駅前から2-3分のところに西和賀町歴史民族資料館がある。
この辺りには旧石器時代の住居跡があったり、当時の石器も数多く出土している。
また周辺にはかつて沢山の鉱山があり、金や銅も産出していた。
この資料館は展示も豊富だし、町営の施設としては非常に充実している。
資料館の向いに「Uホール」が見えてくる。
ここは銀河ホールの付属施設で、稽古場がある。劇場の隣に稽古場があるというのは極めて恵まれている。
ここが「銀河ホール」。
錦秋湖の辺に建てられていて、ゆったりと広いスペースのロビーから湖が見える。
ここも町営の施設としてはとても立派な建物だ。
ホール内部で、緞帳に銀河が描かれている。
ホールは客席338席(固定席288席、桟敷席50席)で、芝居には丁度いい広さだ。
客席をみると近所の爺ちゃん婆ちゃんと見られる方が多数を占めていて、普通の新劇とは随分と雰囲気が違う。芝居が始まっても、あちこちから話し声が聞えてくる。
こうした演劇に沢山の町民が集まるというのは、この地域の民度の高さを物語っていると思う。
さて劇団大阪の「闇に咲く花」。
作: 井上ひさし
演出:熊本一
<主なキャスト>
斉藤誠/愛敬稲荷神社の宮司・牛木公麿
上田啓輔/息子・健太郎
小柳亮/その親友・稲垣善治
粱礼子/近所の主婦・遠藤繁子
浅野恵/ 同 ・田中藤子
清原正次/鈴木巡査
北尾利晴/GHQ雇員・諏訪三郎
高橋伸尚/ギター弾きの加藤さん
他
ストーリーは、
終戦後の東京神田にある愛敬稲荷神社、宮司である牛木公麿は、神社は開店休業状態で、近所の戦争未亡人を集めてはお面作り闇米買出しで食いつないでいる。
プロ野球のピッチャーだった自慢の息子・健太郎の戦死の知らせがきて落ち込んでいたが、ある日その健太郎がひょっこり帰ってくる。
親友の稲垣善治や公麿は大喜びをするが、そこにマッカーサー司令部の特務と名乗る諏訪三郎が現れ、健太郎をC級戦犯としてグアムに送り、現地で裁判を行うと通告する。
その理由というのが、健太郎がグアムに駐留していたときに、現地の若者相手にキャッチボールをしていて、相手が球を受け損なって額にボールがあたり負傷したということが、現地人を虐待したという罪に問われたものだ。
全くのいいがかりなのだが、健太郎はショックのあまり記憶喪失に陥るが、GHQの追求は続き・・・・・。
「私は貝になりたい」と似たテーマである。
このようないわれなき言いがかりで処刑されたC級戦犯は、決して少なくなかった。
現地に行って、誰か日本軍に虐められて人間はいないかと問われると、健太郎のように現地人に溶け込んで親しくなったばかりに名前を覚えられていて、かえって戦犯としてでっち上げられた人もいた。
しかも残念なことに、日本軍の生き残りの憲兵や情報将校の中には、占領軍の手先となって戦犯狩りを行った人間がいたことも事実である。
こうした20世紀の記憶を、私たちはいつまでも忘れてはならないと、この劇は訴えている。
2005年に上演したものを再演、それも一発勝負ということで、セリフを忘れたりトチッタりするのがやや目立ったが、全体としては熱演で見応えがあった。
主役の斉藤誠はシリアスな面とコミカルな面とを演じ分けて長丁場を好演、上田啓輔と北尾利晴が相変わらずの手堅い演技を見せ、小柳亮と女優陣の熱演が光る。
高橋伸尚のギター演奏が舞台をシメた。
【訂正】
「りお」様からご指摘があり、銀河ホールのある西和賀町の所在を当初「山形県」としておりましたが、正しくは「岩手県」です。
お詫びして、記事の一部を訂正いたします。
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銀河ホールは山形県でなく岩手県です。
投稿: りお | 2009/09/08 13:36
りお様
コメント有難うございます。
大変迂闊でした。
ご指摘に従い記事を訂正いたしました。
投稿: home-9(ほめく) | 2009/09/08 14:47