【八ツ場ダム中止】狙いは「前原つぶし」?
民主党が選挙公約でかかげた八ツ場ダムの建設中止が、いま暗礁にのりあげている。
9月23日には前原誠司国土交通相が現地を視察したが、地元住民との意見交換会は開かれなかった。
あくまで建設中止の方針はかえないという前原国交相と、白紙撤回を求める住民との折り合いがつかなかったのだ。
その八ツ場ダムの建設工事だが、計画されたのは1952年というから、かれこれ半世紀も前になる。
1994年に着工して、既に7割が終了し、今年の10月から本体工事に取りかかろうかという段階だ。
ことここに至っては、このダムが必要かどうかを問うだけではどうにもならない。
ダム工事は住んでいた住民を説得し、代替地域に移転させるまでが大仕事なのだ。反対派を切り崩し、賛成派を手なずけ、長い期間をかけてようやく工事にかかれる。
反対していた人々は、公共のためだと自分たちを納得させ、しぶしぶ別の地域に移っていく。それまでの地域コミュニティーは壊されていく。
それが今になって、実はこのダムは必要じゃなかったといわれても、それじゃあ俺たちの50年間を返してくれよと言われても仕方がない。
地元住民の意向を尊重すれば、ダム工事は中止できない。しかしここで工事の中止に失敗すれば、前原大臣の責任問題が生じてくる。
前に進めず、かといって後退はできず、前原大臣は立ち往生だ。
もう少し裏工作が出来る人物ならよいのかも知れないが、なにせ「直球勝負の前原」である。
加えて偽メール事件ではすっかり騙されたように、この人意外にワキが甘いのだ。
打開への道のりは遠い。
前原国交相にはもう一つ難問が控えている。高速道路の無料化だ。
各社の世論調査でも、過半数の人が無料化には反対している。
第一、前原誠司自身が、元々高速無料化には賛成ではなかった。しかし大臣としての職務上、無料化を推し進めねばならない。
どう屁理屈をならべても、温室効果ガスの25%削減と、高速無料化は両立できるはずがないのだ。
もしマニフェスト通りに政策を実現しようとすれば、前原大臣はここでもジレンマに陥ることになる。
前原誠司は、今回のオールスター政権で入閣を果たしたものの、鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長双方にとって、あまり面白くない存在だ。
小沢一郎の秘書が西松建設事件で逮捕されたとき、当時民主党の代表であった小沢の面前で辞任を迫ったのが前原誠司だ。
小沢一郎の性格からして、腹の底では絶対に許せない相手だろう。
鳩山由紀夫首相としても、前原は心を許せる相手ではない。いつ反旗を翻さないとも限らない相手でもある。安全保障政策では前原は党内きってのタカ派であり、鳩山首相が進めようとしている外交政策とは真っ向から対立する可能性がある。
前原国交相が仮に八ツ場ダムの建設工事の中止を決行すれば、世論からの強い反発をくうことになろう。
高速道路の有料化を実現すれば、国民多数からの批判にさらされるのは間違いない。
しかし民主党政権としては、公約を実現したことになり万々歳だ。
仮に前原国交相が政策実現に失敗すれば、責任を問われ辞任に追い込まれることになる。その時は世間の非難とともに表舞台から去ってもらえば良いのであって、小鳩体制への打撃は最小限にとどまる。
どっちに転んでも「前原つぶし」とみるのは、穿ち過ぎだろうか。
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