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2009/09/17

千葉景子新法相の資格を疑う

今回の新政権で新たに法務大臣に就任した千葉景子法相が17日行った記者会見には疑義がある。
先ず官邸での会見で、死刑執行について「人の命にかかわるので、法相の職責を踏まえながら慎重に取り扱う」と述べ、執行に消極的な姿勢を示した。
続いて法務省内で開いた会見では、「そういう方向(死刑廃止や凍結の方向)がつくられていけばいいなあというのが、個人的な気持ち」と述べた上で「制度の趣旨と大臣の職務を考えて慎重に対処したい」と繰り返した。
執行命令書に署名するかどうかについては明言を避けた。

発言を聞いていると、千葉新法相は果たして日本の法制度の基本を理解しているのだろうかという疑問がわいてくる。
裁判で確定した刑の執行は、「刑事訴訟法」によって、死刑のみ法務大臣の命令で、それ以外の刑は検察官が指揮すると定められている。
もし裁判で確定した刑を、法相または検察官が恣意的に執行しないとすれば、これは明らかな不法行為である。司法の結論を、行政が拒否したことに等しい。
例えばある検察官が無期懲役は非人道的だという個人的信念から、いつまでも刑の執行(収監)を拒んだとしたらどうだろう。そんなことが許される筈がない。
死刑についても同じことだ。

千葉法相は超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」(亀井静香会長)のメンバーの一人だ。
「そういう方向(死刑廃止や凍結の方向)がつくられていけばいいなあ」というのは立法の課題であり、それと行政の長の職務と混同すべきではない。
国民の声というのであれば、今は全体として厳罰化を望む方向に動いており、死刑制度についても存続の声が強い。
将来的には終身刑の導入や、死刑制度の見直しは課題ではあるが、それと現実の刑の執行とは全く別の問題だ。

このように千葉景子法相の発言は、三権分立の原則を踏み外している。
法の上に個人の信条を置くようでは、法務大臣としての職務がまっとうできるのか、不安だ。

今回のような死刑をめぐる法相の対応は、過去の自民党政権でも起きていて、それが今まで放置されてきた。
したがって民主党新政権でおきた問題というよりは、過去の悪弊を引きずっていると考えたほうが良い。
誰だって喜んで死刑を命令したくはないだろうし、できれば避けたいという気持ちはあるだろう。
しかし自分の時はサインしないというのは、結局イヤなことを先送りしているに過ぎない。
そんな意志薄弱な人間が、法務大臣では困るのだ。

【補足】
昨日のTV番組で、出席していた自民党議員が本記事と同趣旨の理由で千葉法相を批判していたが、この件について自民党には批判する資格はない。
過去の自民党政権下の法相の中にも、自らの信念で死刑執行命令書にサインしないことを言明した大臣がいたが、自民党はこれを黙認してきたからだ。
いずれにしろ、どうしても自己の信念を貫きたければ、法務大臣の就任を断れば済むはなしである。
(9月22日加筆)

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