羽田のハブ空港化と地域エゴ
前原国交相の羽田空港ハブ化構想に、予想されたとおり千葉県側からは猛反発の声が上がっている。
千葉県の森田知事は13日、記者会見で「本当、きのうね、頭にきて眠れませんでしたよ。・・・冗談じゃないって、そういう気持ちですよ」と怒りをぶちまけた。
「冗談じゃない」のはアンタの公選法と政治資金規正法違反疑惑のほうだろうと、ツッコミを入れたくなる。
成田空港がある成田市長も「(成田空港反対闘争で)血を流し、死んだ方もいる。そういった事実と歴史的経緯を忘れてもらっては困る」と述べていた。
主張がどうも感情的な方向に向かっていて、これでは何も解決できない。
先ずは成田と羽田両空港の概要を比較してみよう。
◇成田空港
1978年開港。A滑走路(4000m)のみの運用から2002年に2本目のB滑走路(2180m)が暫定的に供用をスタート。2009年10月に2500m化の工事が完了する。来春のダイヤ改正で本格運用が始まり、現在20万回の年間発着から22万回にアップする。
◇羽田空港
1931年開港。A滑走路(3000m)とB滑走路(2500m)、C滑走路(3000m)に続く4本目のD滑走路(2500m)が2010年10月の供用開始を目指して多摩川河口付近の海上に建設中。完成後は昼間の発着数が現在の30,3万回から40,7万回に引き上げられる。
この数字から何が見えてくるか。
第一に、成田に比べ羽田は規模が約二倍だということ。
第二に、旅客数を考えれば両空港を併用しなければまかなえないということ。
両者をあわせて、韓国のソウルや中国の上海の空港に太刀打ちできるようになる。
だから成田空港は今後も必要不可欠だし、縮小などいうことは有り得ないのだ。
これが前提。
次に「ハブ空港」とは。
これは北米と他の地域では定義が異なるらしいのだが、一応「航空路の基点となる空港の内、通常の空港よりも数多くの他空港への航空路が確保され、離着陸する航空機の機数や取り扱う旅客や貨物の量も非常に多い空港のこと。」と定義しておこう。
元々は当該空港から他の空港へと繋がる航空路の広がる様が、車輪のハブ(空港)とスポーク(航空路)のように見えることから、ハブ空港と呼ばれるようになったのが語源のようだ。
この他に、地域外から来た旅客を地域内の他の都市に送り届ける、又は地域内の旅客を集めて他地域に送り届けるゲートウェイ空港というのがある。
前原大臣の発言では、どちらを指しているのかハッキリしない部分もあるが、広い意味で「ハブ空港」としておく。
ハブ空港は航空会社が乗り継ぎ等の拠点として路線網を構築している空港のことを指す(例えば、アメリカン航空はダラス・フォートワース空港、大韓航空は仁川国際空港、など.)場合もあるが、アジアやヨーロッパ諸国では、主に国家戦略としてハブ空港の整備が行われている。
その理由としては、自国を代表する国際空港を国際路線における「ハブ空港」とすることにより、人の往来と貨物が集中して経済活動の要所となり、自国経済の発展の原動力の一つになりうるからだ。
日本はこの面では明らかに立ち遅れていて、このままでは空の輸送の面で地盤沈下の一方になりかねない。
そのハブ空港として、将来の拡張性を含めて羽田が最も適格だというのが前原国交相の見解だと思われる。
この構想が誤りだとするなら、千葉県や成田市側は正々堂々と反論すれば良い。
あるいはハブ空港として羽田の優位性を認めた上で、成田空港とどう共存させながら発展させてゆくか、そうした政策提案も必要だろう。
あまり地元にとって有利か不利かという議論だけに矮小化すると、「地域エゴ」と受け取られかねない。
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