医師が患者をつくりだす(上)
いま介護に携わっている関係者の中で、密かに話題になっている薬品があるという。
その薬の名前は「リスパダール(一般名;リスペドリン)」という。
元々は「統合失調症」の治療薬なのだが、高齢者の認知症の治療薬として、抗うつ剤として、時には不眠症や精神安定剤としても処方される薬だ。
「リスパダール」を高齢者が服用すると、しばしば、
(1)手足が硬直し身体が動かなくなる
(2)唇の動きが悪くないヨダレが増える
(3)食欲が極端になくなり食べなくなる
(4)床に虫が這いまわるなどの幻覚を訴える場合もある
といったような副作用を呈するそうなのだ。
こうした副作用情報は公開されているのだが、処方している医師の知識不足が問題を引き起している。
症状が重くなってホームヘルパーが気付くケースや、家族が気付いて介護福祉士やケアマネージャーに相談が持ち込まれるケースとがある。
その副作用例は、ある一つの地域で数十例に達するというから穏やかでない。
前記の(1)から(4)の症状を訴えるので、「もしかしてリスパダールを飲んでいませんか」と訊くと、「そうです」という答えが返ってくることもあるという。
時には生命の危険性にさえ及ぶこともあるそうだから、深刻な問題なのだ。
なぜこのような事が起きるのだろうか。
ある症状を訴えて高齢者が医師を訪れる。
治療薬として「リスパダール」が処方され、患者は指示通り服用する。ここまでは良い。
処が、症状が改善されないと、あるいはもっと重くなったと訴えると、知識の乏しい医師の中には、単純に用量を増やしてしまう。
そうすると患者の副作用がさらに強くなり症状が悪化する。それに対して、医者はさらに薬剤の用法用量を増やす。
こうして悪循環におちいっていく。
どこかで歯止めがかかれば良いのだろうが、これがなかなか難しいという実情がある。
元々患者が持っていった症状と副作用が似ているため、原因が薬だと気付きにくいのだ。
まして高齢者の場合、本人が気が付くというのは先ず有り得ない。
もう一つ、これも大きな問題として、患者やその家族が、医師に治療法にモノ申すことはとても困難なのだ。
副作用ではないかなどと訴えると、能力の低い医師ほど治療法が非難されたと受け止め、露骨に嫌な顔をされたり、時には逆切れされることもある。
お世話になっている医者との間が気まずくなるのを避けるため、黙って治療に従って重症に陥っていくというパターンが多いのだ。
相談を受けたケアワーカーやケアマネージャーは、とりあえず家族を説得して、「リスパダール」の服用を止めさせる。
そうすると殆んどの患者の症状が改善し、通常の日常生活に復帰できるのだそうだ。
医師によってはこの薬品に対する知識がなく、「1日量は12mgをこえないこと」という注意書きがあるにも拘らず、その3倍も処方していたケースがあったという。
こういう医者が堂々と看板をだして営業しているのだから恐ろしい。
主に高齢者の副作用が問題となっているようだが、今の日本の医療制度では、上記のような民間の副作用情報がフィードバックできるシステムがないのだ。
例えばイギリスのように、患者や家族、介護者などの個々の副作用情報がフィードバックできるシステムになっていれば、情報の共用が可能になるのだが。
(続く)
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私の母もリスパダールからスタートして多剤の抗精神病薬を無理やり飲まされて心臓、肝臓を破壊されて死亡しました。入居していた特養の介護放棄の結果でした。悪意に満ちていました。
悲しみが今も癒されません。
現在、弁護士、医師、警察、新聞記者などが調べています。
貴方様のブログは大変興味深く読ませて頂いています。
投稿: | 2010/05/14 19:13
お母様が亡くなられたとのこと、心よりご同情申し上げます。
抗うつ剤の乱用による被害について、最近になってようやく問題視されるようになりつつあります。
医師の免許をもっているだけの知識が無い精神科医が、誤った投薬を行っていても、なんら規制がない今の医療制度自体を改めない限り、これからもこうした被害は避けられません。
先ずは、副作用情報を関係者全体が共有できるようなシステムを確立することが大事だと思います。
施設の入所している場合、いわば密室になってしまうので、より恐いですよね。
投稿: home-9(ほめく) | 2010/05/16 09:01
介護福祉士による処方薬の変更は違法行為です。看護士ですらその行為は認められておりません。もし介護福祉士が処方薬の調整を行ったならば、重罪に問われます。
ところで副作用の頻度に関しましては、発売前のクリニカルトライアルで詳細に調べ上げ、それを元に厚生労働省(米国ではFDA)が認可を出すシステムになっており、期待できる効果と副作用を加味した結果、有効と判断されたものが治療薬として世に出回ります。
そして医師は、そのエビデンスを元に、症状にあわせて投薬量を決めていきます。さらに、エビデンスと違った重篤な副作用が発生した場合、その情報は医師とメーカーそれぞれから厚生労働省に報告することが義務付けられております。
しかしながら、医師が取り扱う薬を全の副作用と発生頻度を理解したうえで投薬しているかというと、あまりの種類の多さから全てを把握するのは無理です。
従いまして自らが投薬治療した患者の反応を追跡していくことでそれがその医師の経験値となり、ケースバイケースに使い分けていけるようになるのです。ですので、同じ精神科医であっても、医師によって処方する薬に個性が反映されます。
もし、たとえば医師から薬を投与され異常な症状を呈したならば、再診はもちろんのこと、それにプラスして違う病院でセカンドオピニオンをもらいに行くべきです。これは患者の権利であり、少しでもおかしいなと感じたなら実行すべきだと思います。
投稿: | 2011/09/18 01:51
上記コメントについて。
ご指摘の点はその通りですが、高齢者の介護現場、特に独り住まいの人の場合は、症状の悪化それ自身も介護士などが気付くことが多いわけです。
医師に正確な症状を伝えたり、セカンドオピニオンを行使できるような人ばかりでしたら、苦労する必要は無いのです。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/18 09:32