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2009/11/17

医師が患者をつくりだす(下)

前回の記事で精神科にかかった患者に対して、誤った診断や治療が行われている例を紹介したが、ではなぜこうした間違いが(それも初歩的な)おきるのか。
一つには制度上の問題が横たわっている。
「精神科医院」という看板をみれば、誰だって精神科の専門医が診てくれるだろうと思ってしまうのだが、実は違う。
現在の医師法では、医師の資格さえあれば誰でも「精神科」や「心療内科」の医院を開業できる。
これは「自由標榜」と呼ばれ、麻酔科以外ならどんな名前で開業しようと、それは自由なのだ。
精神科の「せ」の字も知らなくても精神科医になれる、これが恐い。

近ごろ、とりわけ都内で「心療内科」の看板が増えたのは、もう一つ大きな理由がある。
他の診療科と異なり、検査も治療器具も必要ないので、極端にいえば事務所に机と椅子さえあれば開業できてしまう。看護婦も特に必要ないので、設備投資も人件費もいらないという手軽さが受けている。

それだけではない。
診断や治療を間違うというのは医療行為としては避けられないのだが、精神科の場合、多くが見逃されてしまう。
それは精神科の場合、どうしても診断が主観的になるため、患者側から誤診の訴訟が起こしにくいのだ。
それも患者自身が気付くというのは稀で、殆んどの場合、介護している人や家族が気付くことになる。
特にうつ病の人は概しておとなしいし、問題があっても訴える元気がないのでリスクが少ないのだそうだ。

つまり、専門的な知識がなくても、最小限の設備投資と人件費で開業できて、しかも訴えられるリスクが少ないとあれば、見方によってはこんなオイシイ話はないのだ。
もちろん、良心的な医師も少なくないのだが、楽して金を儲けようとする医師が参入しやすい分野であることも否定できない。

抗うつ剤の副作用が世界的に初めて知られるようになったのは、1998年4月の米国コロラド州にあるコロンバイン高校でおきた銃の乱射事件だった。
死者13人、負傷者24人という大きな犠牲を出したこの事件で、二人の犯人のうち一人が事件直前に抗うつ剤“SSRI”を大量に服用していたことが判明してからだ。
日本ではどうかというと、その翌年の1999年7月に起きたハイジャック事件だ。
覚えている方も多いのだろうが、20代の男が羽田発函館行きの全日空機を乗っ取り、機長を殺害して自分で操縦し、レインボーブリッジの下をくぐろうとした事件だ。
この事件で最高裁の判決は、次のように結論づけている。
「本件犯行以前の被告人の内気でおとなしい性格と行動に照らせば、これらの異常で過激な行動は、保崎鑑定(弁護人側の鑑定)の示すように、被告人が服用していた抗うつ剤の副作用としか考えられない」。
誤った治療や投薬は患者本人や家族を苦しめるだけではなく、こうした社会的凶悪事件を引き起す原因にもなる。

精神疾患というのは、レントゲンや血液検査、胃カメラというような検査で診断できるものではない。
患者の症状から医師が主観的に診断するケースが圧倒的だ。
うつ病の場合「診断マニュアル」が存在するが、なかにはこのマニュアル片手に診察する医師もいるそうだからムチャクチャな話だ。
医院に訪れて、医師からいくつか質問を受けて「はいorいいえ」で答えさせられ、「あなたはうつ病です」などと診断されたら、これは要注意だ。

患者は医師を選べないことが多いので、こうした誤った診断や治療から逃れるのは難しいのだが、こんな医者には注意しようという一般的な判断材料としては、次のようである。
(1)あまり患者の話に耳を傾けない
(2)薬以外の治療に対応しようとしない
(3)薬の量をどんどん増やす
(4)薬の効能や副作用を説明しない
(5)治療方法について質問すると不機嫌になる

この問題では困ったことに、現状では厚生労働省も適確な対応ができていないようだ。
どうも患者自身が、自分で自分の身を守るしかなさそうである。

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医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

わたしも、打つ病を患いました。

わたしは、ただのひと以下です。

10年近く進化していません。

進化してないというより、もっと言えば世の中に取り残されて置いていかれている感じです。
漠然とした不安に襲われるのもしばしばです。

TheBeach様
私の周辺でもうつ病で悩んでおられる方がいて、(上)で書いたことは実際に起きた話です。
私のようなシロウトでも薬の処方が間違っているのではと思い、いろいろ調べていくと、どうも精神科や心療内科の診断や治療法にいくつか疑問がわいてきたので、今回記事にまとめてみました。
仕事をしながら治療を続けておられるとのことで、とても大変だとお察しいたします。
でも「ただの人以下」なんていうことは絶対にありません。

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