高齢者への家庭内虐待
読売新聞によれば、自宅で高齢の家族を介護する人の4人に1人は虐待をしそうになったことがあるそうだ。佐賀県内の大学や市町でつくる「高齢者虐待防止ネットワークさが」の調査結果だ。
また、介護施設・事業所で働く人の10%以上が虐待を目撃しているが、このうち40%近くは他人に知らせていないことも分かった。
2007年度、家庭で虐待を受けた高齢者は全国で13727人、そのうち7割が要介護認定者だという。
死亡に至ったのは27件というから、事態は深刻なのだ。
しかし、これらの数字は氷山の一角にすぎない。
2006年に高齢者虐待防止法が制定され、虐待の「おそれがある」と思われる段階で、地域包括支援センターへの通報できることが明示され、早期の発見と対処が図られている。
しかし家族と同居している高齢者への家庭内虐待は、明らかにされにくい。事実をつきつけても言い逃れされることが多いのだ。
これを行政の力だけでやろうとしても、所詮はムリがある。
さらに虐待を発見しても、家族に介入して虐待をやめさせることはとても困難だ。
いま住民の協力を含めた地域ネットワークを活用して、高齢者への虐待をやめさせる自治体の努力が求められている。
この点に関して山陽新聞が今年4月に、ある自治体での取組みを紹介している。
この自治体では、市内の小地域ケア会議を中核とした「高齢者見守りシステム」をつくり、そこを通してケアマネージャーや民生委員らから具体的な情報が寄せられる。
こうした活動を通して住民の理解も得ることができて、過去には年に1,2件だった通報が、このシステムができた以後の2006年度からは30件前後と急増したという。
寄せられた情報をもとに地域包括支援センターでは、社会福祉士が中心となって、虐待が疑われるケースについては更なる情報収集と確認作業をすすめる。
事実が確認され、かつ緊急性がある場合は、被害を受けている高齢者を家族から引き離し、あるいは施設に措置入所させるなどを行政が判断することになる。
行政を地域住民との信頼関係が築ければ、行政側も支援センターを窓口に迅速に対応できるようになり、家庭という密室を乗り越える力になるわけだ。
ただ、こうした自治体は全体的にみれば限定されるだろうし、支援センターがその機能を十分に発揮しているとはいえないのが実状だろう。
家庭内の虐待は、される方もする方も共に悲劇なのだ。
行政は一日も早く、こうした体制を構築できるように努力してほしい。
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