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2009/11/12

家族に罪はない

いつの頃からだろうか、容疑者の家族、特に親の責任を追及するようになってしまったのは。
もちろん容疑者が未成年の場合は、法的にも保護者としての責任は免れないが、すでに成人に達しているにもかかわらず責任が問われるという、イヤな風潮である。
警察から事情聴取されるとか、裁判に証人として出廷して尋問に答えるのは当然だが、それは事件の真相や犯行にいたる経緯を明らかにする、あるいは被告の更生の可能性を探るためであり、責任を追及するわけではない。

事件がおきると容疑者、時には容疑者と目される人物の家族にマスコミが押しかけてくるのだそうだ。親はもとより祖父母や親戚にまで。
本人たちの生活や都合などお構いなしにインタビューを強要し、果てはTVのワイドショーあたりで「この親にして、この子あり」みたいな報道をまきちらされてしまう。
その過程で、容疑者だけではなく、その家族のプライバシーまで明らかにされる。もし報道が事実と異なっていても、家族たちには反論する権利もないのだ。
職を失ったり家庭が崩壊したりというばかりでなく、自殺にまで追い込まれるケースだって少なくない。
こなると社会的集団リンチである。

親といえども子どもを完全にコントロールできるわけではない。
否、コントロールなど出来るはずがないのだ。それは誰だって自分の胸に手を当ててみれば分かるだろう。
自分の子は親の意志の通り行動していると言い切れる親は、果たしてどれだけいるだろうか。
他人も羨むような家庭に育っていても悪事に走るのもいれば、ひどい家庭環境に育ちながら周囲から賞賛される人になる例もある。
同じ両親から生まれ同じように育てたのに、兄弟姉妹がどうしてこうも性格が異なるのかと悩む親もいる。
悪いことをする奴は、親の育て方が悪いからだと考えるのは、あまりに短絡的だ。

英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさんに対する死体遺棄容疑で、11月10日市橋達也容疑者が逮捕されたが、この事件で11日に両親が2回目の記者会見を行った。
両親は容疑者について、とても優しい子だったのにと語っていた。
そうなのだ。ここ最近、凶悪事件がおきる度にいずれの容疑者の親も同じようにコメントしている。
子どものことは親は分からない。
全国の子どもを持つ親は、明日は我が身と考えておいた方が良いかも知れない。

いずれにしろ、家族に罪はない。

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