#1大手町落語会@日経ホール
2月27日に日経ホールで「第一回大手町落語会」が開かれた。
地下鉄の大手町で降り、皇居を前にした立派なビルの間を通って上りエスカレーターに乗ると、途中、経団連本部の表示が見える。
ちょっと寄って行こうかなとも思ったが、なんの関係もないのでそのまま会場へ。
連れは周辺の建物の豪華さに眼をうばわれ、「毎日こんなところで仕事をしていたら、庶民の苦しみなんか分かんないわよね」と溜息をついていた。
もう一つ、休憩時間に女性トイレに並んでいたら、近くの人たちが株式の話をしていたそうで、これも「さすがは日経だわ」と感心していた。
ホール内も、なんだか落語会というよりは国際会議でも始まりそうな会場だ。
こういう場所で落語がきけるのも「時代」なんだろう。
・柳家小権太「金明竹」
ツマラナイ。会話の「間」が悪いのだ。
・三遊亭白鳥「はじめてのフライト」
今日で高座にのせるのは3度目で、ここでスベッタらお蔵入りにすると前置きして本題へ。
さんざん担任をてこずらしていた悪がき「一郎君」が、大人になったら「幹事長」と呼ばれているという設定。
小沢一郎の裏金疑惑やらJALの経営破綻やらをおりこんだ、近ごろでは珍しいマトモな社会風刺をテーマにしたネタだったが、会場の空気を巧みにつかんで客を沸かせていた。
白鳥の号令にあわせて観客が右に左に体を傾けるという趣向もあって、白鳥は「池袋演芸場ではやってくれた人が3人しかいなかった」と言っていたが、それは無理もない。あそこの椅子は狭すぎて、体を傾けたら隣の人にぶつかってしまう。
白鳥が初見だった連れも大喜びだった。先ずは大成功というところだろう。
柳家喬太郎「ハンバーグができるまで」
前の白鳥のオチを解説して、袖に向かって「誰も分かんなえだろ!」と叫んでからマクラに。
白鳥が大受けした後だけにチョットやり難そうだった。大袈裟にいえばキム・ヨナの後の真央ちゃんのような。
ネタは古典かなと思ったが、新作を選んでいた。
さすがに本題に入ると、さっと喬太郎の世界を作りだすところは流石だ。
この人はいつ見ても、若い女性の仕種が上手い。だからしっとりとした雰囲気を醸し出せるのだ。
~仲入り~
瀧川鯉昇「長屋の花見」
鯉昇が初見だった連れがこう言っていた。「この人、座っているだけでオカシイ」と。
存在そのものがオカシイというのは、落語家にとってこれ程の強みはない。
それに加えて、一見すると軽く演じているように見えるが、この「長屋の花見」にしても、導入部から最後のオチまで実に良く工夫されている。
鯉昇の高座が常に満足度が高いのは、そのためだ。
柳家権太楼「お神酒徳利」
現在、東京で演じられている「お神酒(御神酒)徳利」は元々は上方落語のネタで、大きく二つの流れがある。
一つは上方の「占い八百屋」を明治時代に三代目柳家小さんが東京に持ってきたもの。
もう一つは、大阪から来た五代目金原亭馬生が三代目桂三木助や六代目三遊亭圓生に教えたとされるもので、今では後者が主流になっている。
今回の権太楼の「お神酒徳利」は前者の柳家小さんの流れを受け継いだものと思われ、占いをするのが番頭ではなく棒手振りの八百屋。行き先も大阪ではなく静岡の三島と近場だ。
噺の骨格は同じようなのだが、私にはどうもこちらの「お神酒徳利」の面白さが分からない。噺としての完成度が低いように思う。
権太楼は冒頭に「声の調子が悪い」と断っていたが、そのせいかやや精彩を欠いた高座だった。
この会だが、8月以降は偶数月ごとに開催されるそうなので、ファンは乞うご期待。
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