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2010/03/21

#97朝日名人会

3月20日、有楽町朝日ホールで開かれた「第97回朝日名人会」へ。
すっかり陽気が暖かく春めいてきたので、春にちなんだネタが並ぶかと思いきや、季節感にかかわりなく珍しい演目が多い今月の会である。

前座・柳家花いち 『転失気』
名前は「花いち」、出来は「イマイチ」(これって以前にも使ったっけ)。

柳家三之助 『芝居の喧嘩』
マクラで二ツ目として最後の高座になると紹介あり。21日からは真打だが、むしろ遅過ぎた感がある。
もともと人気・実力ともに十分で、落語ファンの間では「なぜもっと早く真打にしなかったのか」という声も上がっていた。
芸は明るく本寸法、期待の新真打だ(コメント貰ったからってヨイショしているわけではありませんよ)。
飛行機が趣味で、既に本を2冊も出しているという変り種でもある。
『芝居の喧嘩』だが、解説には講談から立川談志が落語にしたとあるが、オリジナルは歌舞伎だ。
『極付幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)』という演目中の『舞台喧嘩の場』が、それだ。
芝居の筋は、狂言も佳境に入ったときに酒に酔った白柄組らが狼藉を働いて舞台を台無しにする。そこへ町奴の親分、幡随院長兵衛が止めに入り白柄組を叩きだす。折しも桟敷で舞台を見ていた白柄組の頭領水野十郎左衛門は、長兵衛に遺恨を持つようになる、というもの。
落語のほうのストーリーとしては他愛ないもので、専ら話芸の力だけで聴かせるネタだが、三之助は明解な口調で楽しませてくれた。

三遊亭歌武蔵 『植木屋娘』
上方落語のネタで、東京で演る人は少ないのではなかろうか。
一人合点しては飛び跳ねる植木屋の主人のキャラが歌武蔵のキャラと重なって、観客を沸かせていた。
この人は着実に上手くなっている。

古今亭志ん橋 『出来心』
本日のトリをつとめる小三治の十八番で、別名『花色木綿』。
志ん橋は話のリズムが一定で、長いネタになるとどうしても間延びしている印象を持ってしまう。
登場人物の演じ分けも、もっとクッキリとして欲しいところ。

~仲入り~
林家正雀 『豊竹屋』
隣席の女性客が、「この人、地味なのよねぇ。」と言ってたが、正にその通り。
芸は確かなのだが、芸人として愛嬌に欠けるのが欠点だ。世の中には、愛嬌だけで飯を食っている噺家もいるというのに。
このネタ、円生が得意としていたが、義太夫を語らなくてはならないせいだろうか、今では演じ手は少ない。でもこういう音曲噺は後世に残しておきたい。
こういう演目こそ朝日名人会のような会に掛けて欲しいわけで、ベストチョイスだったと思う。
地味なネタだが、客席は大いに受けていた。

柳家小三治 『品川心中』
小三治は『品川心中』を演るのは20年ぶりと言っていたが、私も初見だった。どんな仕上がりになるのか、楽しみにしていた。
マクラで当時の廓や四宿の事情の説明があり、品川では女郎屋を貸し座敷とよんでいて、東海道の海側に沿って店が並んでいたとされる。だから海に身投げして心中しようという発想になったのかと、納得。
古今亭と違うのは、金蔵がお染と一緒に心中する気になる場面で、小三治の演出は最初は渋る金蔵にお染が、「死んで三日したら、化けて出てとり殺す。」と脅かす。
どっちにしても助からないなら、じゃーいま心中しようということになってゆくわけだ。
金蔵の人物描写が秀逸で、志ん生や先代馬生とも違った上出来の『品川心中』となっていた。

熱演が相次ぎ、充実の会だった。

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コメント

昨日、他用で「鈴本」の前を通りかかったら、人だかりがしていました。三之助さんのプロフィールを読んで吃驚、30代後半なんですね。風貌からは30代前半に見えたので、抜擢のような昇進かと思っていました。インターネット落語界のナビゲーターとしての印象しかないので、是非聴いてみたいと思います。
それにしても、小三治一門は盛んですね。

福さま
そうなんです、又しても小三治門下です。
これでは益々柳家一門の一極集中が強まりそうですね。

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